グラミー賞ノミネート・アーティストであり、ニューヨークを拠点に活動をするパーカッショニスト / 作曲家 / サウンド・アーティストの
イーライ・ケスラー (Eli Keszler)。これまでに
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー (OPN)、
スクリレックス 、
ローレル・ヘイロー らとのコラボレーションを行ない、オルモ・シュナーベル監督の『Pet Shop Days』(2023年)、ロトフィ・ネイサン監督の『Harka』(2022年)などの映画のスコアを手掛け、さらにはダニエル・ロパティン(OPN)による『Uncut Gems』(2019年)のスコアにも参加するなど、活躍の場を広げる彼が、最新作となる初セルフタイトル作『Eli Keszler』を5月2日(金)に「LuckyMe」よりリリースすることを発表。あわせて、先行配信曲として「Ever Shrinking World」が公開されています。
ケスラーの最新作は、自由奔放で故
デヴィッド・リンチ を想起させる楽曲集となっており、彼の卓越した演奏表現が、アブストラクトなエレクトロニック・サウンドの上を駆け巡るような仕上がり。アルバム全12曲を通じて、ケスラーのシグネチャーサウンドである細かくきざまれたドラミングや、ダブ処理が施されたサウンドスケープが広がります。
ゲストには、シンガーのソフィー・ロイヤーやサックス奏者の
サム・ゲンデル を起用。ケスラーは本作の制作中、「打楽器の不規則で粒子のような音の言語を、まったく異なる文脈に応用できると気づいた」と語り、その結果生まれたのは「畏敬の念、ほとんど宗教的な感覚を持つ音楽」であり、「微細な断片から成る静的な音楽」とコメント。
また、ケスラーは、本作にて最初から“歌のアルバム”を作ることを目指し、異なる要素を再構築しながら、さまざまな色やムードがぶつかり合って生まれる表現を探求。「ある感覚を捉え、それが自由にさまざまな媒体や素材、ジャンルを行き来するようにしたかった。そして、音楽が向かうべき方向へと自然に流れるのを妨げず、そっと導くようなアプローチを取った」と説明しています。
ケスラーにとって、この流動性は個人的な苦悩や変化の瞬間から生まれるもの。今回のアルバムでは、次第に「現代的でありながらどこか馴染みのある、文化の中にさまざまな形で現れるジェンダーレスなキャラクター」が浮かび上がってきたと言います。そこから生まれたのは、内なる声が融合し、名もなき何かへと結晶化するような夜の音楽。言葉の残響が弦楽のクラスターやギターのスライド、メロディックなテクスチャー、囁く声、ウォーキング・ベース、アブストラクトなコード、細かくきざまれたドラム、多方向に展開するリズムへと変化していき、一作を通して、すべてが絶望と壮麗さを帯びた光沢に包まれたアルバムとなりました。
本作は、コントロールと、イメージとしてでしか知り得ない記憶をテーマにした「Wild Wild West」で幕を開け、ケスラーの父の最期の言葉からインスピレーションを得た「Drip Drip Drip」で締めくくられます。皮肉めいた表現を排し、率直に核心を突く本作。CD、LP、デジタル / ストリーミング配信で5月2日に世界同時リリースとなりますが、国内流通仕様盤CDには解説書が封入されます。
[コメント] 世界はもう、以前のように静的ではなくなったよね? すべてが生々しく、厳しく、リアルに感じられる。こんな風に感じたことはなかった。でも、感情をそのままさらけ出すのは自分には合わない。だから今、ただこの瞬間に沈み込んでいるんだ。ただ静かに、感じ取っている。 ――Eli Keszler VIDEO
photo by Heji Shin