シンガポール在住ファズ・リーによるソロ・プロジェクト、
エリントシーカー(elintseeker)による7年ぶりのアルバム『Life without Dreams』が日本のレーベル「PLOP(NATURE BLISS)」より10月25日(金)にリリースされます。
リーは、ドラマーとして音楽活動を始めたのち、現在ではギターを主に用い、空間性のある音響的アプローチにより通常のバンド・サウンドとは異なるサウンドを構築。2012年の英レーベル「Somehow Recordings」からデビュー作を出したのち、日本の「PLOP / NATURE BLISS」よりSilent Ballet誌の2015年の年間ベストにも選ばれたアルバム『Geography of the Heart』、続けて『Gerwalk Modes』を発表しています。
7年間の沈黙を破り発表されるこの最新アルバムにて、エリントシーカーは、幼少期から思春期にかけて自身が愛し、人生と音楽的道程を形作った時代の音楽的ハイライトを求めて心の内を見つめ、ポップ・ミュージックの数多くの領域に足を踏み入れています。
当初、本作には、眠れぬ夜や夢なき夜の半覚醒状態で作曲された、ゆったりとしたビートのないアンビエントな楽曲が収録されていましたが、元の楽曲の情緒的でメランコリックな雰囲気を残しつつも、構成を改変。その意図は心地よいグルーヴ、予測しやすい構成と進行とメロディ、そして曲のわかりやすさというポップ・ミュージックの指針に準じたとのこと。
また、今回のアルバムには、数人のゲストが参加しています。最も注目すべきゲストは、以前も楽曲制作で協働したことがあるギリシャのフルート奏者でLuupのメンバーであるステリオス・ロマリアディスと、日本人歌手で音楽家の
Piana。ゲスト・ヴォーカルに迎えられたPianaは、アルバム内のほぼすべての楽曲で歌唱を務めました。エリントシーカーは長年Pianaとの仕事を希望していたそうで、アルバムに収録されている「East Side Life」や「City Horizons」などの楽曲は、Pianaのヴォーカルを明確に念頭に置いて2000年代中盤から後半にかけて制作。そのため、今回彼女とのコラボレーションが実現したことにより、何年もの時を超えてエリントシーカーの思い描いたとおりの形に楽曲が仕上がっています。
ジャズ調のアンビエントなプログレッシブ・ロック、おぼろげなAOR、バレアリック、重い残響音が特徴的なニューロマンティック、ニュー・ウェイヴ、アート・ポップといった、ジャンルの境界を行き来する『Life Without Dreams』は、ポップ・ミュージックが持つロマンティックで、記憶や感情を呼び起こす力を讃えるアルバム。同時に、夜の街から生まれ、あるいは夜の街のために作られた音楽であるという印象を残します。
さらに、新型コロナウイルスの流行によるロックダウン開始からの数ヵ月の間に、アーティスト自身だけでなく世界が直面した先の見えなさに対する彼の反応の記録でもあり、これまでのアンビエントなアプローチで落ち着きや静けさを求めるのではなく、音楽をとおして「動き」と「切迫感」を示唆することが最適だと彼が考えたことが伝わる内容となっています。