モンゴルの伝統的民謡とジャズ、フォークを独自に融合させた作風で人気を誇る、モンゴル出身・独ミュンヘン在住のシンガー・ソングライター、エンジ(Enji)が、4thアルバム『Sonor』(ソノール)を5月2日(金)にリリースします。
賞賛の嵐を浴びた『
Ursgal』(2021年)と『Ulaan』(2023年)に続く本作は、エンジの個人的な進化と、モンゴルとドイツ、2つの世界の間で生きることに伴う複雑な感情を反映したもの。アルバムのテーマは、文化の狭間にある居場所のない感覚を中心に展開されますが、それは対立の原因としてではなく、成長と自己発見のための空間として描かれます。彼女は伝統的なモンゴルのルーツとの距離が、いかに自らのアイデンティティを形成してきたか、そして故郷に戻ることで、いかにこうした変化への意識が高まったかを探求しています。
サウンドは、より流動的で親しみやすいものへと拡張されました。Elias Stemeseder(p)、Robert Landfermann(cb)、
ジュリアン・サルトリウス(ds)、そして前2作でもお馴染みの、共同作曲者でもある
ポール・ブランドル(g)ら世界的に名高いジャズ・アーティストをバンドに迎え、ジャズ・スタンダード「Old Folks」を除いて全曲モンゴル語で歌うなど、エンジの音楽的基盤は揺るぎないものの、メロディとストーリーテリングに新たな明晰さを加えることで、より親しみやすい内容となっています。
また、『Sonor』では、モンゴルの伝統的な歌「Eejiinhee Hairaar」(「母の愛をこめて」)に新たな命を吹き込みました。日常生活に溶け込んだ音楽、何世代にも渡って受け継がれてきたメロディ、このイメージに本作の精神が凝縮されています。エンジは単に伝統を再認識しているのではなく、故郷の感覚や、遠くから見て初めてその意味がわかる小さな喜びを抽出し、親が口ずさむ親しみのある歌のように、ひとつの場所に縛られるのではなく、私たちを形作る感情や記憶といった「帰属」の本質をとらえています。