世界最高峰のオーケストラである
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が、ベネズエラ出身の若き天才指揮者、
グスターボ・ドゥダメル(Gustavo Dudamel)を迎えて録音したアルバム
『R.シュトラウス:ツァラトゥストラかく語りき』(UCCG-1632 税込2,600円)が8月21日にリリースされます。
指揮をしたドゥダメルが、この『ツァラトゥストラはかく語りき』に関して語った最新映像がYouTubeで公開されました。その日本語訳を、いち早くここにご紹介したいと思います。
スタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』で使われたことでも広く知られるこの楽曲を、次世代のスター指揮者がどのように解釈し、どんな気持ちで指揮したか、ヴィヴィッドに伝わってくる内容です。
「『ツァラトゥストラはかく語りき』は、今の時代でも私たちを魅了し続けるアイコンのような音楽。この曲は、キューブリック監督が『2001年宇宙の旅』で使用してから、映画史上もっとも有名な映画音楽として知られてきました。そんな『ツァラトゥストラ』を指揮するのは、私にとって圧倒的な経験です。
シュトラウスによる楽譜は、はっきりと書かれており、明確な指示がなされています。しかしこの曲を演奏するには、作品の意味を真から理解することが大切です。とくにこの作品が書かれた時代において、いかにこの作品が物議をかもしたか、どれほどのインパクトをもたらしたか、“超人”(スーパーマン)という観念やメッセージがどれほど強いものであったかということを。
『ツァラトゥストラ』は、太陽が昇る情景のイメージから始まります。“あなたこそ、生を与えてくれるもの!”として、太陽こそあらゆる意志や目的、肉体、惑星、星の源である、と讃えるのです。この『ツァラトゥストラ』の、有名で美しい冒頭の音楽にこそ、この曲の基礎がすべて表現されていると言えるでしょう。
私にとって『ツァラトゥストラ』は、内面のコントロールや、情緒の力、思考の力を意味しています。そして、その力が無限の可能性を広げ、人生を導くものとなるのです。シュトラウスの、ニーチェ解釈と概念は、我々人間が個々に持つ力と神性を信じており、それが見事に音楽で表現されています。テキストはなく、単一楽章からなるこの曲の意味の解釈は、あなたにかかっています。この曲は大変に考えぬかれて、作られた曲なのです。
この『ツァラトゥストラ』をベルリン・フィルと演奏できたことは、大変な名誉であり、何よりも驚くべきかつユニークな体験でした。『ツァラトゥストラ』と言った時点で、ベルリン・フィルと、カラヤンの素晴らしい関係と演奏を思い浮かべるからです。今回のライヴ録音では、ベルリン・フィルと一緒に本当に特別なものを作り上げることができたと思いますし、自分の人生においての最高の時間でした。誰もが夢見る、人生のピーク……到底かなうことのないと思っていた夢が、実現できたかのような体験です。
それが今回の『ツァラトゥストラ』です。じつは、すべての人が自分の中に持っているパワーを使って夢を実現させる、というお話。私個人的には、『ツァラトゥストラ』を指揮し、録音できたことはある種のユートピア(理想郷)であり、魔法にかかったような体験でした」 ドゥダメルは今年9月に東京で公演を行なうオペラ、ミラノ・スカラ座の『リゴレット』の指揮者として来日することが決定しています。現在もっとも注目を集める若手指揮者となったドゥダメルの“今”を、アルバム『ツァラトゥストラはかく語りき』で体感してみてください!