ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の音源を発表するベルリン・フィル・レコーディングスは、長年にわたって首席指揮者を務めた
ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan)がベルリン・フィルと録音した放送用ライヴ音源を年代別に収録するボックス・セット・シリーズを発売します。シリーズ第1弾で、ほぼ初出音源からなる『ヘルベルト・フォン・カラヤン 放送録音集成 第1集 ライヴ・イン・ベルリン 1953〜1969』はSACDハイブリッド24枚組。2月28日(金)に発売されます。
このシリーズ第1弾は、1953年から1969年までに行なわれた23回のコンサートを録音したもの。当時、カラヤンとベルリン・フィルのコンサートの多くは、RIAS(西ベルリンのアメリカ軍占領地区放送局)とSFB(自由ベルリン放送協会)などのラジオ局で放送されていました。当エディションは、ベルリンに残っているこれらの放送録音をすべて集め、現存する最良の音源を用いてセット化するという初の試みです。ドイチュラントラジオ・クルトゥーアとベルリン=ブランデンブルク放送のアーカイヴのアナログ・ソースから高解像度のデジタル・トランスファーを行ないました。
ハードカバー装丁による本エディションは、画家であり彫刻家でもあるトーマス・シャイビッツによってデザインされました。ブックレットには数多くの写真やカラヤンの伝記作家ペーター・ユールンク、音楽評論家ジェームズ・ジョリーなどによる興味深いエッセイが収められています。『フルトヴェングラー帝国放送アーカイヴ 1939-45』に続く、ベルリン・フィル・レコーディングスによる二つ目の大規模なヒストリカル・エディションです。
このエディションの序文で、ベルリン・フィルメディア部門代表のフィリップ・ボーネン(vn)とオラフ・マニンガー(vc)は「カラヤンは、コンサートでは自分が不要になるほど徹底的にリハーサルを行うという哲学を持っていました。観察する創造者という意味において」「本番の舞台では特に素晴らしいことが起こりました。それはカラヤンが音楽家たちを信頼し、手綱を緩めるだけでなく、ほとんど完全に放してしまったときでした。文字通り、その言葉を真の意味で体験できるライヴ公演の比類ない魅力は、このようなリスクをいとわない姿勢と失敗の危険性が根底にあるのです」と綴っています。
カラヤンといえば、最新の音響技術を駆使して細部に至るまで完璧に仕上げたスタジオ録音がよく知られますが、このセットの放送用ライヴ音源はコンサートの即興性と一度かぎりの音楽の瞬間の魔法を捉えたスナップショットと呼べるものです。
収録曲は
ベートーヴェン、
モーツァルト、
R.シュトラウス、
ドビュッシー、
ブルックナー、
ブラームス、
J.S.バッハ、
シェーンベルクなど。
グレン・グールド(p)との「ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番」、
ヴィルヘルム・ケンプ(p)との「モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番」、
エリーザベト・シュヴァルツコップとの「R.シュトラウス:『ナクソス島のアリアドネ』から〈すべてのものが清らかである国が〉」といった伝説の音楽家との共演音源もあり、1953年9月録音の「ベートーヴェン:交響曲第3番『英雄』」ではじまり、1969年9月録音の同じ曲で終わる構成となっています。