音楽監督
ユベール・スダーン(Hubert Soudant)のもと、世界レベルのオーケストラへと成長を続けている
東京交響楽団(以下、東響)。11月29日に川崎で記者会見が行なわれ、2011-12年シーズンのラインナップ、新しくリリースされたCD
『シューマン:交響曲全集(マーラー版)』についての発表がありました。
はじめに楽団長の大野順二氏より、東響の近況について以下の報告がありました。
「東響の音が近年飛躍的に良くなったと言われるのは、ひとえにホームコンサートホールであるミューザ川崎でリハーサルを重ねたおかげです。今年7月の中国・大連での公演も超満員で大成功を収めました。また、若い優秀な楽団員が入ってきてくれていることも、オーケストラのレベルアップにつながっていると思います」 来年4月からスタートする2011-12年シーズンのテーマ作曲家は
シェーンベルク。スダーンはシェーンベルクについて、次のように語ります。
「シェーンベルクはブラームスを尊敬し、ハイドン、モーツァルト、シューベルトが好きだったことからもわかるように、古典派〜ロマン派の影響を大きく受けた作曲家です。聴衆の皆さんにとっては、一見とっつきにくい音楽に思えるかもしれません。でも、シェーンベルクの音楽は、じつは映画に使われてもおかしくないほどロマンティックでドラマティックなものなのです。『風とともに去りぬ』のように。彼の作品は、聴衆が歩み寄って、“発見”しなければならない音楽なのかもしれませんね」 定期演奏会のプログラムには、シェーンベルクの室内交響曲、「浄夜」、ピアノ協奏曲、モノドラマ「期待」、交響詩「ペレアスとメリザンド」といった作品が並び、とてもチャレンジングな内容になっています。
「かつてカラヤンは、シェーンベルクを生で演奏したくないと言いました。そのかわり、たくさんのシェーンベルクのレコードを残したのです。でも現代のオーケストラは技術も向上し、今なら生演奏も十分可能です。我々は一見、難しいものに恐怖感を抱きがちです。でも、今の東響とならチャレンジできる、挑まなければならないと思いました。楽団員も新しい挑戦にワクワクしています。こういった気持ちは、必ずや聴衆の皆さんにも伝わるのではないでしょうか」 東響はコンサートだけでなく、CDでも高い評価を受けています。昨年発売されたスダーン指揮による
『ブルックナー:交響曲第7番』はミュージック・ペンクラブ音楽賞で2部門を受賞、今年10月には『シューマン:交響曲全集(マーラー版)』がリリースされました。
さらに、つい先日公演を終えたばかりのブルックナーの交響曲第8番は、公演に先立つ2日間、ミューザ川崎にてセッション録音が行なわれ、来春リリース予定とのこと。
意欲的なコンサートのラインナップ、そしてセッション録音によるCDリリースと、来シーズンも東響から目が離せません!
スダーンの左は楽団長の大野順二氏