『
世界の中心で、愛をさけぶ』『
スカイ・クロラ』など、数々の名作を世に送り出してきた脚本家・伊藤ちひろが10年かけて上梓した小説『ひとりぼっちじゃない』を、
行定勲(『
GO』『
ナラタージュ』)の企画・プロデュースにより、自ら初監督を務め映画化、2023年春にパルコ配給にて公開されます。
原作は、不器用でコミュニケーションがうまくとれない歯科医師・ススメの日記形式の小説。伊藤は脚本も担当し、ススメが謎の多き女性・宮子に恋をすることで、変わっていく自分、歪み狂っていく日々を、初監督ながら圧倒的な世界観で描いています。
主演は、デビュー以来音楽シーンに大きなインパクトを残し続けるバンド、
King Gnuの
井口理。脚本執筆の際に主人公・ススメを井口自身にアテ書きしたという本作で、井口は、撮影前にもかかわらず、伊藤監督とともに撮影地のロケハンにも帯同。並々ならぬ意欲で役柄を構築し、初主演作に挑み、これまで見せたこともない表情でススメを演じています。共演には、ススメが恋をする謎多き女性・宮子に
馬場ふみか。宮子の友人でありながら、ススメを惑わせる蓉子に
河合優実。若き実力派の2人による化学反応も期待されます。
また、映画『ひとりぼっちじゃない』の本ヴィジュアルと予告映像が公開されています。本ヴィジュアルは寄り添いあいながら眠るススメと宮子の幸せなはずのワン・シーンながら、不穏な空気感を感じさせる1枚。そして、予告では生きづらそうなススメの姿、恋をしたススメが感じる幸せ、嫉妬、焦り、そして宮子の謎と、何かが狂っていく様子が描かれ、この恋の果てにあるものは、純愛なのか狂気か、問いかける予告映像となっています。
[コメント]本作の主人公、ススメとの出会いが自分にもたらしたものはとても大きかった。人とコミュニケーションが取れない彼に向き合った約半年という時間の中で、自分自身が今まで人に伝えられず蓋をしていた気持ちとも同時に向き合うことになったからだ。自分と向き合うということ、それは今まで極力避けてきたことだったが今回の撮影を終えて、それがとても大きな財産になったと実感している。
コミュニケーションがうまくいかないもどかしさは誰しもが感じるものであり、そこで生まれる葛藤はおそらく今回ススメという人間として形を成した。この作品に関わった全ての人に、出会いに、感謝します。そしてみなさんがご覧になったとき、少しでもやさしい気持ちで明日を生きていけますように。映画が完成した今、そう強く願います。――井口理当初は、一見すると柔らかくて温かいようで、内面はすごくドライで冷たさを持っている宮子をどう演じればいいのか戸惑いましたが、伊藤ちひろ監督との本読みや衣装合わせを進めていく中で、実は自分の本来持っている性質に近い部分があると気付きました。
そのことに恐ろしさを覚えつつも、この役を演じられたことに運命めいたものを感じています。
監督の創り上げる世界にどっぷり浸かりきっての撮影は、苦しくもあり宝物のようでもあり、不思議な時間でした。一人でも多くの方にこの作品が届きますように。――馬場ふみかお話をいただいて脚本を読み始めたとき、すぐに心奪われたのを覚えています。
語弊を恐れずいえば、繰り出される数々の「ヘン」な描写に胸が躍り、また新しく、興味深い本に出会えたことが嬉しかったです。
井口さんと馬場さんとそれぞれまったく違うパーソナリティを持ち込み、お互いの色を混ぜた結果どうなるのか全くわからない中で起こることを楽しんでいました。
完成を見て、伊藤ちひろ監督の感性をどこまで素直に、純粋に保てるかの戦いだったんだなと改めて感じました。
純粋さはいつでも強いものを産むなと思います。ぜひご覧ください。――河合優実相手の真意を察することの難しさ、妄想は広がっていくけど、なかなか答えに辿り着けない、そういう経験をしたことのある方は多いはず。これが恋となれば、ひどく自分の感情がこじれていく。相手の表情や言葉にいくら注意を向けても心を丸ごと見透すなんて不可能だから、コミュニケーションの向き合い方にうまく折り合いをつけられないと苦しくなっていく。その感覚をそのまま映画にしようと思いました。
初めて監督として立つ現場で限られた時間の中いくつもの判断を下していくことは、とても困難なことでしたが、この作品はキャストに恵まれました。
捉えどころのない漆黒の魅力を内包する馬場ふみかさん、鋭い視線で魅惑的な妖気が漂う河合優実さん、そして、わたしの曖昧なイメージを具現化し愛すべきキャラクターに創り上げてくれた井口理さんの存在に支えられてこの映画は誕生しました。
井口さんは、ススメという人物を演じるうえで次々と芽生える羞恥などのデリケートな感情を、そのまま晒すことも破壊してみせることもできる表現者で、彼から放出される異彩なムードがこの作品の世界を息が詰まるくらいに充してくれました。
ある意味、この映画はホラーです。楽しんで頂けたら幸いです。――伊藤ちひろ監督©2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会