シンガー・ソングライターとしての活動をはじめ、昨年の映画『
ドライブ・マイ・カー』の
サウンドトラックも高く評価された
石橋英子の約7年ぶりとなる歌のアルバム『Antigone(アンティゴネ)』が3月28日(金)よりLPで発売、配信も開始に。これに先駆けて、3月14日には東京・LIQUIDROOMにてリリース・ワンマン・ライヴが開催されました。
この日は、アルバムにも参加する
ジム・オルーク(g)、
山本達久(ds)、ジョー・タリア(ds)、
マーティ・ホロベック(b)、
松丸契(as,fl,cl)、
ermhoi(cho,syn)に加え、
藤原大輔(ts,fl)も迎えた豪華なバンド編成でのパフォーマンス。アルバム発売に先駆けて、全曲を収録順に演奏したスペシャルなセットが披露されました。
DJにはACID SISTER 霊を迎え、
ジュリー・クルースが歌う『
Twin Peaks』劇中歌など浮遊感あふれる楽曲群で、ライヴ前の会場を心地よいムードで満たす中、オーケストラのSEが流れると石橋英子が登場。観客への深いおじぎで厳かに始まった、冒頭曲であり先行公開曲「October」では、漂うようなメロディを歌う石橋英子の柔らかく幽玄な声、畳みかけるように歌うパートの緊張感など、訪れた人たちを一気にステージに引き付けます。同じく先行曲「Coma」では、ermhoiとのハーモニーや管楽器のソロフレーズも際立ち、曲の終わりには歓声も。
この後は、アルバムからは未公開となる「Trial」から「Antigone」までを披露。藤原大輔、松丸契、マーティ・ホロベックらのソロパートや、石橋英子自らのフルート演奏も盛り込まれ、ポストロックとも、アンビエント・ジャズとも室内楽とも形容できない独自の音世界が展開されました。
また、草野庸子のVJによるシンボリックな映像のせいか、全体的に浮遊感を湛えながらも、不穏さや切迫した何かを感じさせる楽曲たちは観客を魅了し、とりわけ「The Model」での、大きなうねりを感じさせるアンサンブルを背にした、石橋による語りのパートには引き込まれました。
アンコールでは、2018年にリリースされた前回の歌のアルバム『
The Dream My Bones Dream』より「A Ghost In a Train、Thinking」「Iron Veil」の披露で会場を再び沸かせ、濃密な一夜は閉幕。入場時には、作品に対する石橋英子のインタビュー(インタビュアー:James Hadfield)も配布されており、発売前に『Antigone』がトータルで味わえる大満足の公演となりました。「すごいものを見た」という反響を表すように、新作『Antigone』の先行販売が行なわれた物販コーナーに人だかりができていたのも印象的でした。
なお、石橋英子は、6月14日(土)に開催される〈FESTIVAL FRUEZINHO 2025〉にermhoi、ジム・オルーク、山本達久、松丸契からなるバンド・セットで出演することも発表されています。そのほか、今後のライヴ情報については、石橋のオフィシャル・サイトおよびSNSをご確認ください。
Photo Shinichiro Shiraishi
文: 川上影森UNXUN