ジェイミーがステージに現れ、大歓声の中、オープニングの「Wanna」でまず息をのんだ。しっかりとした音響から放たれる大音量で聴くと、イヤフォンや家のオーディオで聴いた印象と全く違うことに意識が持っていかれた。こんなパワフルでエモーショナルに響いてくるとは思わなかった。続く「Treat Each Other Right」のビートが鳴った瞬間にフロアはあっという間に沸騰してしまった。一切の手続きなしにピークに突入したようなテンション、そこからの前半はアップテンポでレイヴィーなビートがフロアを煽る。BPM140ぐらいのテンポで次々に繰り出されるビートはテクノ、ブレイクビーツからジャングル、ダブステップまで幅広くテンションを落とさず繰り出す。普通はここまでテンションが高いビートが続くとどうしても下品に聞こえてしまうものだが、全くそんなことを感じさせない。これはジェイミーのエディット感覚の素晴らしさと、彼が世界中のフロアで本気のオーディエンスを相手にしてきたことで掴んだものだろう、DJとして世界のフロントラインにいるというのはこういうことなのかもしれない。
ビートの洪水の中で時折自分の曲のサンプルや断片を散りばめてくる。過去の曲も新しいビートでアップデートされ、「Gosh」のサンプルや「All Under One Roof Raving」のスティール・ドラムのフレーズが響き、徐々にビートがトランシーになり「Still Summer」へ。そこからヒートアップしたフロアを鎮めるように壮大なシンセが会場全体を包んだ。
そしてステージ後方の巨大なミラーボールが輝き、「Loud Places」から後半がスタート。ロミーの優しい声にミラーボールがよく似合う。そして前回の来日では聴くことができなかった「LET’S DO IT AGAIN」でもう一度フロアに火がつき、そのテンションのまま「All You Children」へ。まさに最強のパーティー・ミュージック、その瞬間のフロアは特別な場所となった。こんな光景を2024年に見ることができるとは思わなかった。「Life」の元ネタのリヴェラシオンの「The House Of Rising Sun」のティンバレスの乱打とスパニッシュ・ギターのソロから「Life」に突入、そのまま「Baddy On The Floor」、たぶん会場にいたほんとんどの人がこの瞬間に全てを忘れて音とダンスに夢中だったにちがいない。