ジョン・コルトレーン(John Coltrane)が代表作のひとつ『
至上の愛』を1965年1月に発表後、アルバム収録曲を披露した同年10月2日の米シアトル・ペントハウスでのライヴを収録する未発表音源が発掘され、『
至上の愛 〜ライヴ・イン・シアトル』として10月8日(金)に世界同時発売されます。収録曲「パート1:承認(Acknowledgement)」のスペシャル・エディット・ヴァージョンが先行シングル曲として解禁、あわせて日本盤オリジナル・ティザーが公開されました。
『至上の愛』はジョン・コルトレーンにとっても意味深い作品で、彼はこの作品を“神への捧げもの”とし、レコードの内ジャケットに作品を紐解く糸口となるような自作の詩を掲載しましたが、このようなことをしたのは後にも先にもこの作品のみ。そして、今回の発見が“奇跡”と呼ばれるのは、その演奏の希少性にあります。コルトレーンは公の場で『至上の愛』を演奏することは滅多になく、自分の感情、バンド・メンバーのコンディション、会場の雰囲気、そして何より観客がそれを求める時にしか演奏しないと決めていたと言われ、ライヴ・ハウスやジャズ・クラブでこの組曲のすべてが演奏されたという記録はこのテープが発掘されるまで残っていませんでした。
当時は録音されたこと自体が公に知られておらず、録音を行なったのは、コルトレーンがシアトルに滞在していた1週間の間、コルトレーン・バンドの前座(昼の公演)を任されていた、自身もサックス奏者でコルトレーンの友人であった
ジョー・ブラジルという人物。公演最終日の当日、自分のバンドを録音しようと録音機材をセットしたところ、バンド・メンバーであった
カルロス・ワードがコルトレーンのステージでも演奏をすることになったため、結果、彼は録音機材を回し続けることに。公演が行なわれたシアトルの「ペントハウス」にはオーナーの音楽好きが高じて当時最先端だった録音機材が一式揃っており、良好な音源が後世に残されることとなりました。しかし、もともとリリース目的ではなくプライべートな記録用に録音したため、ブラジルが2008年に亡くなるまでテープは彼の自宅に保管されており、生前、親しい友人にこのテープを数回聴かせたことがあったことから、それが噂として広まって今回の発掘に至りました。
また、今回のライヴ音源を貴重たらしめている理由はそのアバンギャルドさにもあります。参加メンバーは、ジョン・コルトレーン率いる黄金のカルテット+
ファラオ・サンダース(ts)〜カルロス・ワード(as)〜
ドナルド・ギャレット(b)の計7名。この公演はコルトレーンのフリー・ジャズ宣言と言われるセンセーショナルなアルバム『
アセンション』のレコーディングの後に行なわれ、今回の作品はこれまで音源として残っているスタジオ盤・ライヴ盤ともまったく異なるアバンギャルドながらも圧倒的な力強いサウンドが特徴です。
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