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金属恵比須、塚田円参加の完売公演終幕&コメント到着 「塚田さんの若きロック魂に揺り動かされ、バンドが若返った」

金属恵比須   2024/04/30掲載(Last Update:24/05/03 14:01)
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金属恵比須、塚田円参加の完売公演終幕&コメント到着 「塚田さんの若きロック魂に揺り動かされ、バンドが若返った」
 東京拠点のプログレッシヴロック・バンド、金属恵比須の恒例ライヴ〈猟奇爛漫FEST Vol.6〉が4月27日(土)、“プログレの聖地”吉祥寺・シルヴァーエレファントにて開催されました。

 昨年、新ベーシスト・埜咲ロクロウが加入してから2度目の公演。そして、活動休止中のキーボード・宮嶋健一の代打として、“プロビデンス”でメジャー・デビュー、現在は自身のバンド“那由他計画”を率いるほか、吉田達也との“あかねさす”でも活躍するプログレ界のレジェンド・キーボーディストの塚田円を招いての本ライヴは、金属恵比須のファンはもちろん、プログレ・ファンにも注目度の高い公演に。また、この日のライヴのセットリストは、かねてから金属恵比須のファンだったという塚田がセレクト。さらに公開録音も実施されました。

 また、公演を終えたメンバーたちからのコメントも到着しています。

 なお、本公演は、配信ライヴも実施されており、こちらのチケットは現在販売中。詳細は金属恵比須の公式サイトをご確認ください。

[ライヴ・レポート]
 完売となった本公演は、開演40分前から満員状態。詰めかけた客たちの話声からは、テリー・ボジオだのサーベルタイガーだの濃いワードが聞こえ、音楽ヲタクたちに囲まれている…と身が固くなる。ステージには、金属恵比須の楽曲「武田家滅亡」にちなんだ、武田家の家紋“武田菱”をあしらった旗が並び、さながら合戦前の熱気。

 そんな濃密な雰囲気の中、ライヴは総主席・高木大地(g,vo)のおなじみの前説から始まった。高木はこれからフロントに立つアーティストとは思えない親しみやすさで、本ライヴから、ベースの埜咲ロクロウが正式メンバーとなったこと、スタッフとして俊英・秋葉龍が参加していること、そして、90年代“プロビデンス”のリーダーとして名を馳せ、現在は自身のバンド“那由他計画”を率いるレジェンド・キーボーディストの塚田円がゲスト出演することを紹介。

 さらに、英プログレの雄“U.K.”の1979年初来日公演で、ライヴ盤『NIGHT AFTER NIGHT』の公開収録のため、主催者側の依頼により観客が「U.K.コール」をしたという逸話を引き合いにだし、この場の観客にもコールを依頼した。主催者というか営業マンのような高木にのせられ、場内は手拍子にあわせ、何故かU.K.コールを練習することに。謎の風景に満足し、「こんな感じで“過剰に”に盛り上がって下さい。途中でマイクを向けるから」と言うと高木はステージ袖にはけていく。

 今日は途中で“キンゾク”コールをするんだなと思っていると、スタッフ・秋葉龍の2ndアルバム『Cities in People』の楽曲がSEで流れ、場内にようやくライヴ前のワクワクした雰囲気に。

 『八つ墓村』のテーマ曲が流れ、再び会場が物々しい雰囲気に包まれる中、高木大地(g,vo)、稲益宏美(vo)、後藤マスヒロ(ds)、埜咲ロクロウ(b)の新布陣が登場。1曲目は、なんと、ライヴ・ピーク時のアンセム「イタコ」。切り裂くような高木のギターとともに、スタートダッシュのような前のめりのビートが走る中、物狂いのように木魚をリズムを刻む稲益。思えば、登場時から稲益の動きは妖艶で、すでに憑りつかれた様相だった。「死ぬのが怖い。だから娘をイタコにさせた」のつかみの歌詞も、いつもの5割増しでダーティーに歌われ、客たちを煽る。

 そこでさらに、本日のレジェンド・塚田が登場。高木が20年近く着続けているというステージ衣装“箱男”に身を包んでいる。そもそも金属恵比須のファンだったことが今回のゲスト出演の発端とのことだが、遅れてやってきた箱男姿の塚田は中央で「イタコ」を熱唱。1曲目からのファンサービスの良さに、会場もどっと沸く。

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 続く2曲目は、歴史小説をコンセプトとした2018年作『武田家滅亡』から「新府城」。高木はGrecoのフライングVからレスポールに持ち替え、“箱男”の衣装が気に入ったという塚田はその装いのまま、大作の冒頭を飾るシンセを奏でる。レッド・ツェッペリン「カシミール」を引用したリフをバックに、宿命的な旋律を奏でる塚田。飴細工のように艶めくシンセの音色に、ジョルジオ・モロダーなどディスコ〜ハウス系のファンにもアピールするサウンドだなとふとよぎる。

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 「新府城」を壮大な前奏に、間髪入れずに「武田家滅亡」へ。武田家の無念と怨念を畳みかける稲益、ドラマティックに歌う高木のギターソロ、徐々熱を帯びる埜咲のベース、高揚感を引き上げる塚田のシンセと、場内のテンションをあげていき、ここで一回目のコールが要求された。稲益の「武田家」の呼びかけに「滅亡」で答える観客たち。同じことを考える人は多そうだが、武田さんの子孫の人がいたらどうするのか、少し不安に。

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 続く4曲目は、2019年作『シン・紅葉狩』収録の「彼岸過迄」。「彼岸過迄歩き続ける」のサビ部分で、なんと塚田円がヴォコーダーでコーラス参戦するというサービスが披露され、MCでは高木が「人間椅子にYMO」が混ざったようだったと笑いを誘った。塚田氏もやりたいことが出来たと満足げ。そんな色物ポイントもありつつ、後半の長尺の間奏にて披露された、埜咲の巧なベース・ソロも特筆すべきところ。24歳という若さにふさわしい勢いと、“歌うベース”と言える卓越したソロは、この日のハイライトの一つだったのではないだろうか。

 MCを挟み、ドラムの後藤マスヒロ作曲による「道連れ」、高木が高校時代に作曲したという「トイレの花子さん」を披露。頭脳警察〜人間椅子〜ジェラルド〜ダミアン浜田が率いるDamian Hamada's Creaturesという錚々たる経歴を持つ重鎮ドラマー、後藤に手による「道連れ」は、金属恵比須の中では異色のメジャーコードでファンキーなビートの楽曲。「トイレの花子さん」では、かつては憧れの存在だった後藤マスヒロ、塚田円とともに自身の高校時代の楽曲が演奏できるという高木の感動が伝わるパフォーマンスが繰り広げられた。

 再びMCを挟み、目玉である新曲「雪割草」がお披露目に。この日までに、“火サス”をモチーフにしたとの前情報やYouTubeで制作場面が公開されるなど、ファンの期待を煽りまくった同曲。金属史上最もポップかもしれないと言われたその曲は、確かに全くハードロックでもプログレでもなかった。岩崎宏美が歌っていた曲だといわれても納得してしまいそうな、80年代の歌謡曲風ナンバーで、稲益のヴォーカルもいつものホラー風味は全くなく、ウェットな情感たっぷり。この曲で初めて「愛してる」との歌詞が使われたとか。ただ、彼らの隠しても隠し切れないプログレ・マナーの演奏センスで、歌謡ナンバーを聴くのは新鮮。高木から塚田に「中間部はエイジアっぽく弾いて」とオーダーがあったという話もこぼれた。また、ラストの「あなたを割って咲くわ」と不穏なピアノで、いつもの怨念めいた背景も伝わり、やはり金属恵比須の楽曲に仕上がっているのだった。

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 次に、後藤マスヒロ楽曲としては2曲目の「う・ら・め・し・や」を披露。今回のセットリストはすべて塚田円が選んだというが、こちらも「道連れ」に近いファンキーさがあり、“那由他計画”を彷彿とする美麗な塚田のピアノ音も際立つ。そしてサビ部分は、つい口ずさんでしまいそうなキャッチーさで、前曲のポップさもあってか、リスナーを選ばない名曲だ。

 そして次に「みつしり」を演奏。表記は「みつしり」だが、曲中では「みっしり」と発音される同曲は、やはり京極夏彦『魍魎の匣』のアノ有名フレーズが元か。金属恵比須の楽曲は、「彼岸過迄」など文学ネタが多く、2022年には小松左京による未完のSF長編小説『虚無回廊』をモチーフとした同名タイトルのアルバムが発表されたのも記憶に新しい。このアルバムには、アニメ特撮音楽の巨匠、渡辺宙明に作曲指導を受けた「星空に消えた少年」も収録された。歴史、文学、特撮と面白チャンネルを多数持つ金属恵比須は、プログレファンだけが聴くのは勿体ないと改めて思う。

 ここで、今回の企画として、塚田円のソロ・タイムに。後藤、埜咲との共演で、プログレ界の新旧“プリンス”による競演が繰り広げられる。美麗なジャズから70〜80年代映画サントラをも横断するシンセワークが生で聴ける貴重な体験とともに、後藤、埜咲のテクニックと勢い迸るプレイが展開。トリオ演奏ながら、グルーヴ感あふれる演奏に自然と身体が揺れた。

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 貴重なセッションに乗るかたちで、一旦ステージからはけた高木と稲益が戻り、昨年発表された初ベスト『邪神覚醒』からタイトル曲を。プログレに特化した選曲のベスト盤の骨子ともいえる同曲を、邪悪なベースラインとギター&ベースの生み出すダイナミズム、シンセがもたらす空間性をもって味わう。稲益の歌唱力も映える金属恵比須屈指のプログレ名曲。続いて同ベストから、作曲者の高木が気に入っているという「猟奇爛漫」を。70年代後半〜80年代ハードロックの疾走感に加え、塚田によるEl&P『タルカス』をも思わせるキーボードが絶品のパフォーマンスだった。

 この曲の間奏部分で、ライヴ前に練習した「U.K.コール」の出番が。会場から沸く「UK!UK!UK!UK!」の声。てっきり「U.K.」を「キンゾク」に変えるものと思っていたが、何とそのまま「U.K.」だった。さらに、この間奏部分では、恒例の“猟奇爛漫体操”も盛り込まれる。観客が手をブラブラさせる謎の体操にのせて、「UK!」のコールは、本当に意味不明だが、のちにライヴ盤になったとしたら、プログレ・ファンがニヤリとする部分になるのではないか。会場も大いに盛り上がり、本編はここで終了。

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 アンコールは、バンドのアンセム「ハリガネムシ」。やはりこれを聴かずしては帰れない。塚田円のシンセも堪能できたし、謎の「U.K.コール」にも参加できたし、盛りだくさんの一夜が幕を閉じた。

 なお、この日のライヴは、ツイキャスにて配信中で、チケットは販売中。視聴期間は、5月11日(土)23:59まで。また、次回のライヴは、8月3日で、同じく吉祥寺・エレファントにて、ゲスト・キーボードにバンド“烏頭(うず)”を主宰するほか、渋さ知らズ、NOUでも活動する大和田千弘を迎えてのワンマンとのこと。


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[コメント]
自分が作った曲を1回のライブで2曲も演奏できて感無量です(道連れ、う・ら・め・し・や)。新体制での演奏はフレッシュで激アツでしたね(笑)。聴衆の皆さんともこの熱さを共有できたなら何よりです。それにしてもNATALのドラム・セットはとても鳴りが良くて気持ち良いですよ!
――後藤マスヒロ

金属恵比須の加入から12年、干支も一周しましたが、このタイミングでゲスト参加の塚田さん&正式加入のロクロウくんが新しい風を吹かせてくれたことによって、またここから何かが始まりそう!と思うようなライヴでした。これからの金属恵比須にもご期待ください!
――稲益宏美

新生金属恵比須におけるスタートダッシュの一助となれていたならば幸甚の至りです!まだまだ修行中の身ですが、今後皆様により良いパフォーマンスをお届けできるよう努力してまいりますのでよろしくお願いします!
――埜咲ロクロウ

昨年は裏でメンバーチェンジによる人事で大忙し。今後ライヴができるか心配でしたが杞憂でした。蓋を開けてみればソールドアウト。会場ではお客様の笑顔を見ることができて嬉しく思いました。ロクロウくんはもちろん、塚田さんの若きロック魂に揺り動かされ、バンド自体が若返った気がします。
――高木大地

『箱男』の衣装を着用して『イタコ』を歌唱し、『彼岸過迄』ではこの曲を初めて聞いた時から絶対合うだろうと思っていたボコーダー(ボーカルを機械的な音にするシンセサイザー)を投入し、もう思い残すことはありません。
――塚田円

撮影: 木村篤志
文: 川上影森UNXUN


金属恵比須〈猟奇爛漫FEST Vol.6〉セットリスト
2024年4月27日(土)
東京 吉祥寺シルヴァーエレファント

01. イタコ
02. 新府城
03. 彼岸過迄
04. 道連れ
05. トイレの花子さん
06. 雪割草
07. う・ら・め・し・や
08. みつしり
09. 塚田円キーボードソロ
10. 邪神覚醒
11. 猟奇爛漫

アンコール: ハリガネムシ


配信視聴期間: 5月11日(土)23:59まで
twitcasting.tv/c:silverelephant_tw/shopcart/292819
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