キリル・ペトレンコ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が、コロナ禍中に録音したショスタコーヴィチの交響曲第8、9、10番を収録するボックス・セットを2023年1月下旬に発表します。
本作は、2CD + Blu-rayからなり、Blu-rayには全曲のコンサート映像とペトレンコのインタビュー映像(日本語字幕付き)、96kHz/24bitのハイレゾ音源(ステレオ)と7.1.4 Dolby Atmos音源を収録。録音は第8番が2020年11月13日、第9番が2020年10月31日、第10番が2021年10月29日。録音場所はすべてベルリン・フィルハーモニーです。第8番はフィルハーモニーが閉鎖中のため無観客で演奏されました。
第8番は、第2次世界大戦の最中に書かれ、悲しみと絶望、そして美しさと希望が刻印されています。ベルリン・フィルとペトレンコは、観客のいないコンサートホールで、この演奏が人々の架け橋となることを願ってプログラムしました。ペトレンコはこの時の演奏について、「ベルリン・フィルと私は、ショスタコーヴィチの交響曲を聴衆のいない会場で、それでもあらゆる聴き手に届くように演奏しました。それは特異な体験でした」と語っています。
第8番とは対極にある交響曲第9番はフィルハーモニーが閉鎖される直前に録音されたもの。第2次世界大戦末期、
ショスタコーヴィチは戦争の勝利を讃える作品を書くことを期待されていましたが、彼はこれらの主張を退け、この交響曲ではヒロイックな栄光を明確に拒否し、軽妙で人を小馬鹿にしたような異なる作品を完成させて強い非難を受けました。
第10番はスターリンの死後、初めて書かれた交響曲でした。スターリン時代を想起させる抑圧的でしばしばグロテスクな音楽が続きますが、最後は希望に満ちた楽章で締めくくられます。ペトレンコは、この作品について「ショスタコーヴィチは、スターリンの軛から解放され、自身の創造力を再び見出したのです。長くつづいた闇に、再び光が射した瞬間でした」と語っています。
また、このボックス・セットについて、ペトレンコは「極めて限られた条件下でのみ合奏することができたパンデミック期に、私はショスタコーヴィチの音楽をかつてないほど身近に感じたのです。さらに、本盤が世に出る今、ショスタコーヴィチの音楽は、単に過去の声であるだけでなく、生々しい今日性を帯びてしまいました。ショスタコーヴィチの音楽は、とりわけ今日のような時期に、自由と民主主義の理想を信じるために必要な自信と力を私たちに与えます。彼は、私たちを勇気づけてくれるロールモデルなのです」とコメントしています。