今夏の各フェスへの出演も記憶に新しい
LUCKY TAPESが、〈FUJI ROCK FESTIVAL '19〉にて初披露した新曲「Actor」を10月2日(水)より配信リリース。
「Actor」のジャケットを手掛けたのは、イラストレーターのAki Ishibashi。また、ヴォーカル高橋 海へのインタビューも織り交ぜたオフィシャル・ライナーノーツがビクターエンタテインメントの
ホームページにて公開されており、「Actor」をより深く楽しめるものになっています。
なお、LUCKY TAPESはこの新曲を携え、10月11日(金)北海道・札幌PENNY LANEを皮切りに全国ツアー〈“Actor”release & one man tour〉を開催します。
[「Actor」オフィシャル・ライナーノーツ]ライター: 黒田隆太朗
「“僕ってなんか変じゃない?”と歌っていますね」と尋ねたら、「そう、変なんですよ」と言って高橋海は笑っていた。昨年リリースした「MOOD」(「22」『dressing』に収録)の創作で自然体になれたという彼は、次第に音楽の中に素直な感情を忍ばせるようになった。新作の「Actor」も、自分のひねくれたところとマイペースな部分をそのまま言葉にした楽曲だという。
じつに1年ぶり、素晴らしきアルバム『dressing』から少し間を置いての新曲である。フジロック、ホワイトステージへの出演をきっかけに書いたという1曲で、「出演発表の際に、そのステージで新曲を披露すると言って、自らの首を締めました(笑)」というのが本作が生まれる発端だ。そこからストックしてあったデモを元に、ギターを加えるなどアレンジを練り直し、今の歌詞が乗ることで完成へと向かっていったのが本作「Actor」である。現地で聴いていたリスナーは、きっと心待ちにしていたことだろう。
冒頭のギターリフは自宅のDAWで録ったとのことで、だからだろうか、いつも以上に作家の手の温度感や、気兼ねのない温かみを感じる。ラップと歌の間を突くような歌唱方は、とくに『dressing』からトライしていることであり、「Joy」で見せていたゴスペルからの影響も引き続きコーラスで表現されている。13人編成の大所帯で動くことが個性になっているLUCKY TAPESだが、楽器面だけではない、人の声のダイナミクスこそ彼らの音楽をゴージャスに変えるスパイスだ。また、韓国のR&Bやヒップホップ・シーンへと傾倒している高橋海の音楽趣味は(韓国出身のアーティストの来日公演に行くと、本当によく彼がいます!)、肩の力が抜けたテンポ感が心地いい「Actor」にもうっすら表れていると見ていいだろう。いわば、LUCKY TAPESのモードを存分に楽しめる1曲である。
そして本作には、前作同様自身の生きるスタンスを書いたという歌詞がある。中でも目を引くのは、“スーパーヒーロー”というリリックだ。
「みんなが思い描くような、悪党を倒す正義のスーパーヒーローとはちょっと違うかもしれない。もっと個人的なものというか、それぞれが自分の中に存在するヒーロー像のこと。それは、親や憧れの先輩かもしれないし、部活動なんかで、今では考えられないほど打ち込み頑張っていた自分自身かもしれない。懸命に励んだ自分の行動だったり、自分の中にあるかけがえのない瞬間こそが、この曲で歌っているスーパーヒーローのイメージ」。この言葉はきっと、これまでのLUCKY TAPESの音楽すべてに通底している価値観じゃないだろうか。
『Cigarette & Alcohol』をリリースした際の取材では、高橋海は「ディズニーランドのような音楽を作りたい」と言っていた。僕は言い得て妙だなと思った。それはこの音楽がいずれそうなるだろうと期待していたから、だけではない。LUCKY TAPESの音楽が、いずれ解ける魔法みたいに華やかで、色とりどりで、せつないからだ。今回の取材で「自分は太陽みたいな人になりたいわけじゃない」と彼は語っていたが、しかし、だからこそ繊細な光を宿したポップを書けるのではないだろうか。どちらかと言うと、LUCKY TAPESのメンバーはサポートを含め、エンタテインメント志向の人が多いと思っていると語っていたのも面白い。楽曲を作るのは高橋海だが、このバンドの煌めきは、案外ほかのメンバーのキャラクターがあってこそなのかもしれない。
最後に、彼からのメッセージを書きとめておこう。
「誰もが“自分”という役を演じながら、この世界に生きる意味を探している。そのことに必死になりすぎて自分自身を見失いかけている人を覚めた視線で眺めたり、自然体であることの難しさだったり。そんなようなことを自分の少し捻くれた視点から描きました」