日本の文化から徐々に失われつつある、過去の時代の雰囲気を“失日本”と呼び、現代的なサウンドテクニックで日本古来の印象を融合させた、私的でコンセプチャルな音楽を生み出す広島拠点のアーティスト“冥丁”の2018年の傑作デビュー・アルバム『怪談』が、ボーナストラック2曲を追加し、5周年記念盤として初CD化。7月21日（金）にリリースされることが決定しました。

　日本の幽霊話のジャンルの1つである怪談。その怪談の持つ闇の中の美しさや「Lost Japanese Mood」（失われた日本のムード）と称する雰囲気を、精巧な作曲構成に落とし込んだ冥丁の1stアルバム『怪談』は、Pitchfork「Best Experimental Albums of 2018」への選出をはじめ、 Bandcamp、The Wireなどさまざまな海外メディアから賞賛され、世界のアンビエント〜エクスペリメンタル・シーンに冥丁の名を確立しました。その後リリースされる『小町』『古風』&『古風II』などの「Lost Japanese Mood」を主題にしたシリーズの最初のアルバムであり、冥丁独自の音世界と卓越した音楽性を示した重要作として知られています。

　本アルバムは、日本各地に伝わる伝説や幽霊話に独自の解釈を加えて文学作品に昇華させた小泉八雲の名作『怪談』に大きな着想を得ており、「漣（さざなみ）」「骨董」「障子」「伪（むしろ）」 などの楽曲は、小泉八雲作品へのオマージュとも言えます。また、漫画家・水木しげるからも影響を受けており、「塔婆」や「地蔵」は漫画『ゲゲゲの鬼太郎』へのオマージュとして制作。日本の重要な芸術から影響を受け、明らかな不気味な要素だけではなく、ユーモア、情緒、そして哀愁も、まるで霧で濡れた苔のように視覚的に表現された楽曲となっています。また、冥丁は制作時にローファイ・ヒップホップの新しい波にも興味を持ち、その要素を再編して絶妙に織り混ぜ、繊細なバランスで怪談の持つ和の雰囲気を構築しています。

　本5周年記念盤は、オリジナル・リリース元の〈Evening Chants〉と、『古風』シリーズをリリースしている〈KITCHEN. LABEL〉という2つのシンガポールのレーベルによる共同リリースとして、ボーナストラック2曲を追加したCD盤が先行発売。その後、カラーヴァイナル（スモークヘイズ）の発売も予定されています。冥丁本人の曲解説が掲載された8ページブックレットも付属しており、マスタリングはテイラー・デュプリーが担当しています。