アルバムの制作は、2016年にニューヨークで行なわれたボールドウィンのトリビュート・イベントから始まりました。『次は火だ』に深い感銘を受けたというミシェルは、「私にとっては啓示のようなもので、いろいろな意味で心が和らぎました。とくに最初の章では、まるで私の家族のことが書かれているようでした。“私は、軟弱だと思われたくない黒人男性に囲まれて育ちました”というのは、彼が『甥への手紙』(A Letter to My Nephew)の中で記しているものです」と語り、アメリカの人種・階級闘争の困難な歴史について、そしてそれがミシェルや自身の家族に及ぼした影響について、深く理解できたといいます。アルバム・タイトルにある「ノー・モア・ウォーター」(No More Water)とは、ボールドウィンの著作や黒人霊歌「Mary Don’t You Weep」の歌詞、そしてさらに遡ると旧約聖書の『創世記』の「ノアの箱舟」の章で登場するフレーズであり、それらからの引用です。