さる8月21日(木)、映画『紙の月』(11月15日公開)の完成報告会見が都内で開催。
銀行で働く平凡な主婦から横領犯へと変貌していく衝撃的な主人公“梅澤梨花”を演じた
宮沢りえ、梨花の先輩社員で次第に梨花を追い詰めていく厳格な事務員“隅より子”役の
小林聡美、梨花の同僚でしたたかな銀行の窓口係“相川恵子”役の
大島優子という豪華キャスト3名をはじめ、昨年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した傑作『桐島、部活やめるってよ』を送り出した鬼才・
吉田大八監督、原作者の
角田光代が登壇しました。
キャストはそれぞれ自身が演じた役柄について語りつつも、お互いにツッコミを入れる和やかな雰囲気! また原作の角田より、映画の完成度の高さについてお墨付きを得ると一同、安堵の表情に。
吉田監督は、映画オリジナルの要素について語りつつ、この豪華キャストを集められたことを自画自賛。黒のシックな衣裳で揃ったキャスト、スタッフの団結力の高さが伺える会見となりました。
(C)2014「紙の月」製作委員会
■『紙の月』完成報告会見イベントより
宮沢 「こんにちは、本日はお集まりいただきありがとうございます。改めて7年ぶりの主演ということに驚いています。7年の間に溜めておいたものを出し切った作品です。今までにやったことのない役で戸惑いもありましたが、監督のリードで梨花という役の輪郭がはっきりしていって、楽しいだけではなく濃密な撮影になりました」
小林 「お暑い中お集まりいただき、ありがとうございます。宮沢りえさんと私、2人ともキャリアは相当なんですが、実は初共演なんです。素敵なスタッフ・キャストの方といっしょに緊張感のある楽しい撮影でした」
大島 「こんばんは、お集まりいただきありがとうございます。先輩方のお芝居を間近で見て、空気感や芝居への取り組み方、姿勢などを勉強させていただきました。感化されながら、緊張感を持って、一つ一つ繊細に演じさせていただきました。また、監督に相川というオリジナルキャラクターを作っていただき、そしてキャスティングしていただいたこと、とても嬉しく思っています。宮沢さん演じる梨花とどう関わっていくか楽しみにしていてください」
角田 「初めまして。映画に関しては特に何もしていません。素晴らしい作品にしていただいて、きっと私がいちばん嬉しいと思います!」
吉田監督 「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。一人でも多くの方に映画を観ていただけるよう、よろしくお願いいたします」
――宮沢さんは7年ぶりの映画主演となりましたが、普通の主婦が横領犯になるというセンセーショナルな内容です。オファーがあったとき、どう思われましたか。
宮沢 「7年間サボっていたわけではなく(笑)、舞台中心に仕事をしていました。私はタイミングってすごく大事だと思っていて、映画もそろそろやりたいなと思っていたら、オファーをいただいたんです。すぐに“やる!”という感じではなく、今までにやったことのない役を始めるにはちょっと時間がかかりました。でも吉田監督と仕事がしたい、見たことのない自分を見てみたいと思って、受けました。案の定、見たことのない自分の顔があって衝撃でした(笑)」
――小林さんは梨花とは対照的に厳格でストイックな先輩社員・隅を演じられましたが、どんなことを意識して役作りされましたか。
小林 「普段親しみやすいキャラなので(笑)、お局で20年以上のキャリアがあって仕事のできる銀行員ということで、取っつきにくい人になるように頑張ってやってみたら、想像以上に怖くなりましたね(笑)」
大島 「怖かったです(笑)」
――大島さん、吉田監督の元で女優大先輩の宮沢さん、小林さんお二人との演技というのはいかがでしたでしょうか。
大島 「間近で、監督と宮沢さんや小林さんのやりとりを見ていて、監督の言うことを体に入れてそれを噛み砕いてやってみる、大先輩でも監督の的確な指示を調理して提出するということをやっているんだ、私もやっていいんだと、とても勉強になりました」
――ご自身の作品が映画化されてことへのお気持ち、そしてすでに映画をご覧になったとのことですが、よろしければ映画のご感想もお聞かせください。
角田 「映画になるのは嬉しいです! 映画を拝見したら、もの凄い映画になっていて度胆を抜かれました。女性は言い訳したくなると思うのですが、この映画はそんなことしないですし、個人の正義もないんですよね。これを作り上げた監督はすごいです!良いことは起きないけれど、観たあとは爽快な気分になります。私には書けないです(笑)」
宮沢 「書いてください(笑)」
――映画オリジナルの役、小林さん演じる隅と、大島さん演じる相川が加わったりと、監督は原作を大胆に脚色されていますが、映画化にあたり、どのような思いで臨んだのでしょうか。
吉田監督 「原作を読んで、世の中に牙をむいている作品だと感じました。そんな原作を映画化するにあたっては、挑戦する姿勢を見せなければならないと思い、映画の表現として隅・相川というキャラクターが出来ました」
[マスコミからの質問]
――映画を拝見して描写がリアルで一歩間違えれば自分もそうなるのでは、という怖さを感じたのですが、梨花を演じられて、共感できる部分はあったでしょうか。
宮沢 「あることがきっかけで物事が大きく動き出すことは誰にでもあること。狂気というタンクを満タンにしながら、梨花は悪に手を染めているのに真っ黒じゃないのが不思議なんですよね。共感するとしたら、到達点を脇目に見ながらまだまだ先に進む生命力、貪欲さですね。自分にもそういったものがある気がします」
――梨花と隅という二人の対峙は、怒鳴り合うような激しさもないところが、逆に怖さ・緊張を感じさせる印象深いシーンでしたが、どう挑まれていたのでしょうか。
小林 「あのシーンは他のシーンとは違いました。スタッフも私たちを気遣ってくれて、空気を作ってくれました。素直に対峙して、見方は戦っているように見えるのですが、互いに共感している部分もあるんです。役柄だけでなく、宮沢さんと分かり合えたような気がします」
宮沢 「完全な順撮りではなかったのですが、このシーンは最後のほうに撮りました。梨花という役が染みついていて、そこだけが特別ではなかったです。ただ、小林さんとはいつか共演してみたいと思っていたので、本当はもっと和やかな間柄の役をやりたかったなと愚痴を言ったりしました(笑)」
――登壇されているキャストの皆さまが演じた、3人の女性が非常に印象的でした。この豪華女優陣の皆さまを演出されていかがでしたでしょうか。
吉田監督 「宮沢さん、小林さんが初共演なのは意外で、今までになかったんだと驚きでした。そこに大島さんまでいるというのは……この3人を揃えられたことを褒めてほしいですね。これを実現しただけで、“仕事したな”と自己満足しています(笑)」
――「こんなに繊細な現場は初めてでした」と仰っていた記事を拝見したのですが、吉田組の現場、吉田監督の演出はいかがでしたか?
大島 「1対1でコミュニケーションをとりながら繊細に的確に指示されるのが、『紙の月』を見るともっともっとわかると思います」
――原作とはまた違った主人公となった、宮沢さんの演じる梨花はいかがでしたでしょうか。
角田 「凄い迫力で怖かったです。どんどん悪になっていくにつれ、反比例に透明な美しさが出てきて素晴らしかったです」
宮沢 「やったー!」
■『紙の月』
2014年11月15日(土)全国ロードショー