今年6月にソロ・デビュー20周年を迎えた高田漣が、10月19(水)にニュー・アルバム『CONCERT FOR MODERN TIMES』をリリース。10月14日(金)に収録曲「路地裏のシーニュ」が先行配信され、ミュージック・ビデオも公開されています。
『CONCERT FOR MODERN TIMES』は、前作『FRESH』から約3年ぶりとなる新作。国の重要文化財である東京・自由学園明日館の講堂にて、8人編成のバンドによるライヴ形式で一発録音された作品。20世紀を代表するモダニズム建築家、フランク・ロイド・ライトの設計による自由学園明日館のその“場”の魔力に導かれるように書き下ろした新曲5曲に、既発曲のセルフカヴァー等を含む全10曲が収録されています。
また、10月14日(金)19:00〜10月23日(日)23:00まで映像版『CONCERT FOR MODERN TIMES』がアンコール配信されます。アルバムの発売に先駆け公開された実録映像で、自由学園明日館の講堂にて繰り広げられた、繊細な生演奏を捉えた臨場感溢れるドキュメンタリーとなっています。
二〇二二年が自分のソロ活動二十周年の記念すべき年であるということはこのアルバム『CONCERT FOR MODERN TIMES』を制作する上で重要事項ではありませんでした。実のところ、このアルバムを制作する経緯や録音過程があまりに特異なので、意識しなかった――或いは出来なかった――というのが事実かも知れません。通常のアルバム制作とは違い、まずは趣のある〈場〉での録音という命題があったのです。近年でいえばニール・ヤング『バーン』や古くはジェイムズ・テイラー『ワン・マン・ドック』や細野晴臣『ホソノハウス』のような通常のスタジオ空間でない場所での録音、さらに欲を付け加えて一発録りライブ録音、且つそれをウィーリー・ネルソン『テアトロ』に於けるヴィム・ヴェンダース監督のようにドキュメント作品として映像にも残すという些か無謀ともいえるアイデアがありきだったのです。会場選びの最初期から念頭にあったのは二十世紀を代表するモダニズム建築家フランク・ロイド・ライトの設計による自由学園の明日館で、光栄にも実現に至りました。実際に録音に使用させて頂いたのはその本館ではなく講堂ではありましたが、場所柄あまり大きな音量での演奏が不可能であり、その〈場〉の持つ魔力に導かれるまま室内楽的な作品を作ることになりました。 この明日館が建てられた今から百年前の一九二〇年代、モダニズムは建築のみならずあらゆる分野に渡って模索されました。このアルバムに先立って書いていた「オーランドー」はモダニズム文学のヴァージニア・ウルフの同名小説からタイトルを頂きました。ここに選ばれた作品はすべて何らかのかたちで、この時代、或いはモダン・タイムズ――即ち近代――に関係するもので、同時にタイトルのコンサート〈Concert〉はライブ演奏の意味でもありますが、同時にその語源であるラテン語〈Concerto〉の「論じ合う」という意味も含んでいます。混沌として、様々な分断ばかりが感じられる二十一世紀の二十年代にあらためて「近代化とは何であろうか」ということを考える少しばかりの助けになればと願って止みません。 そしてこの場を借りて、この無謀な試みに参加して下さった音楽家の皆様、音響班や撮影班の皆様、そして何より二十年間波風立てずに粛々と活動を続けてきた高田漣を応援して下さった皆様に心よりの感謝の気持ちをお伝えさせて頂きたいです。 ――高田漣