東京音楽大学(TCM)が本年度より新たに開講した付属オーケストラ・アカデミー。これまでの公演を通して、アカデミー生たちは「オーケストラの中で演奏すること」を着実に学び始めています。指揮者は大人数からなるオーケストラをまとめ上げますが、その中にいる演奏者はただ単に指揮者の指示を待って、周りに合わせていればいいという訳ではありません。一人ひとりが積極的に自分の意思をもって音楽を発信しなければなりません。その上で、他の楽器やパートの奏者、指揮者とコミュニケーションをとっていくことで、オーケストラという巨大な音の生命体を創造することができます。アカデミー生たちは、そのことを自覚し、その技術や能力を身につけ始めています。11月6日(日)に東京・東京音楽大学 TCMホールにて開催される今回の演奏会では、その成長を、ホルン奏者でもある
水野信行の指揮のもと、
ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」というまさに偉大な音楽を通して聴いていただけると思います。
ベートーヴェンの交響曲「英雄」は、フランス革命後の混乱から国を立て直したナポレオンのために作曲したとされています。特に、今回演奏する第1楽章は、英雄のもつイメージの通り、情熱的で、力強くたくましく、長大な音楽で、聴き手の前にまさにそびえ立つような印象を受けます。アカデミー生、一人ひとりが全ての音を光輝かせて、大きな豊かな音の響きを作り出します。この曲に関連したサプライズ演奏もあります、乞うご期待。
もう一つ取り上げる作品は、
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調。ドイツ・ロマン派の中でもとりわけ優れた名曲で、情緒と理性のバランスが見事に調和された作品です。独奏ヴァイオリンは魅力的な歌と、決して品性を損なわない流麗な技巧を披露してくれます。ソリストは本学博士後期課程に在学中の福田麻子。2021年東京音楽コンクール優勝をはじめ数々の賞を受賞しており、これからが益々楽しみな若手ヴァイオリニストです。同世代のアカデミー生との共演ではどんな演奏を聴かせてくれるのかも聴きどころです。
©有田周平©平舘平