開催中のコンサート・ツアーがラスト・ツアーになることを発表している
2CELLOSが、11月21日に大阪・丸善インテックアリーナ大阪、11月22日に東京・日本武道館にて、最後の来日公演を開催しました。
なお、11月22日に行われた日本武道館公演のセットリストで構成されたプレイリストが期間限定で公開中です。
[ライヴ・レポート] ライヴはチェロの音色の豊かさと美しさを聴かせる冒頭から、おなじみの同郷ドラマー、ドゥーシャン・クランツを迎えたロック・パートを経て美しいチェロ本来の音色を味うアンコール終盤まで間髪なし。2人の掛け合いはかつてなくスピード感にあふれエネルギッシュで、激しい超絶パフォーマンスで切れまくる弓の弦がスクリーンに映し出されていた2CELLOSには楽譜が存在しない。演奏曲のコードを書いたメモすらない。オリジナル曲を聴くだけで2本のチェロにより再構築していくルカとハウザーは“あ・うん”の呼吸でパートを弾き分けている。幼少の頃から鍛えあげた音楽的能力と高度なテクニックで2人にしか創造しえない音宇宙=チェロヴァースを作り上げてきたのだ。
自由な発想から生み出されたバッハやヴィヴァルディ、ベートーヴェン等とAC/DCやレッド・ツェッペリン等ロック名曲とのマッシュアップは2CELLOSの十八番となり、難曲「バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード」+ガンズ・アンド・ローゼズの「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」、ウィリアムテル序曲からのアイアン・メイデンへの移行が楽しい「トゥルーパ―」は遊び心満載だ。
コロナ禍で完成させた最新アルバム『デディケイテッド』収録曲のボン・ジョヴィ「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」のMV公開時(2021年4月)に2人は「この曲のイントロはミステリアスな雰囲気があってチェロで演奏するのにぴったりだと思うんだ。でも曲全体をカバーするのはチャレンジだったよ。いつの日か僕たちのライヴでこの曲をプレイしたらきっと会場はすごく盛り上がるだろうね…きっとライヴ後半に向かうところで演奏することになるかな。実際にみんながこの曲を一緒に歌っている姿が想像できるよ」とコメントしている。
まさにこの言葉どおりライヴ終盤で奏されるとイントロから盛り上がりは最高潮となり、会場全体がシングアロングするハイライトになっていた。今回のファイナル・ツアーではオーディエンスと一緒に歌うシーンも多く、ライヴの最後を締めくくるアンコール「ハレルヤ」では美しいハーモニーが武道館に満ち溢れた。「チェロは楽器の中で人間の声に近い音域をもっているんだよ」とチェロの魅力を常々インタビューで語っていた2人が、ステージ上で楽しそうに聞き入っている姿はとても印象的だった。
年を重ねても変わらずチェロと共に楽しい毎日を送る2人のコミカルな演技満載のMVとともに演奏された「ウェイク・ミー・アップ」に象徴されるように、“そこにチェロがある限り”これからも2人は演奏を続けていくことを確信した一夜であり、1本の演奏映像が大きく人生を変えたルカとハウザーの新しい道をこれからも注目していきたいと思わせる公演だった。Photo by Yuki Kuroyanagi