2022/12/02掲載(Last Update:22/12/03 13:09)
スウェーデン人の音楽家の2人、エレン・アークブロ(Ellen Arkbro)とヨハン・グレイデン(Johan Graden)による初のデュオ・アルバム『I get along without you very well(アイ・ゲット・アロング・ウィズアウト・ユー・ヴェリー・ウェル)』の日本盤CDが、12月23日(金)に「HEADZ」より発売されます。
エレン・アークブロは、ストックホルム出身のサウンド・アーティスト/作曲家/ミュージシャン。Kali Maloneや
カテリーナ・バルビエリとの交流でも知られ、その作品は英ロンドンのバービカン(Barbican)、パリのGRM(Groupe de Recherches Musicales)、ケルンのケルン・フィルハーモニー(Kölner Philharmonie)などの一流の施設で世界的に紹介されています。
一方、ヨハン・グレイデンもスウェーデン出身で、現在はヨルダンのアンマン在住。2018年に“ジャズ meets 室内楽”的なリーダー作『Olägenheter』を発表するなど、クラシック界とコンテンポラリージャズ・シーンを行き来するピアニストで、エレンのソロ名義での2017年作『For organ and brass』でもオルガンで共演し、絶賛を浴びました。
この2人による初のデュオ名義のアルバムは、ハードコアな作風のドローン作家であり、ギター、コンサーティーナ、パイプオルガン、シンセサイザーなどのプレイヤーとしての印象が強いエレンの、本格的なヴォーカル(クレジット上はvoice)を全曲フィーチャーしたという予想外な仕上がり。エレンのウィスパー・ヴォイスは、マジー・スターの
ホープ・サンドヴァルを想起させ、同じ北欧の
スザンナ・アンド・ザ・マジカル・オーケストラにも通じますが、より荘厳で、儚げで、時に重厚で、クラシカルな要素も。それでいて、ヨハンのピアノのほか、木管楽器、ブラス、コントラバスといった生楽器、シンセとともに、有機的かつ繊細に配されたアンサンブルを形成しており、適度な緊張感を湛えながらも、全体的にゆったりとした聴き心地の良いアルバムとなっています。
スウェーデン出身の優れた音楽家のデュオが、数年間に渡り、じっくりと時間を掛け、熱心かつ親密な共同制作によって完成させた究極のコラボ・アルバム。バス・クラリネットを大胆に使用し、ヴォーカルと生楽器による新たな表現を実践した
ビョークの『
フォソーラ』にも呼応するかのような、2022年の隠れたマスターピースと言えます。
解説は、最新作『
Quiet Corner - Always By Your Side』をリリースしたばかりのQuiet Cornerの山本勇樹、
Shuta Hiraki名義の音楽活動でも知られ、本作をnoteにて紹介した“よろすず”、そして本作に惚れ込んで日本盤をリリースすることを決めた「HEADZ」主宰の佐々木敦が担当しています。
なお、本作は、iTunes、spotify、Amazon Music他にてデジタル配信中ですが、この日本盤CDのみ、解説・歌詞・対訳付で、ボーナス・トラックとして新曲「Postcard greetings」1曲が収録されます。
[コメント]知的であり前衛的、そして何より洗練を極めている。まさに静かなる衝撃、そう言うにふさわしい作品だ。――山本勇樹(Quiet Corner)その出来は感動的なほどに素晴らしく、歌と楽器が織りなすアンサンブルとしての鳴りは付け焼き刃なところが全くない、音と音が深く結びついた理想形とすらいえるものになっている。――よろすず(Shuta Hiraki)全体として感傷的な、どこか悲劇的なトーンさえ感じさせる作品だが、Ellenの透き通った声には哀しみのみならず、微かな、だが確かな希望の光も宿っている。時間を超えて聴かれ続けていくだろう、正真正銘の名盤である。――佐々木敦