がんのため2022年9月に急逝したピアニスト / 指揮者の
ラルス・フォークトと、
クリスティアン・テツラフ(vn)、
ターニャ・テツラフ(vc)による、トリオとしては最後の録音を収めた『
シューベルト:ピアノ三重奏曲集 他』が2023年2月17日(金)に発売されます。
収録曲は、シューベルトのピアノ三重奏曲第1番、ピアノ三重奏曲第2番、アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D 821 - チェロとピアノによる。2021年2月と6月にドイツ・ブレーメンのゼンデザールで録音されました。
ドイツの中堅世代を代表するソリスト3人による、シューベルトの後期作品の録音セッションが行われたのは、フォークトが癌の診断を受ける少し前でしたが、彼はセッションの合間に痛みをこらえてソファに横たわることもあったそうです。しかし録音からはそのような気配は感じられず、端正で軽やかに、必要とあらば地響きを感じさせるほどの力強さでピアノを奏で、テツラフ兄妹と一体となり触発し合って間然するところのない音楽を奏でています。3人のすばらしい技術・解釈は言うまでもなく、後期シューベルトならではの天国的な“歌”の魅力と、和声の変化がもたらす明暗の情感も十分。フォークトが「僕の人生のすべてはここに向かっていたんじゃないかとさえ思える」と語った第2番ほか、選曲の充実と相まって後期シューベルトの世界に深く浸れるアルバムとなっています。
輸入盤ブックレット(ドイツ語 / 英語)にはテツラフ兄妹によるこの録音の思い出を7ページにわたって掲載。国内仕様盤にはその全訳と、シューベルト研究家の堀朋平による解説が付きます。
生前、この録音を聴いたフォークトは、テツラフ兄妹に「あまり時間が残されていないなら、お別れにはこれがふさわしい。君たち二人は最高だ。クリストフ(・フランケ / 録音プロデューサー兼エンジニア)も実に素晴らしい。そしてフランツ(・シューベルト)ときたら。信じがたい。なんという表現。なんという壊れやすさ。なんという愛」と伝えました。