2022年の10月に31年ぶりのオリジナル・ソロ・アルバム『
婦人の肖像 (Portrait of a Lady)』をリリースした
サザンオールスターズの
原由子が、最新作を携え3月6日・7日に神奈川・鎌倉芸術館でワンマン・ライヴを開催。豪華バンドメンバーと極上のアンサンブルを奏でました。
音楽キャリア44年にして4作目のオリジナル・アルバムとなる本作には、すべて新たにレコーディングされた全10曲の新曲を収録。
桑田佳祐全面バックアップのもと制作され、これまでの音楽性はもちろんのこと、今この時代だからこそ生まれた新境地とも言える楽曲が並んでいます。作品がリリースされると、久しぶりのテレビ出演やラジオでの楽曲オンエアが大きな反響を呼び、リリースから4週連続でオリコン週間アルバムランキングのTOP10に入るなどロング・ヒット。2022年の女性ソロ・アーティストによるオリジナル作品の金字塔といっても過言ではありません。
そして、アルバムだけではなく、作品リリースのタイミングで発表された13年ぶりの原由子のソロ・ワンマン・ライヴについても大きな注目を集めていた中で、1月中旬にライヴ詳細の発表とともに、チケットの先行受付が開始されると規定の座席数を大幅に上回る応募が殺到。その状況を受け急遽、7日の公演を全国の映画館でライヴ・ビューイングすることも決定するなど66歳にして、今、原由子がソロ・ミュージシャンとしても音楽ファンから大きく注目されています。
ライヴのタイトルは、アルバムと同じタイトルを冠した〈原 由子 スペシャルライブ 2023「婦人の肖像(Portrait of a Lady)」〉。アルバムに「鎌倉 On The Beach」という曲が収録されているように、今回のライヴ会場となった鎌倉芸術館がある“鎌倉”は原のゆかりの地ともいうべき土地。奇しくも、13年前のワンマン・ライヴも同会場で開催されており、思い入れのある特別な会場でのライヴということで、スペシャル・ライヴと銘打たれています。
また、本ライヴのセットリストを各ストリーミング・サイトで聞くことのできるプレイリストがオフィシャルで公開。こちらもぜひご堪能いただきたいところです。
[ライヴ・レポート] 時刻は18時30分、オープニングSEとして琴の旋律が会場に鳴り響くと、まずはサポートミュージシャンが入場。斎藤誠(Gt)、小倉博和(Gt)、角田俊介(Ba)、河村“カースケ”智康(Dr)、曽我淳一(Key)、山本拓夫(Sax)、西村浩二(Tp)、金原千恵子(Vn)、笠原あやの(Vc)、村石有香(Cho)、サザンオールスターズや桑田佳祐のソロライブでも活躍する超豪華ミュージシャン10名だ。続けて、割れんばかりの大きな拍手に迎えられて、本日の主役である原 由子が登場。舞台中央のキーボード・ボーカルの立ち位置に座ると、サザンオールスターズの楽曲「鎌倉物語」を早速披露。この楽曲は、1985年にリリースされたサザン8作目のオリジナル・アルバム『KAMAKURA』に収録された、原 由子のリードボーカルナンバーだ。今や鎌倉の定番曲として、全世代問わず愛されるこの名曲から、鎌倉の地でのライブが幕を開けた。続けて、90年代の原 由子ソロの名曲「涙の天使に微笑みを」「少女時代」を演奏。柔らかな原の空気感を表現したかのようなステージセットや照明の演出もあり、会場は優しくも温かな音楽愛溢れる空間に染まっていく。
本日のライブは、サザンオールスターズ関連のライブにおいて、新型コロナウイルスの流行以来、長らく禁止されていた公演中の発声が、ようやくマスク着用のもと解禁されたライブということもあり、観客フロアの熱量もすこぶる高い。そんな中、最新作『婦人の肖像(Portrait of a Lady)』についてMCで語った原は、アルバムから「千の扉〜Thousand Doors」(NHK「みんなのうた」2022年10〜11月新曲)と、ビリー・アイリッシュのような最先端ポップスからサウンドの着想を得たという「オモタイキズナ」を2曲続けて披露。ダンサーも登場するなど、ホール公演とは思えない趣向の凝らされた贅沢なライブだ。「旅にまつわる曲を聴いて頂きたいと思います」という前振りの後に披露されたのは、「花咲く旅路」。1991年にリリースされた原のオリジナル・アルバム『MOTHER』に収録されている楽曲で、当時、東海旅客鉄道のテレビCMで楽曲が使用され人気を博した情緒漂う荘厳な1曲である。続けて最新アルバム収録の「旅情」、2010年に発売された原のソロ企画アルバム『ハラッド』に収録された「京都物語」を披露するなど、心地よいアンサンブルと、原の唯一無二の歌声が、観客を音楽の旅に誘う。
ステージ背面には大きなLEDのビジョンも仕込まれており、10曲目で画面いっぱいに映し出されたのはサンリオの人気キャラクター“ぐでたま”。昨年Netflixで独占配信されたシリーズ「ぐでたま 〜母をたずねてどんくらい〜」の主題歌として書き下ろした「ぐでたま行進曲」をダンサーとともに楽しく歌いあげる。かわいらしくポップな楽曲も作ることのできる、原 由子のソング・ラインティング能力の高さを改めて認識する瞬間だ。最新作の中で特に大人な魅力が溢れたジャジーなナンバー「夜の訪問者」では、ハンドマイクで歌唱をするなど、ステージパフォーマンスも色とりどり。続けて、ピアノからギターに持ち替えて突入した生ギターのコーナーでは、「ヤバイね愛てえ奴は」と「Good Times〜あの空は何を語る」をバンドメンバーとともに弾き語る。『婦人の肖像(Portrait of a Lady)』において、これまでの原 由子像を一新したともいえるこの2曲。極上のバンドアンサンブルに乗せてアコースティックギターのサウンドが会場に爽やかな風を吹かした。
ライブも終盤に差し掛かると、ビジョンに鎌倉の名所が映し出される中で披露した原 由子ソロの代名詞ともいえる「あじさいのうた」をきっかけに、一層ライブは大きく勢いづいていく。「鎌倉物語」から始まった鎌倉でのこのライブ。大きなハイライトとなったのは、最新アルバムのリード曲「鎌倉 On The Beach」だ。軽快な原 由子のボーカルが会場を盛り立てる。「鎌倉物語」の続編を描くように作られたという背景を持つ本楽曲。鎌倉の地で、同じライブにて披露されたことで、2つの曲が紡いだそれぞれの“物語”が、38年の時を超えて1つになった感慨深い一幕だった。続けて「ハートせつなく」、サイケデリックなミュージックビデオも話題を博した「スローハンドに抱かれて (Oh Love!)」、「じんじん」のアップテンポな3曲が立て続けに披露されると、観客は総立ち!特効でキャノンから銀テープが噴射され宙を舞うなど、大興奮の中、本編の幕が閉じた。
アンコールでは、原が大きな歓声に迎えられ再登場!学生時代の想い出を歌った人気曲「いちょう並木のセレナーデ」を披露。その後、「43年前に私が初めてリードボーカルをとった曲を聴いてください」というMCから始まり、会場が沸いたのはサザンオールスターズの名曲「私はピアノ」。当時から微塵も変わらない歌声は、原 由子のボーカリストとしての抜きん出たオリジナリティを実感させる。
最新アルバムのラストナンバーとして収録された「初恋のメロディ」で会場を感動に包むと、そこからさらなるサプライズが!ライブ最後の曲として披露したのは、2002年にリリースされた原 由子によるカバーアルバム『東京タムレ』に収録されている橋幸夫と吉永小百合のデュエット曲「いつでも夢を」。原が唄い出すと、楽曲の途中からなんと、公私ともに長きに渡る“戦友”である桑田佳祐が登場!ハンドマイクで歌いながら現れた桑田が、ライブを無事に成功させた原に労いとお祝いの花を手渡し、2人揃って歌唱。今日一番の歓声と拍手が会場に巻き起こりライブは終演を迎えた。
44年を超える音楽キャリアにして、今が最盛期であることを確信させる、ソロミュージシャンとしての原 由子の等身大の魅力が詰まったライブとなった! 写真: 西槇太一