ピンク・フロイド(Pink Floyd)のアルバム『狂気』の発売50周年を記念して、4月19日(金)に発売される日本独自企画『
狂気ー50周年記念SACDマルチ・ハイブリッド・エディション』(7インチ紙ジャケット仕様)。ここに同梱される、72年に行なわれた2度目の来日公演にまつわるアイテムの復刻版などの「15大付録」のうち、72年の来日公演会場で配布された歌詞リーフレット「月の裏側−もろもろの狂人達の為への作品−」の絵柄が公開されました。
ピンク・フロイドは72年の来日公演で、73年に発売される『狂気』の収録曲を全曲披露しました。当時未発表だったアルバムをパフォーマンスするにあたり、公演会場では歌詞の対訳を掲載したこのリーフレットが、ピンク・フロイド側の強い希望で配布されることに。この時点では『狂気』という邦題が付けられておらず、リーフレットには『The Dark Side of the Moon』というアルバムのオリジナル・タイトルの直訳を含む「月の裏側−もろもろの狂人達の為への作品−」と記されています。
当時を振り返って、評論家の
立川直樹は「東京都体育館のコンサートで“月の裏側”と題された組曲の訳詞が印刷されたカードが観客全員に配られた。これはピンク・フロイド側が“まだ発売前のアルバムの曲を演奏するので、英語がわかならい人たちのために配布したい”と言って石坂(敬一 / 当時レコード会社でピンク・フロイドを担当していた)さんに英語詞を渡し、それを海外渉外課のスタッフが意訳したものを石坂さんの命を受けて僅か数時間で歌詞らしく整理したものだが、(アルバム発売前に)こんなことをしたグループは、ピンク・フロイド以外にはいない。“月の裏側”という直訳は『原子心母』や『おせっかい』『狂気』といった名邦題を生み出した石坂さんも、突然のことでそこまで頭が回らなかったのだろう」と語っています。
また、リーフレットには「この詩は今秋11月にイギリスで発売されるピンク・フロイドのニューアルバムに含まれている〈月の裏側〉という新曲です。今夜、この曲はピンク・フロイドによって演奏されますが、彼らの強い希望により日本語訳を作成しました」とあり、1972年11月に『狂気』は発表される予定で、その新作に含まれている“1曲”として捉えられているのが興味深い(この時点では「原子心母」や「エコーズ」などの長い組曲のような1曲と考えられていたのかもしれない)。このリーフレット自体、現存枚数が少なく、そういった意味でも歴史的にも貴重な資料的価値のあるものといえそうです。