back number初の5大ドーム・ツアー〈in your humor tour 2023〉が4月23日(日)福岡PayPayドームで最終日を迎えました。ツアーは3月18日の大阪京セラドームからスタート、5ヵ所9公演すべて即日完売で38万人以上を動員しました。
back numberは2018年に東名阪のドーム・ツアー〈back number dome tour 2018 “stay with you”〉を開催(全箇所完売・22万人動員)していますが、札幌・福岡を加えた5大ドーム・ツアーは初の開催。完売が難しいと言われている札幌ドームでも購入できなかった人が続出し、全ての公演で即日完売となりました。
今ツアーは1月にリリースしたback number7枚目のオリジナル・アルバム『
ユーモア』を携え行われているツアー。先日最終回を迎えたNHK朝ドラ『
舞いあがれ!』主題歌で紅白歌合戦でも披露、センバツ甲子園の行進曲にも起用された「アイラブユー」、MV再生数あわせて7億再生を突破した「水平線」、日本テレビ系水曜ドラマ『
恋はDeepに』主題歌「怪盗」、映画『
アキラとあきら』主題歌「ベルベットの詩」などを収録した大ヒット・アルバムです。
また、終演と同時に今ツアーのセットリストのプレイリストをApple Music、Spotify、LINE MUSICで公開しています。
[ライヴ・レポート] back numberの五大ドームツアー“in your humor tour 2023”が2023年4月23日、福岡PayPayドーム公演をもってツアーファイナルを迎えた。
東名阪ドーム会場を舞台に行われた「back number dome tour 2018 “stay with you”」以来約4年半ぶりのドームツアーであり、back number史上初の五大ドームツアーとなる今回の“in your humor tour 2023”。最新アルバム『ユーモア』を携え、3月18日から大阪/名古屋/札幌/東京/福岡の5都市にて開催された9公演はすべて即日完売、計38万人を動員する巨大ツアーとなった。
《お洒落ではないけど 唯一のダサさで/君が笑えたらいい》――ライブの冒頭、清水依与吏(Vocal & Guitar)がテレキャスターの弾き語りで歌い始めたのは「アイラブユー」の一節だった。NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の主題歌として日本全国で親しまれた名曲が、満場の期待感を真っ向から抱き止めるように強く優しく響いた。
そこから一転、小島和也(Bass & Chorus)・栗原寿(Drums)のパワフルなビートから「大不正解」へ流れ込んでいく。サポートメンバーも一丸となったアグレッシブな熱演が、ドーム一面のクラップの渦を巻き起こしたところで、続く「SISTER」の爽快な歌とサウンドが場内の多幸感をさらに煽っていく。ライブ序盤にして、すでにクライマックス級の熱気が客席に広がっている。
「早いような、長かったような……」とツアーを振り返りつつ、「いろいろ感極まることもあるんだけど、全部曲に込めて放てるように……今日があなたにとっての特別なものにできるように、最後まで俺たち一生懸命頑張るんで。よろしくお願いします!」と意欲を語る清水。高らかな拍手が湧き起こる。
「秘密のキス」「エメラルド」をはじめ、アルバム『ユーモア』の楽曲をセットリストの主軸に据えつつ、「クリスマスソング」「ハッピーエンド」「青い春」など人気の高い既発曲群と織り重ねることで、今のback numberのスケール感をよりいっそう鮮明に描き出したこの日のライブ。長いコロナ禍の期間を経て、ようやくライブでの声出しがOKになったこともあり、熱演の合間には歓声やメンバーの名前を呼ぶ声も聞かれ、広大なドームの空間は刻一刻と高揚感を増していく。
『ユーモア』の中でもひときわカラフルなポップナンバー「ヒーロースーツ」では、清水がハンドマイクスタイルで歌う一幕も。ステージ狭しと歩き回りながら、ドーム丸ごと歓喜の頂へと導く清水の姿は、back numberのライブに新たな輝きを与えるものだった。
「みんなが手上げてくれたり、声出してくれたり……こういうのはスタジオではないし。みんながいてくれて、今日が成り立ってます」と改めて感謝を伝える小島。「今日、すごく近いよね? 物理的な距離は遠いんだけど、心の距離がすごく近く感じる。演奏してて、すごく嬉しい!」と観客の熱量を讃える栗原が続けて、「だから、物理的な距離も、縮めたいと思うんだけど……」と、アリーナ後方のサブステージの存在を告げると、会場は驚きと感激の声に包まれる。
広いアリーナの通路を歩いて移動した後、サブステージではお互い向き合うように座った3人。「back numberって、きっとこういうバンドなんじゃないかなって。曲を作り始めた時から、誰かに向かって歌っているようでいて、実は曲の主人公のことばっかり考えてるような気がして……最初からあなたに向けて歌っていたかはわからないけど、あなたの人生とクロスした。本当に光栄に思います」。そんな清水の言葉とともに、アコースティックスタイルで「ヒロイン」「手紙」を披露する3人の姿が、ドームを確かな一体感で包んでいく。
「Silent Journey in Tokyo」のクールかつソウルフルなグルーヴから、「ゴールデンアワー」のスクエアな躍動感……といった具合に、ライブ後半はさらに深く『ユーモア』の世界に入り込んでいく。
ライブ定番曲「高嶺の花子さん」に沸き起こった圧巻のクラップとジャンプを「ありがとう! 200万点です!」と清水も絶賛。「赤い花火」から「黄色」、さらにYouTube総再生数1.9億回以上の名バラード「水平線」、と曲を重ねるごとに、その歌と演奏は濃密な訴求力をもって胸に迫ってくる。
「一番自分のことを信じてないのって自分だと思う。いまだに人前で歌うのも怖いし。でもさ……今ここで、全然完璧じゃないのにこうやって歌えて、演奏できるのは、そういうカッコ悪いやつだからなんじゃないかなって思う」――ライブ終盤、清水が切実な表情でオーディエンスに語りかける。
「あなたの人生を絶対に他人事だなんて思わないから。これからも、あなたに関係ある曲しかやりたくないから。それはイコール、俺たちに関係あるってことだから。生きていくのは簡単じゃないよ。バカにするやつもいるし。だけど、突っ張って、強がって、《人生は素晴らしい》って歌うんで。わかるところがあったら、一緒に歌ってください」
そんな清水のメッセージとともに披露された「ベルベットの詩」が、客席一面のコーラス合唱とハンドウェーブを巻き起こしていく。本編ラストの「スーパースターになったら」では銀テープのキャノン砲が客席に舞い、熱烈なクラップ&シンガロングの輪が広がる。「愛してるぞー!」の清水の万感の絶叫が、最高のライブの祝祭感を何より明快に物語っていた。
「俺たちじゃなくて、歌が優秀なだけです。なぜか俺たちのところに来てくれて、それを共有できて、本当に嬉しい。もっともっといい曲が書けるように、いいバンドになれるように努力して、また会いにくるんで」……「添い寝チャンスは突然に」でアンコールをスタートさせた後、清水はそんな言葉とともに新たな決意を語っていた。「花束」に続けて、ツアーのフィナーレを飾ったのは「怪盗」。《君が想像した事ないくらい/眩しい世界を見せてあげる》というフレーズが、バンドのさらなる前進への意志そのもののように響いていた。
文: 高橋智樹
Photo by 佐藤祐介・半田安政