PJハーヴェイ(PJ Harvey)が、グラミー賞にノミネートされた2016年の『
ザ・ホープ・シックス・デモリッション・プロジェクト』以来、7年ぶり通算10枚目のアルバム『アイ・インサイド・ジ・オールド・イヤー・ダイイング』を7月7日(金)に発表します。プロデューサーはフラッドと
ジョン・パリッシュ。アルバムからの1stシングル「A Child's Question, August」がミュージック・ビデオとあわせて公開中です。
新作の物語は6年前に遡り、2017年の前作のツアーの終了と、その直後のPJハーヴェイの心境に至ります。彼女が痛感したのは、アルバムとツアーの終わりなきサイクルのどこかで、音楽そのものとのつながりを失っていたことであり、その実感は言葉にならないほど悩ましいものでした。しかし、2つのことが、彼女を新しい歌や音楽、サウンドの方向性へと向かわせるようになりました。ひとつは、『ザ・ホープ・シックス・デモリッション・プロジェクト』期のシカゴで、『
それでも夜は明ける』でオスカーを獲得した映画監督の
スティーブ・マックイーンに会ったときの記憶。彼からのアドバイスは、「言葉、イメージ、音楽について自分が好きなものを思い出し、“アルバム”を書くという概念を捨て、この3つの情熱に集中し、プレイしなさい」というもの。もうひとつは、シンプルに「演奏する」という行為。ギターを手にしたり、ピアノの前に座って
ニーナ・シモンや
ボブ・ディランといったアーティストのお気に入りの曲をプレイすることで、音楽という芸術に対する情熱を再確認することができました。
ハーヴェイは新曲を書き始めたとき、アルバム、ツアー、アルバム、ツアーのサイクルに戻る最初のステップというよりも、音楽自身のために音楽を作るという解放感を覚えました。過去にサウンドトラックや劇場での音楽活動で感じた創造的な自由の感覚が戻り、それと同時に、彼女の視点は『レット・イングランド・シェイク』や『ザ・ホープ・シックス・デモリッション・プロジェクト』の大きなテーマ(戦争、政治、世界を見つめる)から、より親密で人間的なものへと変化していました。「(新曲は)3週間くらいで私の中から出てきた。スタジオはライヴ演奏用に設置され、私たちはそれしかしなかった」とPJハーヴェイは語ります。
『アイ・インサイド・ジ・オールド・イヤー・ダイイング』が非常に手触りの良い、人間的なレコードであるとすれば、それは収録されているほぼすべてがインプロヴィゼーションに根ざしているためでもあります。この作品には、何か深い高揚感と救いが存在します。「アルバムは、探し求めること、つまり初恋の激しさ、そして意味を求めることをテーマにしていると思う。でも、このアルバムから感じられるのは、愛だ。それが、この作品をとても歓迎すべきもの、つまりオープンなものにしていると思う」と彼女は語っています。