落合モトキ×
あのダブル主演、『
ドライブ・マイ・カー』『ガン二バル』の脚本を手掛ける
大江崇允監督最新作『鯨の骨』(くじらのほね)が、2023年秋より東京・渋谷シネクイント他にて劇場公開されることが決定。また、本年度第27回富川(プチョン)国際ファンタスティック映画祭のコンペティション部門に正式出品されることが決定しました。あわせて、場面写真2点(落合モトキ、あの)を公開しています。
濱口竜介監督と共同執筆した『ドライブ・マイ・カー』が米アカデミー賞脚色賞にノミネートされ、話題沸騰の配信ドラマ『ガンニバル』の脚本も手がけた大江崇允。いま世界が注目する映画作家が、リアルとバーチャルが混濁する現代の寄る辺なさを、ミステリアスな迷宮ファンタジーに昇華させた最新監督作『鯨の骨』。
結婚間近だった恋人と破局した不眠症の間宮は、マッチングアプリで唯一返信をくれた女子高生と会いますが、女子高生は間宮のアパートで自殺してしまいます。うろたえて山中に埋めようとするも、気がつけば死体は消えていました。間宮はARアプリ「王様の耳はロバの耳(通称ミミ)」(※注釈)の中で、死んだ女子高生と瓜二つの少女“明日香”を発見します。“明日香”は「ミミ」を通じて再生できる動画を街中で投稿し、動画目当てのファンたちが街を徘徊するカリスマ的存在でした。“明日香”の痕跡を追いかけるうちに、現実と幻想の境界が曖昧になっていく間宮。いったい“明日香”とは何者なのか?彼女は死んだ少女と同一人物なのか?そして本当に存在するのでしょうか?
海の底には、“鯨の骨”の栄養を求めて群がる魚たちがいるといいます。“明日香”をさがす人々も、半バーチャル世界の底に潜り込み、ほのかな光を求めて集まってきます。果たして彼女は救いをもたらしてくれる希望か、それとも現実から目をそらし続けるための底なし沼か。誰もが確実な何かを欲しながら、見つけられずにいる時代の不安定さを反映しながら、ときに切実に、ときにユーモラスに展開する“少女探し”。気がつけば、遠い他人ごとに思えていた“間宮”や“明日香”と自分とのリンクが見えてきます。今を生きるすべての人を巻き込む、大江崇允のシュールで挑戦的な仕掛けに翻弄されることでしょう。
まったくの未知だった拡張現実アプリにはまり込んでいくサラリーマン、間宮を演じたのは『
桐島、部活やめるってよ』『
素敵なダイナマイトスキャンダル』の落合モトキ。子役からの長いキャリアを持つ実力派が、無気力とナイーブの狭間を漂う主人公を好演。そして間宮のみならず、孤独なひとびとを引き寄せる“明日香”には、強烈な個性で注目を集めるミュージシャン、あのを起用。“あの”という存在が象徴している今の時代の空気が見事に役に生かされており、とらえどころのないカリスマ性で唯一無二の魅力を放っています。また、明日香に憧れ、「ミミ」内で新たなカリスマを目指す女性、凛役に
横田真悠、間宮の恋人、由香理役に
大西礼芳、明日香の熱狂的な信者、しんさん役に
宇野祥平が扮し、脇を固めています。
また、本作が、第27回富川(プチョン)国際ファンタスティック映画祭コンペティション部門(プチョンチョイス長編部門)に正式出品が決定。富川国際ファンタスティック映画祭は、韓国北西部の都市・富川市で開催される、韓国では釜山国際映画祭に次いで2番目の歴史を誇る国際映画祭。首都ソウルと韓国第三の都市・仁川の間に位置する衛星都市である人口約90万人の富川市では、「文化特別市富川」をテーマに掲げ、漫画や映画、音楽など様々な文化芸術イベントが開催されています。富川国際ファンタスティック映画祭は、1997年から始まり、上映作品を「ラブ、ファンタジー、アドベンチャー」をテーマに特化した“アジア最大のジャンル映画祭”として発展しています。今年は6月29日(木)から7月9日(日)にかけて開催されます。
※ARとは?
ARとは「Augmented Reality」の略称で、日本語では「拡張現実」を意味します。現実世界での体験にデジタル情報を重ね合わせ、新たな価値を生み出す「XR(Cross Reality)」と呼ばれる先端技術のひとつ。ARアプリの主な例として『セカイカメラ』『ポケモンGO』などがあります。
※アプリ「ミミ」とは?
劇中に登場する、位置情報を元としてスマホカメラ画面で撮影した自分の動画を撮影場所に残せるサービス。また、ミミを起動することで、その場所に残された動画を再生することができる。名前の由来となったあのお伽話のように、秘密や愚痴を垂れ流し、それで街を埋め尽くそうという悪意のコンセプトで作られたジャンクアプリ。[コメント]「都会の夜は深海に似ている」
このフレーズが映画の発端であり、またその全てです。
深海では、海底に落下した鯨の骨に群がり、その栄養を吸って生きる小さな生物群集が存在しています。それらは鯨の骨の栄養を吸い尽くすと、やがて骨と一緒に消えてしまう儚い生物です。
そんな生物たちですが、どうやら薄っすらと発光しているそうなのです。
僕には深海の点在する光が、まるで空から見た都会の夜の灯りと重なりました。
僕が四角い水中眼鏡をかけて見ている世界、それがこの映画です。
一人でも多くの人にこの眼鏡を楽しんで頂けたら嬉しいです。――大江崇允監督大江監督とイメージを合わせながら撮影していましたが、完成した作品を観た時自分の中には存在しないジャンルの映画でした。なので皆さんに観て頂いた後の感想が非常に楽しみな作品です。撮影中、印象に残ってるのはあのちゃんを追いかけるシーン。あのちゃんは信じられないくらい足が速くて久々に本気で走りました。でもそれが可愛らしく見えたり。是非劇場にお越し頂けると嬉しいです。宜しくお願いします!――落合モトキただ無性に冷たくて息もうまく吸えないそんな時期に撮影し、撮影しながらまるで深海にいるような、何度も明日香が自分と重なっては濁って消えていく、そんな体験をしました。鯨の骨でしか味わえない何とも奇妙な浮遊感を皆様にも楽しんで頂きたいです。――あの©2023『鯨の骨』製作委員会