2010年にサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」とピアノ協奏曲第4番を録音して話題を呼んだ
フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮
レ・シエクルが、ピリオド楽器で録音したCD2枚組の『サン=サーンス:交響詩と動物の謝肉祭』を11月上旬に発表します。
収録曲は、交響詩「ファエトン」、交響詩「ヘラクレスの青年時代」、交響詩「オンファールの糸車」、交響詩「死の舞踏」、歌劇『サムソンとデリラ』〜バッカナール、動物の謝肉祭(全曲)、映画音楽「ギーズ公暗殺」。2021年4月に仏中北部のブローニュ=ビヤンクールにあるラ・セーヌ・ミュージカルで、動物の謝肉祭(全曲)と映画音楽「ギーズ公暗殺」は2021年11月に
パリ管弦楽団の本拠地でもある仏パリのフィラルモニ・ド・パリで録音されました。
ディスク1には4篇の交響詩を収録。名作「死の舞踏」の独奏ヴァイオリンもノン・ヴィブラートで、オーケストラの音色ともに、この曲がじつはおどろおどろしくないことを示してくれます。もともと
サン=サーンスは古楽と古楽器復興に注力した人物でもあり、ロト自身「レ・シエクルの創設者のひとりといえる」と述べています。歌劇『サムソンとデリラ』のバッカナールも異国的でものものしいイメージが払拭され、パステル画のような色彩となり、これぞサン=サーンスのイメージしていたものと納得させられます。
なにより興味深いのが2枚目の「動物の謝肉祭」。これまで聴いたこともない響きに驚かされます。作品には2台のピアノが用いられますが、ここでは1928年プレイエル製のダブル・ピアノが用いられているのも注目。1台のピアノの両端に鍵盤のついた対面型楽器で、シテ・ド・ラ・ミュジーク音楽博物館が1983年にプレイエル本社展示品を購入し、演奏可能な状態にしていました。1台の楽器ゆえ響きは美しく均一で、個別の楽器では出せない世界を作り上げています。ジャン・スギタニとミヒャエル・エルツシャイドによりますが、技巧的な「ロバ」を颯爽と弾くかと思えば、「ピアニスト」ではド下手にわざと間違えるなど爆笑の演奏を繰り広げています。
ノン・ヴィブラート奏法ゆえ「雄鶏と雌鶏」や「耳の長い登場人物」はまさに動物の鳴き声に聴こえます。また「象」のコントラバスの重くない洒落気、「水族館」の木製ハーモニカ、「化石」のシロフォンなど古い楽器なのに非常に新しい音色として響きます。