ジョン・レノンが残した音源を基に、
ポール・マッカートニーと
ジャイルズ・マーティンのプロデュースで制作された
ビートルズ(THE BEATLES)の最後の新曲「ナウ・アンド・ゼン」が、日本時間11月2日(木)23時に発表されます。また、日本時間11月2日(木)午前4時30分には、オリヴァー・マレーが脚本と監督を手がけた12分間のドキュメンタリー映画『ナウ・アンド・ゼン ― ザ・ラスト・ビートルズ・ソング』がビートルズのYouTubeチャンネルで公開。すでに予告編が公開されています。
「ナウ・アンド・ゼン」は両A面シングルとして配信と7インチ / 10インチ / 12インチのアナログ盤、カセットテープでリリースされ、カップリングはデビュー曲の「ラヴ・ミー・ドゥ」。ビートルズの最後の楽曲と最初の楽曲の組み合わせとなっています。どちらの楽曲もステレオとドルビーアトモスでミックスされ、ジャケットのアート・ワークはアメリカの現代美術家エド・ルシェが手がけました。ミュージック・ビデオは11月3日(金・祝)に公開されます。
「ナウ・アンド・ゼン」の物語は1970年代後半、ジョンがニューヨークのダコタ・ビルにある自宅でヴォーカルとピアノによるデモを録音したことから始まります。1994年、妻の
ヨーコ・オノ・レノンは、ジョンの「フリー・アズ・ア・バード」と「リアル・ラヴ」のデモとともにこの音源をポール、
ジョージ・ハリスン、
リンゴ・スターに渡しました。2曲はビートルズの新曲として完成し、『ザ・ビートルズ・アンソロジー』のプロジェクトの一環として、1995年と1996年にそれぞれシングルとしてリリースされました。このとき同時にポール、ジョージ、リンゴは「ナウ・アンド・ゼン」の新しいパートをレコーディングし、プロデューサーの
ジェフ・リンとともにラフ・ミックスを完成させていましたが、その時点ではジョンのヴォーカルとピアノを分離して、クリアで曇りのないミックスを実現し、曲を仕上げることは技術的に不可能でした。
2021年に
ピーター・ジャクソンが監督を務めたドキュメンタリー『
ザ・ビートルズ:Get Back』が公開されました。この作品は、数々の賞を受賞したフィルムとオーディオの修復技術で視聴者を驚かせました。ウィングナット・フィルムズのMALオーディオ・テクノロジーを使って、ジャクソン監督のチームは映画のモノラル・サウンドトラックをデミックスし、楽器とヴォーカル、そしてビートルズの会話の中の個々の声を分離することに成功したのです。この成果は、4トラックのマスター・テープを音源として使用した2022年の『
リボルバー』の新たなミックスへの道を開きました。そして、ピーター・ジャクソンとエミール・ド・ラ・レイ率いる彼のサウンド・チームは、ジョンのオリジナル・ホーム・レコーディングに同じ技術を適用し、「ナウ・アンド・ゼン」のヴォーカルとピアノの音を完全に分離させたのです。
2022年、ポールとリンゴはこの曲を完成させるべく作業を開始しました。ジョンのヴォーカルに加え、「ナウ・アンド・ゼン」にはジョージが1995年に録音したエレクトリック・ギターとアコースティック・ギター、リンゴの新しいドラム・パート、ポールのベース、ギター、ピアノが含まれており、さらにポールはジョージにインスパイアされたスライド・ギター・ソロを加えました。ポールとリンゴはサビでバッキング・ヴォーカルも担当しています。
ロサンゼルスでは、ジャイルズ・マーティン、ポール、ベン・フォスターによって書かれたストリングス・アレンジのキャピトル・スタジオでのレコーディング・セッションを、ポールが監修しました。さらにポールとジャイルズは「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」「エレナ・リグビー」「ビコーズ」のオリジナル・レコーディングのバッキング・ヴォーカルを、『LOVE』のショウとアルバムの制作中に完成したテクニックを使って新曲に織り込んでいます。
[コメント]ジョンの声が、とてもクリアに聞こえる。かなり感動した。僕たち全員が参加した本物のビートルズのレコーディングだと言える。2023年にまだビートルズの音楽に取り組んでいて、一般の人々がまだ聴いたことのない新曲をリリースしようとしているなんて、本当にエキサイティングなことさ。――ポール・マッカートニー彼が部屋に戻ってくることの次に彼に一番近づいた瞬間だったから、僕たち全員にとって、とても感慨深いことだった。まるでジョンがそこにいるようだった。斬新だった。――リンゴ・スター1995年当時、スタジオで数日間この曲に取り組んだ後、ジョージはデモの技術的な問題を克服できないと感じ、この曲を十分に高い水準で仕上げることは不可能だと結論づけたんです。ダニーと私は、もし彼が今日ここにいたら、彼がポールとリンゴとともに心を込めて「ナウ・アンド・ゼン」のレコーディングを完成させたに違いないと確信しています。――オリヴィア・ハリスン父がいなくなって何年も経ってから、彼らが一緒に仕事をしていると聞いて、ものすごく感動しました。この曲は父とポール、ジョージ、リンゴが一緒に作った最後の曲です。この曲はタイム・カプセルのようなもので、運命的なものだと感じています。――ショーン・オノ・レノン