12月15日(金)よりユーロスペースほか全国公開される、
アキ・カウリスマキ監督(『
ル・アーヴルの靴みがき』『
希望のかなた』)の最新作『枯れ葉』の公開を記念し、現在渋谷・ユーロスペースにて開催中のフィンランド映画祭2023にて、11月12日(日)に本作が先行上映が実施され、男性主人公・ホラッパを演じた
ユッシ・ヴァタネンのオンライン舞台挨拶が行なわれました。
アキ・カウリスマキ史上最高のラヴ・ストーリー『枯れ葉』は、ヒロインの圧倒的な存在感など随所に新しさを感じさせながら、お馴染みのとぼけたユーモアや抜群の音楽センスにもさらに磨きのかかった、いわばカウリスマキの集大成ともいえる作品。監督自ら、労働者3部作(『
パラダイスの夕暮れ』『
真夜中の虹』『
マッチ工場の少女』)に連なる“第4作目”」と位置付ける本作には、『
街のあかり』の
ヤンネ・フーティアイネンや『希望のかなた』のヌップ・コイヴ、
そしてカウリスマキの愛犬が登場するなど、過去のカウリスマキ作品とのつながりも見られます。
オンラインで、初めての日本人観客との交流に終始笑顔で答えてくれたユッシ・ヴァタネンは、カウリスマキ監督作品初出演。この度、第36回ヨーロッパ映画賞にて、作品賞、監督賞、脚本賞、女優賞、男優賞と5部門にノミネートされ、自身のノミネートについて尋ねられたユッシは、「非常に嬉しいです。『枯れ葉』は、様々な国の人々の心に触れるものがあったんだと思います」と喜びを滲ませました。カウリスマキ監督との思い出として挙げたのは、「監督の映画の知識はとんでもないレベルです!常に映画の薀蓄やトリビアなどのクイズを出されている感じで、自分の映画の知識を試されているような現場でした」と撮影現場での様子を振りかえっています。
[ユッシ・ヴァタネンのオンライン舞台挨拶レポート] オンラインでスクリーンに登場したユッシ・ヴァタネンは、「ヘルシンキからこんにちは!」と笑顔を見せ、「本日はお集りいただき、ありがとうございます。今朝は庭に出て『枯れ葉』ならぬ、落ち葉を掃いて集めていました」と挨拶し、チャーミングな一面を覗かせました。また、第36回ヨーロッパ映画賞にて、作品賞、監督賞、脚本賞、女優賞、男優賞と5部門にノミネートされたことを祝われると、「非常に嬉しいです。『枯れ葉』は、様々な国の人々の心に触れるものがあったんだと思います」と喜びを滲ませる様子も。
幸運にも先行上映でいち早く『枯れ葉』を観た日本の観客との質疑応答が行われ、アキ・カウリスマキ監督との思い出を尋ねられたユッシは、「アキ・カウリスマキ監督が会いたいと言ってると電話が一本掛かってきた時は、いたずら電話かと思ったんです。でも、実際にお会いすることになり、本作に出演することになりました。お会いした当初は脚本も何もない状態でした」と初めての出逢いを振り返り、「出来上がった脚本を読んでみると、アンサがホラッパに、フィンランドがサッカーのワールドカップで優勝したと話すセリフがありました。カウリスマキ監督自身はあまりサッカーに興味はないと思うのですが、私はサッカーが大好きなので、これは監督が自分の為に書いてくれたんだと思い、嬉しかったです」と打ち明けてくれました。
劇中に登場する犬の名前やゾンビ映画、エンドロールにジム・ジャームッシュの名前がクレジットされているなど、様々な映画に対してのオマージュが見受けられる本作。ユッシは、「これは監督自身が答えてくれる方がいいと思うけど…」と前置きしながらも、「カウリスマキ監督は、他のいろいろな映画に対して、なんとも言えない尊敬というか畏怖の念というか…それをとても大切に思っています。カウリスマキ監督の描く世界は、おとぎ話のような部分もあります。その中には、沢山の(映画からの)引用やネタが盛り込まれています。とにかく、カウリスマキ監督の映画の知識はとんでもないレベルです!常に映画の薀蓄やトリビアなどのクイズを出されている感じで、自分の映画の知識を試されているような現場でした」と撮影現場での様子を教えてくれました。
また、劇中で日本語の楽曲が使用されていることについて問われると、「私自身はなぜ日本の歌が出てきたのか、理由は知らないんです。でも、カウリスマキ監督はすべてに理由を持っている方なので、何かしらの理由があるんだと思います」と話してくれました。そして、日本の映画で好きな作品はありますか?との質問には「なかなか多くの日本映画を観る機会がないのですが、一番のお気に入りは『七人の侍』です!」と答えた。
また、フィンランドの映画業界の現状を知りたいという質問には、「フィンランドもここ数年、コロナなどの影響で映画館が閉まったり、映画のイベントが行えませんでしたが、ここ1年半ぐらいの間で元に戻ってきたと思います。『枯れ葉』は、アキ・カウリスマキ監督の最大観客動員数を獲得しているんですよ!」と誇らしげに答えてくれました。そして、「ここ数年、フィンランド映画は国際化しています。ストリーミングの影響を受け、テレビシリーズの製作が国際プロジェクトになり、より多くの方々に観てもらえるになりました」と話し、「今回のフィンランド映画祭では、まだ、私自身も観れていない『ライト・ライト・ライト』(23/イエリ・ニエミ監督)や『ファミリー・タイム』(23/ティア・コウヴォ監督)が上映されています。今のフィンランド映画を観てもらえる良い機会が増えていることはとても嬉しいですし、皆さんにとっても良い機会ですね」と微笑みました。
最後に日本の観客に向けて、「この映画に関わることで一番で感動したのは、世界というのは難しいことでいっぱいですが、映画を観ることで少しの間、より良い幸せやもう少し心配のない世界を得られるということです。主人公のアンサとホラッパにとって、これは最初の愛であって、多分、人生最後の愛になるんじゃないかなと思います。是非、劇場で多くの方にご覧いただけると嬉しいです」と挨拶をし、舞台挨拶は幕を閉じました。 Photo: Malla Hukkanen
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