真夜中過ぎのBonoboの登場の前にO-EASTのブースに登場したSofia Kourtesisは、トレードマークのドリーミーなテクスチャーを主体に、Stardust「Music Sounds Better With You」までを交えながら、髪を振り乱し踊り、ときにマイクで歌いクラウドにシンガロングを促しながら、多様なグルーヴを操る。そんな彼女に拍手を送り、Bonoboことサイモン・グリーンにブースにつくと、「Polyghost」のハープの甘美な響きが響き渡る。序盤はMaz & VXSION「Amana」からカリンバのイントロが誘惑する「Cirrus」の流れに代表される、ゆったりと多幸感があふれるミックスに、ダンスフロアとなったステージ上に至るまでオーディエンスが皆心地よさに身を委ねている。
中盤からは、O'FlynnがリビアのAhmed Fakrounをサンプリングしたナンバー「Soleil」をきっかけに、この日の裏テーマはファンクではないかと思えるほど、生音あるいは生音のサンプリングがほどこされたファンキーなダンストラックがフロアを彩っていく。再びO'Flynnのバンガー「Swiss Sensation」でフロアが大爆発すると、さらにラテン、アフロのフレイヴァーのトラックにSalif Keitaをミックスさせ、パーカッシブな展開をさらに加速させる。「ATK」「Age of Phase」「Fold」といった自身のダンサブルなトラックを随所に配置しながら、O'Flynnをフィーチャーした壮大な「Otomo」に辿り着くその手さばきは、Bonoboの楽曲の底辺にはダンスフロアがあることを再確認させるもので、アルバムとはまた異なる物語が描かれていた。
メランコリックな「Kerela」がプレイされた後、後半はFabricのコンピレーションで起用したBENYAYERの「WUH」をはじめ、Logic1000「Rush」など次第にディープハウス、UKガラージ、テクノ感が増していき、フロアがさらに湧き立つ。シンセの壮大な響きが耳に残るBarker「Look How Hard I've Tried」、さらにはこの夜のミックスの基調のごとくそのヴォイス・サンプルが差し込まれていた「Rosewood」で熱気は頂点を迎えた。グリーンはマイクを取り満場の拍手に応え「ありがとうございます、Thank You So Much!」と、この夜のストーリーを一緒に作り上げていったオーディエンスに感謝を伝える。「もう1曲」とプレイするのは、Totally Enormous Extinct Dinosaursとのコラボ曲「Heartbreak」。Bonoboが設立した〈OUTLIER〉レーベルの初リリース曲であるというだけでなく、80年代から現在までのクラブカルチャーに敬意を表したこの曲から、90年代UKガラージ代表曲Double 99「RIP Groove」を繋げる3時間に及ぶロングセットを締めくくるところに、ダンスフロアの歴史を俯瞰したうえで、新しいこと、規格外(OUTLIER)の表現を生み出す場を作り出そうとするBonoboのスピリットを感じずにはいられなかった。
Bonoboのアクト終了後も、1FのDUOではKelly Lee Owensがバキバキにインダストリアルなプレイを披露していて、ここに挙げられなかったアクトも含めて、フロアを行き来しながら音を浴びる気持ちよさを堪能できるイベントだった。当初は2020年4月に開催が予定されていたものの、コロナ禍による中止を乗り越えて日本での初開催となった〈OUTLIER〉。本気で遊ぼう、楽しもうというアーティスト、オーディエンス、スタッフの情熱が実現させた、東京のナイトクラビングの活気が戻ってきたことを象徴する、最高のヴァイブに満ちていた。
Text by 駒井憲嗣 Photo Credits Kazma Kobayashi: Bonobo, Kelly Lee Owens, Sofia Kourtesis, Daito Manabe, Katimi Ai, Seiho, Traks Boys, YOSHIROTTEN Kaoru Goto: 食品まつり a.k.a foodman, Frankie $