2005年、第133回直木賞を受賞した短編集『花まんま』(文春文庫)。ある兄妹の不思議な体験を描いた物語で、表題の「花まんま」とは、子どものままごと遊びで作った“花のお弁当”を意味し、大切なひとへ贈り届けるキーアイテムとなります。記憶の濃淡を丁寧に語り分けながら、人間の哀しさや温かさを繊細に織り込む巧みな筆致で評価されている作家・
朱川湊人の代表作品であり、初版からおよそ20年の時を経て2025年春に東映配給の劇場映画として全国公開されることが決定しました。
両親を早くに亡くし、大阪の下町で暮らす2人きりの兄妹・俊樹とフミ子。妹の結婚が決まり、親代わりの兄としてはやっと肩の荷が下りるはずでしたが、妹には兄に話していない“秘密”がありました。
タイトルの『花まんま』に因み、8月7日の語呂合わせが「はな(8・7)」と読める“花の日”に解禁されたのは、本作の主人公となる大阪下町の兄妹を演じる2人のキャスト。TBS日曜劇場から映画化された『
劇場版 TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(2023)の45億円を超える大ヒットも記憶に新しく、国内外の数々の映画賞を受賞した『
エゴイスト』(2023)やNetflix映画として世界配信され大いに話題を呼んだ『シティーハンター』(2024)などで国際的にも評価される
鈴木亮平が、早くに亡くした両親との約束を守るため、たった一人の妹の親代わりとして大阪下町で生きる熱血漢の兄・加藤俊樹役で主演を務めます。そして、俊樹の妹で、間もなくの結婚を控えながら、ある“秘密”を抱えるフミ子役は、国民的とも評される俳優・
有村架純が演じます。『
ストロボ・エッジ』(2015)や『
映画 ビリギャル』(2015)といった主演作をはじめ、『
花束みたいな恋をした』(2021)や『
月の満ち欠け』(2022)など大ヒット作品への出演で常に話題の中心を担います。ともに関西出身ということもあり、舞台設定地域である関西圏の軽妙な台詞回しはもちろん、撮影現場でのちょっとした打合せや休憩時間においても自然体で会話する場面が多く見受けられ、日本を代表する二大キャストがどんな兄妹を演じているのか今から期待が高まります。
監督は、最新作『九十歳。何がめでたい』が現在大ヒット中でもあり、『
こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018)や『そして、バトンは渡された』(2021)など、人の心の揺れ動きに対する繊細かつ真摯な眼差しと豊かな表現力にも定評のある
前田哲。原作の映像化企画を長年出版社へ提案し続け、ラヴコールが実を結んだ形となります。
さらに公開されたのは、鈴木・有村が演じる兄妹それぞれの表情とともに、子どものままごとで作った“花のお弁当”を意味するタイトルアイテム「花まんま」を写し出したファースト・ヴィジュアル。兄・俊樹、妹・フミ子の朗らかな表情と、「花まんま」を包む小さな手がまるでプレゼントを渡しているかのような印象的なショットが切り取られ、春風のような温もりとともに、大切な人へ贈り届ける想いの交差を感じ取ることができます。
豪華キャスト・スタッフが贈る珠玉の感動作『花まんま』は2025年春全国公開。今後の続報にも是非ご期待ください。
[コメント]本作は、兄妹の絆はもとより、親と子、家族がそれぞれを強く思い合う姿を描いた胸に迫る作品です。
また、時代が変わっても僕たちが「結婚」というものに感じる不思議な感情の正体を、自分でも見つけてみたいと思って臨みました。
演じた俊樹はぶっきらぼうですが、誰よりも妹を愛する兄です。若くして両親を亡くしているので、大切な人に今日会えなくなるかもしれないということを誰よりも実感している人間です。
関西弁で演じるのは久しぶりでしたが、ネイティブの言葉で演じられることの喜びを改めて実感する、楽しい撮影期間でした。
同じ関西人である有村さんや前田監督ともたくさんコミュニケーションを取り合い、『花まんま』の世界を一緒に作り上げることができたと自負しています。――鈴木亮平/加藤俊樹 役ただ大切に思うそれぞれの心が可笑しくて温かくて。
兄やんとの日々はとても不思議でした。
生まれた時から一緒にいるような、本当なら無いはずの兄やんとの時間がそこにはありました。
花まんまが導く大きな家族の物語。皆さんに届くと良いなと思います。――有村架純/加藤フミ子 役小説『花まんま』に出会ってから15年余りの年月が経ちます。
ずっと心から離れない「大切な愛しい人を思い続ける」切なくも優しい物語を、
映画でも皆さまにお届けしたいと思い続けていました。
映画では小説にある小さな兄妹のその後も描いています。
初顔合わせの二人、鈴木亮平さんと有村架純さんが、
数十年も一緒に暮らしてきた本当の兄妹のように、
スクリーンの中で存在しています。
撮影は春に実際の舞台となる近畿圏で終えて、今は仕上げの真っ最中です。
しばし完成まで、楽しみにお待ちください。――前田哲/監督私が書いた『花まんま』は八十枚ほどの短編で、もともとは子供である俊樹とフミ子の物語でした。
今回の映画化の際には、原作をそのままに生かしつつストーリーを膨らませ、見事に世界を広げていただきました。
私の手が届かなかったところにまで気持ちが届いていて、原作者冥利に尽きるというものです。
さらに存在感のある出演者の方々には期待が高まるばかりで、まさに私一人では見ることができなかった『花まんま』です。――朱川湊人/原作©2025 映画「花まんま」製作委員会
朱川湊人『花まんま』(文春文庫)