英・グラスゴーのギター・ポップ・バンド、
ベル・アンド・セバスチャン(Belle and Sebastian)が、〈SUMMER SONIC 2024〉に出演。昨年最新アルバム『
Late Developers』をリリースし、四半世紀を超えてもなお世界中のネオアコ〜インディー・ファンを魅了し続けている彼らの初日8月17日東京SONIC STAGEでのレポートが到着しました。
また、会場で完売したベル・アンド・セバスチャンの限定Tシャツ(Tigermilk T-ShirtとTour T-Shirt)の受注販売が受付中です。オンライン受注予約受付は8月25日(日)まで。Summer Sonic 2024用に生産された限定グッズにつき、販売は今回限りで終了になるとのことです。
あわせて、ベル・アンド・セバスチャンも含めて、SONICMANIA /
SUMMER SONIC2024出演者の直筆サイン入りセットリストが抽選で当たるキャンペーンも発表されています。XのBEATINKアカウントをフォロー&投稿をリポストし、アンケートに解答することで応募が可能。詳細は、BEATINKのホームページ、Xをご確認ください。
[ライヴ・レポート] 初期の内省的なポップ職人のイメージから世界を駆け回るライヴ・バンドとして大きく変貌を遂げたベル・アンド・セバスチャン。2020年のライヴ・アルバム『What To Look For In Summer』を聴いて脳内であの祝祭感を膨らませていたリスナーも少なくないだろう。初日夕刻のSONIC STAGEにツアーのハイライトの映像が映されメンバーが登場する。「I'm a Cuckoo」のアップリフティングなイントロが響くと、たちまち温かなムードに包まれる。リリックに登場するシン・リジィさながらのツイン・ギターが、主人公の失恋と東京への思いを軽やかにサポートする。
2曲目に披露されたのは、フロントマンのスチュアート・マードック以外のメンバーの躍進が特徴的な最新アルバム『Late Developers』からギターのスティーヴィー・ジャクソンがヴォーカルをとる「So in the Moment」はセブンティーズな甘いメロディとコーラスワーク、パワーポップ的疾走感あふれるアンサンブルは、バンドにフレッシュな息吹を与えていた。
永遠に色褪せることのない「Get Me Away From Here, I'm Dying」の「ここから連れ出して、死にそうなんだ」というコーラスを会場全体でシンガロングする一体感はかけがえのないものだ。「踊りたい?」とオーディエンスに呼びかけたあと、土曜の夜のパーティーにふさわしいダンサブルな「Funny Little Frog」に続けて、エレクトロニックな音色の導入がポイントだった『Late Developers』収録の「Do You Follow」へ。ファンキーなギターとキーボードのフレーズが推進力となり、サラ・マーティンのファルセットとマードックの掛け合いもスリリングなこの曲もまた、いまのベルセバのムードを体現するナンバーと言って差し支えないだろう。
「少しスロウな曲を」と前置きしたあと、2003年の『Dear Catastrophe Waitress』収録の「Piazza, New York Catcher」でマードックがステージを降り客席でオーディエンスと一緒に歌い終えると、彼が歌唱で参加したNHK朝ドラ『虎に翼』の挿入歌「You Are So Amazing」をドラマのフッテージがスクリーンに映されるなか演奏。ジェンダーとセクシュアリティを大きなテーマのひとつとして描き続けてきたバンドとドラマの真摯なメッセージが合致した、必然のコラボレーションだ。かねてから日本で演奏したいと予告されていたけれど、この光景には涙を堪えきれなかった。間髪入れず「Another Sunny Day」に繋がれ、客席がたちまちダンスフロアと化す。
そしてステージ後方のスクリーンに歴代のジャケットに使用された写真が映されると、彼らのライブでは恒例の、ファンをステージに上げての「The Boy With the Arab Strap」へ。この祝祭の空間は格別で、ハーメルンの笛吹きさながらにステージ上を練り歩く姿も微笑ましい。イントロが鳴るたびに歓喜の声が起こり、定番曲に新曲を盛り込みアップデートさせたセットリストは、現在のバンドの好調さを証明していた。スチュアートがピアノの上に登って煽るアグレッシブな「Dear Catastrophe Waitress」を終えると、最後の曲を迎えるにあたり「僕らのコンサートだったらまだ半分くらい。次に東京で演奏するときは、もっとたくさんの曲をやりたい」とこの夜のセットを終えるのを残念がる。おもむろにアコースティック・ギターの「Judy and the Dream of Horses」のイントロを弾きながら「1995年か6年、君たちがまだ生まれていない頃の曲だよ」と笑わせ、フロア全体に自然とシンガロングと手拍子が起こり、ハッピーとメランコリーに満ちた夜は大団円を迎えた。ベルセバの音楽は傷ついた誰かにとって癒やしであり、孤独を抱えた誰かにとっては勇気を奮い立たせてくれるものであり、あらゆる人を迎え入れてくれる場所なのだということをあらためて確認させてくれる一夜だった。text by 駒井憲嗣