8月から立て続けに「Garmonbozia」と「Ingo Swann」の2曲をリリースし、2年ぶりに音楽活動を本格化させた
フライング・ロータス(Flying Lotus)が、10月30日(水)に最新EP『Spirit Box』をサプライズ・リリース。本作は、サウンドトラックを除けば、2019年の『
Flamagra』以来の作品集のリリースとなります。
宇宙、アニメ、
ジャン=ミッシェル・ジャールの音楽など、幅広い影響を作品に取り入れるフライング・ロータスですが、“超自然的なものだったり、見落とされがちなもの、そして神秘的な要素”をインスピレーション源とした『Spirit Box』でもその影響の多様性は発揮。ヴァンゲリス風のシンセサウンドから始まる一曲目の「Ajhussi」は、フライロー(フライング・ロータスの愛称)らしい華麗かつ重厚な楽曲を予感させるも、瞬く間にきらめくハウスビートとエフェクトのかかったヴォーカルが加わり、異なる方向へと展開。これまでの作風からフライロー(フライング・ロータスの愛称)がハウス・トラックを作るのは珍しいことですが、本編最後の「Ingo Swann」も、ややメランコリックでありながらも躍動感のあるダンストラックに仕上がっており、フライング・ロータス作品唯一の共通点と言える“意外性”が伺えます。そして本編の最後を飾る「Garmonbozia」は、彼にとって最も不気味さを放つ部類のトラック。自らのヴォーカルをフィーチャーしながら、ドロドロとしたベースラインに身をゆだね、前後に揺れ動くビートに乗って「痛みと悲しみ」を歌っています。
中盤の「The Lost Girls」と「Let Me Cook」では、シド・スリラムと
ドーン・リチャードがゲストヴォーカルとしてフィーチャー。「The Lost Girls」では、疾走感あるパーカッションにスリラムの情感あふれるヴォーカルが加わり、楽曲に温かみを与えている一方、経験豊富なドーン・リチャードは「Let Me Cook」でゆったりとしたムードで聴く者を誘惑します。
過去作品と比べても、より一層独自性の強い『Spirit Box』は、約20年もの間、常に先駆者であり続けてきたフライング・ロータスが、新たなステージへと歩み出したことを予感させるもの。他の追随を許さない天才が切り拓く音楽の未来に注目です。
Photo by Tim Saccenti for Setta Studio