ピアニストの
仲道郁代が、4年ぶりの新録音アルバム『ザ・ラスト・モーツァルト』を5月28日(水)に発表します。アルバムには、2024年12月をもって指揮活動を引退した
井上道義との共演による
モーツァルトのピアノ協奏曲を2曲収録。仲道はデビュー時から長きにわたり井上と共演を重ね、とくに2023年に
オーケストラ・アンサンブル金沢、そして群馬交響楽団公演で共演したモーツァルトのピアノ協奏曲第20番とピアノ協奏曲第23番は、その内容の密度の濃さ、表現の繊細さが音楽的な深い感動を生みました。今回のアルバムにはその2曲を収録しています。
今回の録音に際しては、井上が「アンサンブル・アミデオ」と名付けたオーケストラが編成されました。イタリア語の「アミデオ(Amideo)」は、モーツァルトの名前「アマデウス」のヴァリアント(変形)の一つ。また「アミ(Ami)」にはフランス語で「友達」という意味もあります。コンサートマスターの
長原幸太をはじめとするオーケストラのメンバーは、井上が信頼を寄せ、また、井上との最後の音楽づくりをともにしたいと、親愛の気持ちを抱いて集まりました。参加メンバーを知った仲道は「この方たちと一緒ならきっと成功する」と確信し、セッションではこれまでの経験から大きなシンパシーを感じている音楽仲間たちとの共演を心から喜びましだ。
録音セッションは2024年12月、東京・第一生命ホールにて2日間にわたって行なわれました。録音最終日は、井上の希望により奏者全員が白い服を着用し、独特な神聖さ、厳かさを帯びたなかでの演奏に。録音で使用されたピアノはヤマハ CFX (特別モデル)で、仲道がたびたびコンサートで使用し「表現の可能性を広げてくれる」として全幅の信頼をおく楽器です。オーケストラは、モーツァルトのスコアリングのアンティフォナルな効果を出せるよう第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に振り分けて配置され、第20番ではクラシカル・ティンパニが採用されています。
仲道は、このアルバムに寄せたメッセージで「過ぎ去り、消えていく定めである美しい瞬間を確かに手にとどめておきたい。音に心を委ね、でもそれは手のひらからこぼれ落ちてゆくのだと知りながら、そこにいる皆が、その瞬きを生きた記憶。それが、この録音です」と記しています。
Photo by Noriyuki Soga