女性演歌歌手の旗手として現在も最前で活躍している
大月みやこが20代に録音した異色作『
日本民謡 ラテン・フィーリング』。1973年のリリースから50年もの時を経てレコードが再発売。
伝統的な日本民謡を若い世代に伝える為に、民謡に現代的・流行的な音楽のアレンジを施して聴かせたNHKの番組『若い民謡』(音楽担当:
岩代浩一)のムーヴメントや、
原信夫とシャープス&フラッツ、
東京キューバン・ボーイズなどのパイオニアたちから影響を受けたであろう、日本民謡とラテン音楽の組み合わせ・融合をテーマに製作された作品です。
本作において最も注目すべきはこのテーマの元に集結した腕利きミュージシャンたちの演奏。フルートに
宮沢昭、ピアノに江口啓介、ベースに原田長政、ギターに
中牟礼貞則、オルガンに池野成秋、そしてラテン・グルーヴの肝を司る
瀬上養之助グループと、数々の国産ジャズの名作にクレジットされている凄腕の面々が集結しています。
編曲は、歌謡曲にラテン・リズムを取り入れた
三橋美智也「岩手の和尚さん」や
楠トシエ「サンマ・サンバ」などを手がけたキングレコードの専属作曲・編曲家である小町昭。
日本民謡を完全にラテン・ジャズ化した圧倒的な演奏が凄すぎるあまりに、その録音時における歌い手の緊張がどれほどのものだったか当時の関係者でなくとも想像容易いものの、若き大月みやこの歌唱は全く気圧されることなく見事に日本民謡の持つ独特な節回しをラテン・グルーヴと和合させ、力強く瑞々しく、情感豊かに歌い上げています。
1973年発売のレコードには未収録、1997年に再発売されたCDにのみ追加収録されていた「三階節」と「花笠音頭」の2曲が本再発盤に特別収録。また60年代のキングレコードの作品に使用されていた濃紺色の帯も付属(オリジナル盤は恐らく帯無し仕様)した豪華仕様となっています。