世紀のヴォーカリストにして、今世界で最も過激な貴公子と騒がれる
アダム・ランバート(Adam Lambert)。自身がエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたニュー・アルバム
『トレスパッシング』を引っさげ、<めざましライブ><SUMMER SONIC 2012>出演も決定している彼、ヴォーカリストとして参加した
クイーン(Queen)のロンドン公演のレポートが到着しました!
《Queen+Adam Lambert》
at Hammersmith Apollo, London / 2012. 7. 11 6月に在位60年を祝賀し健在ぶりを示した“The Queen”ことエリザベス女王だが、イギリスが誇るもうひとつの“クイーン(Queen)”も久々にロンドンを沸かせてくれた。往年のファンを中心に若いロック・キッズ、小学校低学年児連れの三世代ファンまで、あらゆる層が混じる場内は、衰えない人気を見せつける。“不世出の天才”フレディ・マーキュリー役に今回抜擢されたのは、『アメリカン・アイドル』からスーパー・スター道を邁進中のアダム・ランバート。きっかけは3年前の『アメリカン・アイドル』決勝戦、そして昨年のEMA(MTV Europe Video Awards)での共演を経て、2012ツアーが決定。東欧公演に続き、これが初の英上陸になる。しかし英国におけるアダムの知名度は正直言ってまだ低い。全米を魅了したアイドルは、果たしてイギリスが世界に誇る国民的ロック・バンドのファンを納得させることができるだろうか?
その大きな賭けは吉と出た。ストロボが雷光するイントロ「フラッシュのテーマ」に続き、クイーンの紋章を染めた幕が落ち、バンドが姿を現すと同時に「輝ける七つの海」が吹き荒れる。劇的なオ―プニングに早くも全開の
ブライアン・メイ&
ロジャー・テイラーに対し、ブラック・レザーに銀の肩パッドをきらめかせ、しとやかに練り歩くアダムはさながら孔雀。意外に地味?と思いきや、2曲目「炎のロックン・ロール」のシャウトで飛び出した噂の“神の声域”に、それまでやや様子見風だった観客も身を乗り出す。「ファット・ボトムド・ガールズ」でエルヴィス風に腰を振るアダムの茶目っ気に、この晩最初の手拍子&合唱が起こり、「ドント・ストップ・ミー・ナウ」の息の合い方、ロジャーとのデュエット「アンダー・プレッシャー」で披露した七色の歌声と、その実力をセット前半で十分に証明。
フレディの“男性的な牙”という意味では
ポール・ロジャースの方がやや上ながら、ハード・ロック曲での若々しい切迫感からバラードの説得力まで表情豊か。ハイライトは「サムバディ・トゥ・ラヴ」の熱唱で、彼の天性のドラマ感覚とエモーショナルな歌声は場内を感動と総立ちの渦に巻き込んでみせた。
「レディオ・ガ・ガ」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「ボヘミアン・ラプソディ」ほか、歴代ヒット曲とロック史に残る名曲が惜しみなく連打され、過去のライヴ映像でフレディが甦る涙モノの場面、特設の花道、屋内ホールでよもや!の火炎噴射や打ち上げ花火など、演出はとことん派手に華麗にショウアップされていた。それを“アメリカ風のショウビズ”と評する者もいるかもしれないが、演奏そのものは各人の力量で魅せ、聴かせるシンプルなもの。
何より“Queen+Adam Lambert”のコンサート・タイトルは、このショウが新たな血流を組み込むことでクイーンの歴史と音楽のレガシーを現在に再解釈し、アップデートするものであることを告げている。フィナーレで肩を組み、喝采の中何度もお辞儀するメンバー。笑顔で立ち去ろうとするブライアンとロジャーの背中に、感極まってアダムは「ロックの王族です!」と叫んだ。次なる世代にリスペクトと遺産は受け継がれた――。そう、「The Show Must Go On ――ショウは続く」のだ。(文:坂本麻里子)