昨年7月にリリースされた日本人作曲家、
佐村河内守の交響曲第1番「HIROSHIMA」の
アルバム(COCQ-84901)が、発売から1年半あまり経過した今、にわかに脚光を浴びています。
Amazonの総合チャートで1位となり、iTunesの総合でTOP5にランクインするなど、クラシックでは異例のヒットとなっているこの曲、なぜ注目を集めているのでしょうか。
作曲をした佐村河内守は、1963年、広島生まれの被爆2世。10歳の頃より作曲家を志し、ひところは映画『秋桜(コスモス)』の音楽や、ゲーム『鬼武者』『バイオハザード』の音楽を担当して名を馳せたものの、35歳になり、全聴覚を失うという悲劇に襲われました。
作曲家にとって生命線である聴覚を失い絶望しながらも、闇の中で苦しみながら作り上げたのが、この交響曲第1番「HIROSHIMA」でした。演奏時間は80分を超え、さらに100人を超える大編成のオーケストラで演奏される巨大な交響曲。佐村河内が膨大な時間と体力を費やし、まさに命を賭して作り上げたこの曲は、発売当初からクラシック・ファンの間で大きな話題となっていました。
そして、今年11月9日にNHK総合『情報LIVEただイマ!』で、佐村河内守の特集がオンエアされ、ふたたび話題を呼んでいます。その壮絶な作曲人生を追ったドキュメンタリーが、クラシック・ファンのみならず、普段クラシックになじみのない層にも強い感動を呼び、TwitterをはじめとするSNSで放送中から現在にいたるまで大反響。発売元の日本コロムビアには注文が殺到し、生産が追いつかない状態となっています。
作曲家の苛烈な生き様が反映された交響曲が、多くの人々の共感と感動を呼ぶ。それは混迷を深めるこの時代だからこそ生まれた現象と言えるのかもしれません。今なお闇の中で音楽を生み出し続けている佐村河内守という作曲家、今後もますます注目を集めそうです。