メンバーのガラ(vo)が持病の治療に専念するため、活動を一時休止することを発表した
MERRY。先日リリースした最新シングル「梟」を引っさげ、休止前最後のライヴとなる〈MERRY 2013「devour」〉を2月13日(水)、東京「SHIBUYA-AX」にて行ないました。
MERRY
MERRY 2013「devour」at SHIBUYA-AX
2013. 2. 13 SHIBUYA-AX
〜 オフィシャル・レポート 〜活動休止前夜、“最強の現在”を見せつけたMERRYが、オーディエンスと交わした約束。 「俺にはMERRYしかないし、歌しかない。いちばん熱くなれるこの場所に、かならずまた戻ってきます。待ってろとは言わないから、俺がここでまた無茶苦茶やるときまで、その身体、なまらせないで準備しといてください。またライヴで会いましょう」2月13日、午後9時16分。2時間10分に及ぶ熱演を経て、MERRYのフロントマン、ガラは会場を埋め尽くしたオーディエンスにこう告げ、その場を去った。ステージを自分たちの主戦場とするバンドだからこその説得力がそこにはあった。
この日のライヴは、先頃リリースされた最新シングル、「梟」に合わせてのもの。公演タイトルに掲げられた『devour』という単語には“むさぼり食う”という意味があり、まさにそれが“おとなしそうでいて実は夜行性の猛禽類”である「梟」に呼応するネーミングであることがわかるが、同時にこの言葉は“理性を失わせる”といった意味合いで用いられることもある。そして実際、この夜のライヴは理性的に観察などしていられないほどの熱に満ち、メンバーたちからはある種の殺気にも似たものが感じられた。
ライヴは前述の最新型キラー・チューン「梟」で幕を開け、さまざまな時代のさまざまな楽曲を配しながら前作シングルにあたる「群青」でひとたび幕を閉じ、アンコールの最後の最後にはふたたび「梟」が炸裂するという展開に。かつてのMERRYには、攻撃性から哀愁味、昭和歌謡テイストから良い意味での奇天烈さといった自分たちの持ち味すべてをライヴに盛り込もうと躍起になりすぎて、逆に自分たちの核となるべき部分が不明瞭になってしまうことが少なからずあった。が、今は違う。もちろん自分たちの音楽を妙に絞り込んでしまったわけではなく、逆にすべての要素が核なのだという自覚を持ちながら自信満々にすべての得意技を繰り出してくるようになったのだ。いわば自分たちの邪道ぶりを確信しながら「これが俺たちの王道だ!」と無言のうちに訴えかけてくるかのような頼もしさが感じられる。そうした意味において、MERRYはまさに現在、自己史上最強の状態にあると言っていいだろう。
しかし皮肉なことに、そんな充実した状態にありながら、これからしばらくの間、MERRYのライヴをむさぼり食う機会を我々は失うことになる。ガラがステージを去る間際に冒頭のような言葉を吐いたのは、彼が長きにわたり悩まされ続けてきた腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けることを決意し、入院と療養のため、一定期間の活動休止を強いられることになったからだ。ただ、もちろんそれは“これから”のための決断であり、MERRYの未来を見据えたうえでのもの。アンコール時、ドラマーのネロが「今日はMERRYの新章の始まりだからな! 勘違いすんなよ!」とオーディエンスを煽っていたが、まさにその言葉通り、MERRYはこの夜をもって着地点に至ったわけではなく、次の目的地へと向かって羽ばたいたのだと解釈すべきだろう。
こうして雄々しく飛び立った5人に、「群青」の歌詞ではないが、僕は「幸あれ!」という言葉を投げかけたい。この曲が披露されたときに歌声を重ねた観衆の1人ひとりも、きっと同じ気持ちだったに違いない。だからガラとの約束通り、さらに強くなって戻ってくる彼らと向き合う日を“待つ”のではなく、彼らに負けないオーディエンスであれるよう、こちらも覚悟を決めて前に進み続けておきたいところだ。(Text by 増田勇一 / Photo by 中村 卓)