2007年にアニメ『マクロスF(フロンティア)』のオーディション〈Victor Vocal&Voice Audition〉にエントリーし、見事ヒロインの“ランカ・リー”役を射止め、翌年にはシングル「星間飛行」を発表。声優、シンガーとして活躍を続けてきた
中島 愛。昨年12月、個人名義での音楽活動の無期限休止を発表した彼女、さる3月20日(木)に東京「日本青年館」で行なわれた最後のライヴ〈Megumi Nakajima FINAL LIVE 「Thank You」〉のレポートをお届けします。
[オフィシャル・レポート]■
Megumi Nakajima FINAL LIVE「Thank You」2014年3月20日 / 日本青年館 昨年12月2日、本人名義での音楽活動を無期限休止することを発表した中島 愛。最後のライヴの日が、ついにやって来た。
会場は東京・日本青年館。彼女が初めてステージに立った場所だ。2007年8月18日に行なわれた〈マクロス25周年記念ライブ〜MINMAY meets FIRE BOMBER〜〉。中島は『マクロス』シリーズ最新作のヒロイン役として紹介され、『マクロスプラス』劇中歌「VOICES」を歌ったのだった。それから、約7年の時が過ぎた。
2014年3月20日、18時半少し過ぎ。場内が暗転して重厚な音楽が鳴り、中島がステージのセット上段に登場する。ピンクの花柄のドレスで、髪は黒。長髪を後ろで結んでいる。オープニング・ナンバーは「愛の重力」。続いて、ステージ前方に降りてきての「Carry Out!」。最新アルバム
『Thank You』の1曲目と2曲目を並べて披露する。
「みなさん、こんばんは、中島 愛です」と最初のMC。「今日は特別な一日ですけど、みんなにとって幸せな日だったと思ってもらえるように、がんばって歌います」「みんなの声が力になります。最後までよろしくね!」この最初の挨拶を、彼女はどのくらい自分の中で反芻してから、ステージに上がったのだろうか。「特別な一日」だけど、いつもと同じのように歌で幸せを届けたい。中島は満面の笑顔で、観客はサイリュームを振って、彼女の歌に応える。
4曲目からは、「TRY UNITE!-extended version-」「そんなこと裏のまた裏話でしょ?」「ありがとう」とシングル曲を連続。「みんなもコシコシしよう!」という呼びかけでスタートした「そんなこと〜」では、ステージの右端から左端まで行き来して、観客とコール&レスポンス。「ありがとう」は、キーボードの西脇辰弥が吹くハモニカの音色に乗せて、しっとりと。歌い終わった後の「ありがと」というささやくようなひと言が印象的だった。
2度目のMCでは衣装について。――5歳の頃、ドレスとティアラの“お姫様セット”を買ってもらって、それを着るのが大好きだった。一人で歌を歌っていた頃の原点に戻りたい――という思いを込めて、今日の衣装はその時のドレスをイメージしたという。「子供の頃からの夢を詰め込んだドレスです」。会場の気分が落ち着いたところで、ゆったりとした曲を歌うコーナーへ。「星空」「素直」「あの日の海」と続く。「あの日の海」では青いライトがステージを照らし、まるで海の中にいるよう。
「みんな一緒に熱くなってくれる!?」と、元気な声で観客を煽った「Wish」から、ライヴは終盤へ。「最近のライヴではやっていないけど、歌いたかった曲」を集めた4曲メドレーでは、曲ごとにテンションの高いコール&レスポンスが。2012年の曲「Hello!」から一気に2009年発表の2ndシングル「ノスタルジア」へと、歴史を遡っていく。「ノスタルジア」のアウトロでは、こみ上げてくる気持ちを抑えるように、天井を見つめる姿が印象的だった。
「最後に、中島 愛のデビュー曲、聴いてください。〈天使になりたい〉」中島 愛名義のデビュー曲で、ライヴ本編はフィニッシュ。だが、まだ彼女には歌いたい曲も伝えたい想いもあり、観客もそれを待っている。熱い“まめぐ”コールの後、今度は純白の衣装に身を包んで、中島は再びステージに姿を現す。
アンコールでは、「放課後オーバーフロウ」「星間飛行」と“ランカ・リー=中島 愛”名義の曲を元気よく披露。だが、「星間飛行」では時々歌が止まってしまい、観客が合唱して彼女を元気づける場面が。歌い終わると、場内の空気は一変していた。終わりが近いということは、誰もがとうに知っていた。
「泣かないと決めていたけど、ダブルデビュー曲でうるっと来てしまって……。ごめんね」と、笑顔を見せる中島。そしてそこから、この日最も長いMCが始まる。自分の言葉で直接ファンに向かって、活動休止への想いを語り始めたのだ。
「今日のライヴをもって、中島 愛としては歌を一度お休みすることにしました」ランカ・リー=中島 愛として2008年にデビューし、その翌年に今度は中島 愛名義での1stシングルをリリース。ランカとして歌いはじめ、ランカのことを大切に思っていたからこそ、中島 愛として歌うことはどういうことなのか、ずっと答えを探していた。そんな6年間だった。2013年に「そんなこと裏のまた裏話でしょ?」と「ありがとう」という全くテイストの違う曲を続けてリリースしたことで、やっと答えが見つかったような気がしたという。
「アニメに沿った形でいろいろなテイストの曲を歌うのが中島 愛だと思いました。だからアニメの歯車になりたかった。中島 愛の名前より、アニメを見て好きになってほしいという想いでCDを出してきました。今の自分だとそれ以上のことには応えられないと思って……」活動休止については、全て自分で決めた。「自分を見つめ直す時間がほしいと思いました。私の力不足。全部、私のわがままです」「全てのみなさんにありがとうの気持ちとごめんなさいの気持ちを伝えたいです。そしていつか胸を張って“ただいま”と言えるようになるのが目標です。待っていただく時間をいただきたいと思います」。
「待ってるよ!」という声が会場のあちらこちらから響き、少し遅れて大きな拍手が起こる。「これから歌う曲は、私がずっと夢に思っていた、自分の声を誰かに聞いてもらえる、それをみんなが力に変えてくれるという歌です」、歌への感謝をこめての「Songbird」と、全ての人への想いを代弁した「金色〜君を好きになってよかった」が、アンコール最後の2曲。「金色〜君を好きになってよかった」では、場内がイエローのサイリューム一色となり、決意を固めた彼女に観客も応える。「絶対にまた会いましょう!」という希望に満ちた言葉を残して、一度目のアンコールは終了した。
そしてダブルアンコールはひっそりと。西脇辰弥のピアノに乗せての「とうめいにんげん」。長く一緒にいて、想いを通じ合わせた二人のことを歌った曲だ。「みんなのくれた6年間、一生忘れません。ありがとうございました」、ステージ上段で中島は深々とおじぎをし、背筋を伸ばしてステージを去った。