「Black Friday」from“Katy Lied” Steely Dan / 1975年 中田 「TOTOはメンバーそれぞれがスタジオ・ミュージシャンとして活躍しているので、順を追って紹介していきましょう。まずはジェフ・ポーカロの初期の傑作。スティーリー・ダンのサブ・メンバーとしてドナルド・フェイゲンと一緒にやったことで、彼は大きく成長したと思うんです。なにしろ20〜21歳でこのグルーヴを出して、自分のスタイルを築き上げているのが凄いですね。このアルバムは1曲を除いて全部ジェフが叩いていて、それだけフェイゲンに認められてるんじゃないかなと思います」
「Lowdown 」from“Silk Degrees” Boz Scaggs / 1976年 中田 「ボズ・スキャッグスのお馴染みのナンバーですが、サウンド的な聴き所はジェフのドラムとデヴィッド・ハンゲイドのベース。それと洒落たデヴィッド・ペイチのコードワーク辺りを楽しんでください。TOTOが初期にやっていた〈テイル・オブ・ア・マン〉という曲の最後の2コードのリフをボズが気に入って出来た曲。いわばTOTOの母体ともなった曲です」
「Don't Stop Now」from“Les Dudek” Les Dudek / 1976年 中田 「ボズの『シルク・ディグリーズ』にも参加し、ライヴでもバックをつとめたレス・デューデックというギタリストのアルバム。当然の如くTOTOの面々が参加して盛りたてています。アーシーな渋いギターだけじゃなくて、ラテン要素の入ったフュージョン的な演奏もいいですね」
「I Just Love The Feelin' 」from“S.S. Fools” S.S. Fools / 1976年 中田 「ボビー・キンボールがTOTOに入る前にスリー・ドッグ・ナイトのメンバーと結成していたバンド唯一のアルバムから、彼の作詞作曲のナンバーです。76年のこの曲はシンセの音がプログレっぽくて時代を感じさせるんですけど、曲調はソウルフル。アルバムにはデヴィッド・ペイチも作曲で関わっていたので、TOTOを結成するときに、“S.S. Foolsのソウルフルなヴォーカルがよかった”ということで彼に声をかけたんじゃないかな、と思っています」
「Gimme The Goods」from“Down Two Then Left” Boz Scaggs / 1977年 中田 「またボズ・ネタですが、以前私が選曲させていただいたコンピレーション・アルバム『ジェフ・ポーカロ セッション・ワークス VOL.2』というアルバムにも入れた曲です。終盤のドラムが凄いです、神ワザ的に速い。ボズ自身もR&B色の強いヴォーカリストとして弾けている名曲です。ジェフはすごいグルーヴと個性の人で、テクニックを見せつけるタイプではないんですが、これは本当に凄い!」
「The War Was Over」from“Terence Boylan” Terence Boylan / 1977年 中田 「77年になるとスティーヴ・ルカサーがようやくセッションをはじめます。彼の最初の仕事がこのアルバムで、彼の出発点ともいえる曲です。この頃は後のストラトキャスター系ではなく、レス・ポールを中心に弾いています。他にも〈ヘイ・パパ〉という曲でリードを弾いています。まだ初々しい(笑)ですね」
「MacArthur Park Suite」from“Live And More” Donna Summer / 1978年 中田 「まだTOTOには参加していなかったマイク・ポーカロの印象的なベースが聞けるナンバー。曲はドナ・サマーの全米NO.1ディスコ・ヒットで、グレッグ・マジソンがアレンジをしていて、スタジオ版のロング・ヴァージョンではジェイ・グレイドンがギターを弾いています」
「Got To Be Real」from“Cheryl Lynn” Cheryl Lynn / 1978年 中田 「これもディスコな感じの曲ですが、デヴィッド・ペイチが父親のマーティーとプロデュースした曲。作曲はデヴィッド・ペイチ、デヴィッド・フォスター、シェリル・リンとなっています。ペイチがピアノでリフを弾いたものにシェリルが歌詞やメロディを口ずさんで当てはめ、そこにフォスターが入ってきて出来上がっていったそうです」
「Lady Of The Night」from“A Long Time Coming” Dave McCluskey / 1978年 中田 「78年ものをもう一曲。英国生まれ、カナダ育ちのシンガー・ソングライター、デイヴ・マクラスキー。結構レアな盤で私のレーベルで再発させてもらいました。この曲はルカサーがレス・ポール系のギター、ボビー・キンボールがカウンター・テナーのヴォーカルを聞かせてくれます」
「Take Me To Your Heaven」from“Another Night” Wilson Bros. / 1979年 中田 「79年の定番ウィルソン・ブラザーズです。ルカサーが1曲を除いて全てギター・ソロを弾いているので有名です。この曲はイントロからジェイ・グレイドンばりのディストーションがバリバリ効いたハーモニーがいいですね」
「Can't Seem To Find The Time」from“Ray Kennedy” Ray Kennedy / 1980年 中田 「レイ・ケネディのアルバム。デヴィッド・フォスターがプロデュースを手掛けて、全編ルカサーが弾きまくっています。個人的にはルカサーの5本の指に入るソロだと思っています」
「I Want You」from“Winners” The Brothers Johnson / 1981年 中田 「2曲を除く8曲にTOTOの面々がいろいろと加わったアルバム。この曲はイントロからルカサーのギターが炸裂して、TOTOとブラザース・ジョンストンがマッチしたナンバーになっています。この頃はルカサーがブラック系のアーティストの大御所から好かれていて、後で紹介しますが、クインシー・ジョーンズの〈愛のコリーダ〉でも全編的に頑張っています。他にもアース・ウィンド&ファイアーの〈バック・オン・ザ・ロード〉という曲でももの凄いギターを弾いています。79年近辺のTOTOのアルバムの出来を聞いて、御大たちがルカサーを使ってみよう!と思ったんじゃないでしょうか」
「Mr. Briefcase」from“Rit” Lee Ritenour feat. Eric Tagg / 1981年 中田 「この曲はデヴィッド・ハンゲイトのファンキーなベースとジェフ・ポーカロのクールにグルーヴするドラムが聴き物。ハンゲイトはいよいよこの夏からTOTOに復帰するらしいので楽しみですね」
「You Can't Have Me」from“U.S.J” Char / 1981年 中田 「81年の作品ですが、TOTO用に押さえていたスタジオが空いてしまったことからルカサーが"日本人のギタリストをプロデュースしてみたい"とオファーし実現したもの。プロデュースはルカサー&Charになっていますが、実際CharがLAに行ったときにはバック・トラックはもう出来上がっていたそうです。で、この曲ではジェフのドラムがやっぱり凄いんです。ギター・ソロになってもそのバックで弾けまくってます。同じ年の尾崎亜美のアルバム『ホット・ベイビー』でも彼は叩いてますが、中でも〈プリズム・トレイン〉は凄い!」
「Ai No Corrida」from“The Dude” Quincy Jones / 1981年 中田 「ルカサーが全面的に参加したクインシー・ジョーンズの大ヒット曲。ギターのカッティングが聴き物ですね、全編ブラック・コンテンポラリー的な単音フレーズやクリーンなアルペジオなどで、リズム・ギタリストとしてのルカサーが味わえます。同じクインシーがプロデュースしたパティ・オースティンの〈ベイビー・カム・トゥ・ミー〉でもいいバッキングをしています」
「Physical」from“Physical” Olivia Newton John / 1981年 中田 「 1981年に10週間全米No.1を記録したオリヴィアの大ヒット・ナンバー。ルカサーにしては比較的主張の少ないソロなんですが、やはり彼ならではの味があって、1音半のチョーキングとかルカサー節が随所に出てきます。ベースはデヴィッド・ハンゲイト」
「Human Nature」from“Thriller” Michael Jackson / 1982年 中田 「TOTOマニアの人にとって、〈ビート・イット〉でルカサーがベースを弾いているなんてのはお馴染みですが、今日はあまり名前の出て来てないスティーヴ・ポーカロの曲をかけます。彼はTOTOのファースト・アルバムでもすごくイノセントでスペイシーな曲を書いているので、それがマイケルの持つ感覚とマッチした名曲だと思います」