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第13回齋藤秀雄メモリアル基金賞、受賞者は大友 肇と上岡敏之に決定!
斎藤秀雄
2014/12/19 22:26掲載
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チェリスト・指揮者・教育者として高名な故・
齋藤秀雄
(1902-1974)に因み、2002年(平成14年)に公益財団法人ソニー音楽財団(Sony Music Foundation)により創設された“齋藤秀雄メモリアル基金賞”。“音楽芸術文化の発展に貢献し、将来一層の活躍が期待される若手チェリストと指揮者を各々1年に1人顕彰すること”を原則としています。12月17日(水)、第13回目を数える今年の受賞者が大友 肇(チェロ)と
上岡敏之
(指揮)に決定しました!
■
大友 肇氏へ「贈賞にあたって」
秀れた音楽家であり才能あふれた器楽奏者である大友さんのチェリストとしてのキャリアは弦楽四重奏と一心(身)一体である、と言って良いでしょう。現在クァルテット・エクセルシオのメンバーとして活発な演奏活動をされておられますが、特筆されて良いのは室内楽という音楽的な喜びは大きくてもその活動を支えて行くための様々な難しさが伴う面を考えますと本当に大変な道を選ばれたことです。しかしその幾多の困難を乗り越え、クァルテット・エクセルシオは今年結成二十周年を迎えられ、これ迄以上に精力的に幅広い活動をされています。大友さんは他のメンバーから親しみを持って「お父さん」と呼ばれている頼り甲斐のあるお人柄の持主です。
四人のメンバーが桐朋学園の出身というのを含めて我が国が産んだ初めての国際的な弦楽四重奏団である東京クヮルテットと重なって見える事も多々あります。この二つのグループはそれこそ「弦楽四重奏をどうしてもやりたい。そこで何かを究めたい」という熱い思いを持って頑張り、経済的困難にも立ち向かい弦楽四重奏団としての活動のみでキャリアを積み、芸術的高みに達せられました。誠に敬服の至りです。
桐朋学園音楽部門の創立者のお一人がこの基金賞に名前を頂いている齋藤秀雄先生でした。先生は日本の音楽界にとって偉大なパイオニアであられましたが、チェリストとしての活動も真に幅広く、ソリストとして、オーケストラの首席奏者として、室内楽奏者として、そして名教授として大きな足跡を残されました。その中でも先生が一番お好きで、しかも自分に一番向いていると思われたのが室内楽の分野でした。
桐朋学園でチェロや指揮のレッスン、オーケストラの指導と並んで、それこそ寝食を忘れて室内楽のコーチングをされておられました。私達に室内楽の本当の意味、音楽的な深味とおもしろさを教えて下さったように思います。そのような意味でも今回大友さんがこの基金賞を受賞されます事は真に相応しく、今頃先生も天国で「自分の目的と夢を実現して呉れる人が受賞されて本当に良かった!」と思って下さっていることでしょう。大友さん、お目出度う御座居ました!
(堤 剛)
■
上岡 敏之氏へ「贈賞にあたって」
上岡さん、齋藤秀雄メモリアル基金賞のご受賞、おめでとうございます。
上岡さんは日本でオーケストラを指揮した事なくドイツに渡り、ハンブルクの大学で2年間学ばれました。
劇場にコレペティトールとして入りその後音楽監督にまでなった劇場出身の日本人の指揮者として初めての人です。
オペラのみならずシンフォニーの指揮でも注目を集めているのは、音楽の勉強をしたのが海外、とりわけヨーロッパだったからでしょうか。
日本で最近まであまり知られていなかった理由はこんな所にあったのかもしれませんが、今後もご自身で音楽の道を拓いていって欲しいと思います。
(小澤 征爾)
■
受賞の言葉
この度はこのような名誉ある賞を頂けることになり、本当にありがとうございます。
これまで素晴らしいチェリストの方々が受賞されたなかに加えていただくのは大変な光栄であります。
私や私の弦楽四重奏の音楽活動を支えてきて下さった多くの方に深く感謝申し上げたいと思います。
全ての方のお名前をここにあげることは出来ませんが、特に、チェロの最初の手解きから師事いたしました故津田朝子先生と故井上頼豊先生、桐朋学園在学中に師事いたしました勝田聡一先生にはひときわ感謝を申し上げたいと思います。
私は齋藤秀雄先生に直接ご指導いただくことは出来ませんでしたが、その教えを受けられた多くの先生方に折々でご指導いただけたことは、私にとって大切な財産となっています。
齋藤秀雄先生が大切にされた一つに室内楽を学ぶことがあったわけですが、ここでとりわけ申し上げたいのは、私のような室内楽を専門に活動をしている者にとって、室内楽でしか表現出来ないもの、室内楽を学ぶことから生み出せる音楽芸術があるということを追究してきたことが、このような形で評価をいただけたことは大きな喜びであり、今後の日本の室内楽の分野において、あるいは多方面に向かってさらに広くその音楽的価値が深まっていくきっかけとなるに違いないと思いますし、やはり室内楽を愛して学んでいる若い芸術家にとって、励みになることと思います。
弦楽四重奏団クァルテット・エクセルシオのメンバーとして活動してまいりまして、ちょうど今年結成20周年を迎えられたところでの受賞は、よりいっそうありがたいことで、喜びもひとしおです。
室内楽、特に弦楽四重奏を自分の音楽の在りかとしてまいりましたが、過去から現在にかけて、常設の弦楽四重奏団が自立的に活動できる状況が日本には存在しませんでした。
日本でも常設の室内楽団体が継続的に活動できる環境が僅かずつでも形成されることを願って、道なき道を開拓しながら進んで参りました。この決して楽ではない仕事にそれぞれの人生をかけて共に進んでくれている仲間に敬意を表します。そしてこれからもさらに険しい道に挑戦し続けることになりますが、今、このように私たちの仕事を認めていただけたことを、仲間と共に喜びを分かち合いたいと思います。
最後に、傍で支えてくれている両親や家族たちへ、偉大なる心で惜しみなく私の仕事に理解と協力を示してくれている
ことに心から感謝しています。
齋藤秀雄メモリアル基金賞の名に恥じないようなチェリスト、そして芸術家になれるよう全力で音楽に没頭してまいります。
ありがとうございました。
(大友 肇)
■
受賞の言葉
この度、齋藤秀雄メモリアル基金賞に選んでいただきましたことは、私といたしましては大変光栄に存じますが、正直申し上げてちょっと驚き持って受賞の報を聞きました。
と申しますのは、私自身、齋藤先生のことを存じ上げませんし、齋藤先生の教育とはいわば全く反対のところにおりまして、東京芸大を卒業後、すぐにドイツに渡り、オペラ座での仕事を中心に過ごしてきましたので、日本での指揮活動も近年になって年に1〜2回、複数のオーケストラから招いていただく程度しかやってきておりませんでした。また、今回私を選んでくださいました小澤先生とも1 度お会いしただけでほとんど接点がありませんでしたので、その様な小澤さんと他の審査員の方々が私の指揮に注目してくださり、評価して下さったことにちょっと驚きを感じている次第です。
齋藤先生は、指揮法という1 つのメソードを確立されて、それを元に厳格な教育をされたと聞いておりますが、その教育を受けられた小澤さんをはじめ多くの指揮者が、誰ひとり同じではなく、それぞれの個性を持って花開かれ、国内外で活躍されている現状を拝見いたしますと、いかに偉大な教育者であったかという事をうかがい知ることが出来ます。
今回、この様な賞をいただけますことは嬉しい限りですが、これからの活動を更なる努力を持って行うようにとの叱咤激励をいただいたとも感じますので、その様な思いで頑張っていきたいと思います。
(上岡 敏之)
■
齋藤秀雄メモリアル基金賞
[選考委員会]
永久選考委員: 小澤征爾氏 (指揮者)
永久選考委員: 堤剛氏(チェリスト)
任期制選考委員: 奥田佳道氏(音楽評論家)
任期制選考委員: 那須田務氏(音楽評論家)
任期制選考委員: 渡辺和氏(音楽評論家)
[賞]
・楯
・賞金 当該年毎に1人500万円(総額1,000万円)
[これまでの受賞者]
第1回 (2002年度) 大野和士氏(指揮)植木昭雄氏(チェロ)
第2回 (2003年度) 広上淳一氏(指揮)古川展生氏(チェロ)
第3回 (2004年度) 沼尻 竜典 氏(指揮)チェロは該当者なし
第4回 (2005年度) アラン・ギルバート氏(指揮)工藤すみれ氏(チェロ)
第5回 (2006年度) 大植英次氏(指揮)チェロは該当者なし
第6回 (2007年度) 下野竜也氏(指揮)宮田大氏(チェロ)
第7回 (2008年度) 大友直人氏(指揮)横坂源氏(チェロ)
第8回 (2009年度) 指揮は該当者なし 遠藤真理氏(チェロ)
第9回 (2010年度) キンボー・イシイ=エトウ氏 (指揮) 長谷川陽子 氏(チェロ)
第10回 (2011年度) 高関健氏(指揮)鈴木秀美氏(チェロ)
第11回 (2012年度) 山田和樹氏(指揮)石坂団十郎氏(チェロ)
第12回 (2013年度) 三ツ橋敬子氏(指揮)辻本玲氏(チェロ)
[受賞者プロフィール]
■
大友 肇
1994年に桐朋学園大学在学中に結成された、日本では数少ない常設の弦楽四重奏団“クァルテット・エクセルシオ”のメンバー。1996年第1回東京室内楽コンクール第1位。同年第2回大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門第2位。1997年青山音楽賞奨励賞(現バロックザール賞)、1997、1998年リゾナーレ音楽祭にてマイカル賞、2000年緑の風音楽賞受賞。同年難関の第5回パオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクール最高位、同時にサルバトーレ・シャリーノ特別賞を受賞。
2009年には第19回新日鉄音楽賞「フレッシュアーティスト賞」受賞、クァルテット・エクセルシオが全曲演奏した作曲家グループ「クロノイ・プロトイ」の公演が、サントリー芸術財団から第9回佐治敬三賞を受けた。
これまでにサントリーホール チェンバーミュージックガーデン、NHK(NHK・BSクラシック倶楽部、名曲アルバム、FMリサイタル)第82回新日鐵プロミシング・アーティスト・シリーズ、2002年カザルスホールで行われた“プロジェクトQ”に出演。また、第3回宮崎国際室内楽音楽祭、第3回別府アルゲリッチ音楽祭、ゆふいん音楽祭(第25、
27、30回)、第32・33回草津国際アカデミー&フェスティバル 、せんだいクラシックフェスティバル(2006、2012)など多くの音楽祭に参加。この他、第一生命ホール(晴海)“クァルテット・ウェンズデイ”“クァルテット・ウィークエンド”シリーズ、りゅーとぴあ(新潟)ハイドン(2009〜10年)・モーツァルト(2010〜11年)・べートーヴェン(2011〜12年) チクルス,ベートーヴェン弦楽四重奏曲・モーツァルト「ハイドンセット」全曲演奏会(立川)、直方谷尾美術館室内楽定期演奏会(2010年〜)、西南学院大学(福岡)主催コンサート(2008年〜10年、2014)に出演。 紀尾井ホール「日本の作曲 21世紀への歩み」シリーズ、国際現代音楽協会「ワールド・ミュージック・デイズ」、日本作曲家協議会「アジア音楽祭 2003 in 東京」、第2回東アジア国際現代音楽祭に出演。一方で、幼児、学生、一般大学をはじめさまざまなコミュニティで室内楽の聴衆の和を広げていく活動にも力を注いでおり、ソニー音楽財団の「Concert for KIDS」シリーズや「0才まえのコンサート®」にも登場している。
現在、東京芸術大学室内楽講座の講師及び、サントリーホールの“室内楽アカデミー”で、コーチング・ファカルティを勤め、後進の指導にもあたっている。
■
上岡 敏之
上岡敏之は、オペラ、コンサートの両面において、大きな成功を収め、彼の高い音楽性と、きめ細かい解釈が、マスコミと聴衆双方に絶賛されている。2007年10月および2010 年10月には、手兵ヴッパータール響を率いて日本ツアーを行い絶賛を博した。このコンビによるCD は、コロムビアとオクタヴィアより8枚リリースしているほか、自身のソロピアノCDも2枚発売している。
東京芸術大学で、指揮、作曲、ピアノ、そしてヴァイオリンを並行して学び、1982年、名誉ある安宅賞を受賞。2年後には、ロータリー国際奨学生として、ハンブルク音楽大学に留学し、クラウスペーター・ザイベルに指揮を師事。キール市立劇場のソロ・コレペティトール、およびカペルマイスターとして、歌劇場でのキャリアをスタートさせた。1992年から1996年まではエッセンの市立アールト劇場の第一カペルマイスターを務め、その後、8年間にわたり、ヴィースバーデンのヘッセン州立歌劇場の音楽総監督を務めた。1998/99 シーズンより、ヘアフォートの北西ドイツフィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者も歴任。2004年からは、ヴッパータール市立歌劇場音楽総監督に就任。2009年から5年間ザールランド州立歌劇場音楽総監に転身する際に、ヴッパータール市からの強い要請を受けてヴッパータール響の首席指揮者も兼任した。そして、2014年シーズンよりヴッパータール市立歌劇場のインテンダントに就任したのを機に、同歌劇場の音楽総監督にも返り咲き、現在に至っている。
また、バンベルク交響楽団、ケルン放送交響楽団(WDR)、中部ドイツ放送交響楽団(MDR)、バイエルン放送交響楽団、シュトゥットガルト放送交響楽団、オランダ交響楽団、NHK 交響楽団、読売日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団など、国内外で数多くのオーケストラに客演。2008年6月には、新国立劇場においてヴェルディ作曲『椿姫』を、11月には、日生劇場においてモーツァルト作曲『魔笛』を指揮し、絶賛を博した。
上岡敏之は、多忙な中、後進の育成にも力を注いでおり、1999年から2000年まではドイツ音楽協議会の指揮者フォーラムを主宰。ハンブルク音楽大学では室内楽と伴奏の講師を務め、2000/01年には、フランクフルト音楽大学のオペラクラスの代理教授を引き受けた。2004/05年の冬学期からはザールブリュッケン音楽大学の指揮科正教授の要職にある。
2007年6月、第15回渡邊暁雄音楽基金 音楽賞・特別賞を受賞。
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