さる7月27日、2016年3月24日の第802回〈定期演奏会Bシリーズ〉にバーンスタイン: 交響曲第3番「カディッシュ」の語り手として出演予定だったサミュエル・ピサール(Samuel Pisar)氏が、ニューヨークで逝去しました(享年86歳)。氏に代わり、同公演にはフランスの俳優
ランベール・ウィルソン(Lambert Wilson / 写真)が出演します。曲目に変更はなく、この変更に伴うチケットの払い戻しはされないとのことです。
国際的に著名な法律家、作家であったピサール氏は、ホロコーストの生存者として、ジェノサイドなどの人道犯罪関連の教育のためのユネスコ大使もつとめ、第二次世界大戦終結70年にあたる今年(2015年)も世界各地で精力的に活動していました。また、バーンスタインの信頼を得た「カディッシュ」の語り手としても知られ、親しい友人でもある
エリアフ・インバル(Eliahu Inbal)が指揮する当定期への出演にも意欲を燃やしていたとのことです。
代わりに出演するウィルソンは英語も堪能で、『マトリックス』シリーズなど数多くの映画への出演で知られているほか、朗読や歌手活動も積極的に行なっています。ピサール氏、インバルとも親交があり、ピサール氏自身からの推薦を受けて今回の出演を打診したところ、快諾したという経緯です。
ピサールの逝去に伴い、インバルは「サミュエル・ピサールは世紀を代表する人物でした。彼は人間の残虐な行為の極致から立ち上がり、人間の偉業と幸福を願い、前進すべきものの証人でした。彼のカディッシュは彼の苦痛と経験の集大成であり、人間はそれにより教訓を得るべきです。私と妻は、この偉大な人物を知り、彼と彼の家族と友人であったことを大変光栄に思います。そして彼が語りを務めたカディッシュをプラハとフランクフルトで共演できたことを誇りに思います。東京で演奏するカディッシュ(死者のための祈り)は、彼を想う、彼に捧げる祈りです」とのメッセージを寄せています。
写真: © Paul Prébois
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第802回 定期演奏会Bシリーズwww.tmso.or.jp/j/concert_ticket/detail/detail.php?id=826&year=2016&month=32016年3月24日(木)
東京 赤坂 サントリーホール
開演 19:00
[出演者(変更後)]
エリアフ・インバル指揮東京都交響楽団
語り: ランベール・ウィルソン *
ソプラノ: パヴラ・ヴィコパロヴァー *
合唱: 二期会合唱団 *
児童合唱: 東京少年少女合唱隊 *[演奏曲目(変更なし)]
ブリテン: シンフォニア・ダ・レクイエム op.20
バーンスタイン: 交響曲第3番「カディッシュ」 * (1963)(日本語字幕付き)
[ランベール・ウィルソン]パリ生まれの俳優。ロンドンのドラマセンターで演技を学ぶ。流暢な英語を話すウィルソンは22歳で初の主要映画作品、フレッド・ジンネマン監督『氷壁の女』(1982年)に出演。その後、フランスの最も著名な多くの映画監督のもと様々な作品に出演。主な作品は、アンドレ・テシネ監督『ランデヴー』(カンヌ国際映画祭でノミネート、監督賞受賞作 1985年)、アラン・レネ監督『巴里の恋愛協奏曲(コンチェルト)』(2003年)などがあり、デニス・アマール監督『Hiver ‘54』(1989年)ではジャン・ギャバン賞を受賞。その他、クロード・シャブロル監督、ピーター・グリーナウェイ監督、ジャック・ドワイヨン監督作品などに出演している。
近年はハリウッドでも活躍し、『マトリックス リローデッド』『マトリックス レヴォリューションズ』(2003年)、『キャットウーマン』(2004年)、『サハラ』(2005年)、『ダイヤモンド・ラッシュ』(2007年)、『バビロンAD』(2008年)などに出演、ハル・ベリー、シャロン・ストーン、ヴィン・ディーゼル、シャーロット・ランプリングなどのハリウッドスターとも共演。
最近では、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールにノミネートされ、審査員特別グランプリを受賞したグザヴィエ・ボーヴォワ監督『神々と男たち』(2010年)で主演し、高い評価を得た。
芸術文化勲章シュヴァリエ並びにオフィシエ、国家功労勲章シュヴァリエ並びにオフィシエを受賞。