2012年に日本音楽コンクール史上初のカウンターテナーでの1位入賞を果たして以降、2013年にはボローニャ歌劇場でヨーロッパ・デビュー、2014 / 15シーズンにはウィーン国立歌劇場と日本人カウンターテナーとして初めて客演契約を結ぶなど、いま目を離せない歌い手のひとりである藤木大地。今年の〈ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン〉で、
バッハ・コレギウム・ジャパンと「マタイ受難曲」のソリストとして共演していたことが記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。そんな藤木が、9月15日(火)の東京オペラシティ リサイタルシリーズ〈B→C〉に登場します!
もともとは「
パヴァロッティになりたい」という思いから声楽を始めたために、テノール以外の声種は考えたことがなかったという藤木。しかし2010年夏、風邪で喉を痛めてしまいやむを得ず裏声で軽く歌っていくうちに、声を思うようにコントロールできるおもしろさに目覚めます。そしてさまざまな音楽仲間やコーチに声を聴いてもらった結果、50人以上が“良い”と太鼓判を押したことに後押しされた藤木は、思い切って2011年1月にテノールからカウンターテナーに転向。2012年には〈国際ハンス・ガボア・ベルヴェデーレ声楽コンクール〉にオーストリア代表として出場、世界大会でセミファイナルまで進出したことで、カウンターテナーとして活動していく覚悟も決まり、転向を正式発表しました。
カウンターテナーの活躍する場はバロックや現代曲がメインと思われがちですが、藤木はそんな印象を飛び越え、たとえばドイツ・リートやアルトが担うような交響曲のソロなど、先入観や固定観念でカウンターテナーのレパートリーとイメージしにくい作品にも積極的です。それは「カウンターテナーとして何が歌えるかではなく、演奏家として音楽的に共感できれば何でも歌いたい。カウンターテナーでもこの曲を歌える! 聴ける!! という気づきも体感してもらえたら……」という意思をもち、音楽に接しているからとのこと。
バッハ作品と現代作品を軸とし、演奏家が自由にプログラムを組む東京オペラシティの名物シリーズ〈B→C(ビートゥーシー):バッハからコンテンポラリーヘ〉の本公演は、クラシック音楽の歴史や時代、言葉の枠を超え、“バッハから現代へ、そして再びバッハへ”と流れゆく一夜。同時に“喪失”“愛と青春”“信仰”“現代を生きるオペラ歌手との出逢い”といった、隠れキーワードも織り込まれているようです。“Encounter”と“Countertenor”、まさに“カウンターテナーとの出逢い”から生まれる、濃密な世界を堪能できる公演となるでしょう。