人間国宝の梅若玄祥とアイルランドのコーラス・グループ、
アヌーナ(ANÚNA)のリーダー、マイケル・マクグリンが10月31日に都内で記者会見を開き、2017年2月16日(水)に東京・渋谷 Bunkamuraオーチャードホールで上演される〈ケルティック能『鷹姫』〉について語りました。
アイルランドの作家、W.B.イェイツが能に影響を受けて書いた劇作品『鷹の井戸』。1916年にロンドンで初演されたこの作品は、その後日本で新作能『鷹姫』として演じられました。これまで3回にわたって『鷹姫』に出演している梅若と、イェイツと同郷で、神秘的なコーラスを聞かせるアヌーナの共演により、まったく新たな演出で上演される〈ケルティック能『鷹姫』〉について、そもそも『鷹姫』自体が現行の能とは違う新鮮なものと梅若は語ります。「今回はそれにも増して、歌の世界、音楽の世界でどのような表現ができるか、稽古をしてみないとわからない部分もありますが、非常に楽しみにしております。お互いをさぐらず、遠慮せずにぶつかり合いたい。アヌーナの音楽と能には、抽象的という共通点があり、相乗効果を生むのではないか」
笛や鼓といった能の囃子方とともに音楽を作ることを、マクグリンは「僕にとっていちばん楽しみなところ」と言い、「西洋のハーモニーと日本の伝統的な音楽は異なります。基本的な部分は、水と岩のようにまったく異なる。西洋の音は12の音階で、日本の伝統的な音階は、そういう制約がないと僕は理解しています。12に分けられた音と音の間にも音がある。微妙に表現することができる。笛の響きは我々の声の表現につながってくると思います。舞台の雰囲気や笛を吹くかたの気持ちによっても表現が変わってくると思うので、それに我々がどうやって合わせていけるかがとても楽しみです。アヌーナ自体も、風のように、水のように音の隙間を歌うグループなので、そこがどう表現されていくかが本当に楽しみです」と語りました。
また梅若は文化背景の異なるアヌーナとの共演について、「それほど心配していません。能が持っている以上のものが出せたら最高ですよね。それがみえたら、両方とも変わってくるかもしれない。よくも悪くも中途半端なことだけはしないようにしないと、お互いが悪い結果になってしまう。中途半端にせず、失敗するなら大失敗しましょうね、と言ってるんです(笑)」とコメント。
記者会見の後、アヌーナの女性シンガーであるアンドレア・デラニーが、今回の舞台で歌われる予定の「カム・トゥ・ミー」をソロで、その後、マクグリンとともにもう一曲披露しました。