5人の若手監督が10年後の香港を描いた香港映画「十年」の日本版「十年 日本(仮)」が2018年に公開されます。同作の製作発表記者会見が第22回〈釜山国際映画祭〉で行なわれ、エグゼクティブプロデューサーを務める
是枝裕和らが登壇しました。
「十年 日本(仮)」はオリジナル版と同じく、
石川 慶「美しい国」、
木下雄介「いたずら同盟」、津野 愛「DATA」、早川千絵「PLAN75」、藤村明世「その空気は見えない」という、5人の監督が10年後の日本を描く5作品で構成されています。なお国際共同製作プロジェクトとして「十年 タイ(仮)」「十年 台湾(仮)」の製作も決定しており、タイ版には監督として『
ブンミおじさんの森』で知られる
アピチャッポン・ウィーラセタクンが参加します。
記者会見で是枝は「オリジナル版は非常に挑戦的な企画でしたし、政治的な要素を題材にしているものも多く含まれているものもあったので、果たして日本で十年後を描くことが、その香港版に匹敵する意味を持つだろうか、ということを自分の中では考えました」と述べ、「考えた上で、必ずしも表面的には政治的な課題は実はみえにくい、さらにいうと僕より若い世代が、そういう題材とはなかなか向き合っていないように僕にはみえる、僕らの世代にはそうみえている。そのことが作品作りを通して逆にどのように若い世代の彼らが今の社会とか日本をどのように捉えているのかをみてみたいと思いました。そういうことに触れることが、僕にとっても必要だなと感じたので、参加を決意しました」とプロジェクトに参加した理由についてコメント。
また、若手映画監督への支援について「若手に作る場所をどういう場所を提供するのかということを考えた時、日本は金銭的にも全く足りていないですし、その部分もなんとかしないと世代が上の人間としては思っているんですけど、こういう場所にきて、同世代のアジアの若手の作り手達と刺激をし合うことで、多分意識は変わるはず。日本の中だけで作っている作り手には感じられない意識の変革が、僕も若い時にこの釜山国際映画祭を始めとする多くの映画祭に参加することで変化が自分の中で起きたという実感があるので、まずはそういった精神的な面での支援はできるのではと考えています」と語りました。
僕がこの企画に賛同して参加をした理由はいくつかあります。オリジナルの香港版の『十年』が素晴らしかったことが一つ。
そして、このプロジェクトをアジアの各国で実現していくことは、映画を通じて十年後のアジアというものを考える、みんなで考えていくことのきっかけになるのではと思ったことが一つです。それと同時に、なかなか日本ではショートフィルムがまだ一般的ではないこと、そして日本の若手の監督たちが日本の国内だけではなく、こういった形でこの(釜山国際)映画祭へ参加できることも意義が大きいと思うんですけど、アジアの映画人の一人として映画を作り、アジアの映画人たちと交流を深めていくいいきっかけになればと思いました。これが参加を決めた大きな理由です。
もうちょっと若かったら自分も監督として参加したんですけどね。
今回はエグゼクティブプロデューサーというちょっと偉そうな肩書きですけど、若い監督達と一緒に脚本作りに関わったりアドバイスをしたり、そういうサポートというポジションでの関わり方になっています。とても楽しんでやっています。――是枝裕和このプロジェクトに参加出来て光栄に思います。今起きていることの連続が、将来の日本を作ると思っています。日本の将来の為に、希望のある映画を作ろうと思います。――木下雄介まず、香港版の『十年』を見て日本の諸問題のどこに自分なりの切り口を見つければ良いのか、すごく悩みました。設定は10年後ですが、20年後、30年後と、人間の普遍的な思いを込められたらと思います。――津野 愛オリジナルの『十年』に励まされました。今回このプロジェクトに参加することが出来て光栄に思っています。――早川千絵今回は私が思う日本の未来を誠実に、そして自分の中の正義を投影しながら映画を作っていきたいと思います。とても光栄な機会を頂いたので、のびのびと色々なことに挑戦しながら映画を作っていきたいと思います。――藤村明世テレビでも商業映画でもなかなか扱えないテーマを、こんなに伸び伸びやらせてくれるプロジェクトはこれまでもこれからもないでしょう。十年後、映画人として後悔しないように、声を大にして撮ります。――石川 慶