当時19歳の河本明子さんが所有し、1945年8月6日の原爆投下により弾き手を失うと共に被爆した1926年製アメリカ・ボールドウィン社のアップライトピアノ“明子さんのピアノ”。その末永い現状保存を願うチャリティCDが2タイトル登場。ピアニストのマルタ・アルゲリッチ（Martha Argerich）による『MUSIC FOR PEACE（平和の夕べコンサート）〜ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第1番, 他（2015/8/5）』（KJ-26003 2,315円 + 税）、ピーター・ゼルキン（Peter Serkin）の『MUSIC FOR PEACE〜Plays on Akiko's Piano（J.S.バッハ, モーツァルト, ショパン）』（KJ-26201 1,852円 + 税）が3月3日（土）にワーレコード限定で発売されます。

　アルゲリッチと秋山和慶指揮広島交響楽団による『MUSIC FOR PEACE（平和の夕べコンサート）〜ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第1番, 他（2015/8/5）』は、2015年8月5日の広島における〈平和の夕べ〉コンサートのライヴ録音。アルゲリッチが同コンサート出演のため、ザルツブルク、ルツェルン、ベルリン、ロンドンといった著名音楽祭への出演を断り、広響との共演を選んだことでも話題を呼びました。このCDの収益は、コンサートの2日後に“明子さんのピアノ”を試奏し、その優しい音色を気に入ったというアルゲリッチら出演者一同の協力により“明子さんのピアノ”の保全費用に充てられます。

　ゼルキンによる『MUSIC FOR PEACE〜Plays on Akiko's Piano（J.S.バッハ, モーツァルト, ショパン）』は、2017年8月5日の広島交響楽団〈平和の夕べ〉コンサートの前日に収録されたスタジオ録音作。ゼルキンが思い浮かぶままにJ.S.バッハ、モーツァルト、そして明子さんも愛奏していたというショパンをひと息に演奏し、96KHz / 24bitで高品位録音した内容です。ゼルキンもまた録音の印税収入を放棄し、収益を“明子さんのピアノ”の保全費用に寄付することが発表されています。

　なお、東京・錦糸町 すみだトリフォニーホールと広響は、1945年3月10日の東京大空襲と同年8月6日の広島原爆の記憶を共有し、平和を祈念する共同企画〈すみだ平和祈念コンサート2018《すみだ×広島》〉を2018年3月に開催。企画の一環として、3月8日（木）に下野竜也指揮広島交響楽団がすみだトリフォニーホールで公演を行ないます。この公演に先立ち、“明子さんのピアノ”を保管する「HOPEプロジェクト」代表・二口とみゑによるレクチャーが同日17:00より開催されるほか、17:30からは萩原麻未（“明子さんのピアノ”を演奏）と佐久間聡一（広響コンサートマスター）による小演奏も行なわれます。