THE YELLOW MONKEYが、結成30周年を記念して、キャリア最大規模となるドーム・ツアー〈THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary DOME TOUR〉の開催を発表。本ツアーは東京、名古屋、大阪の3ヶ所を廻る全4公演となっており、初めてライヴを行った日からちょうど30年となる2019年12月28日に開催される愛知・ナゴヤドーム公演を皮切りに、2020年2月に大阪・京セラドーム大阪、2020年4月に東京ドームにて2デイズ公演を行います。
ライヴは「Subjective Late Show」で幕を開け、「どうも皆さん、ようこそLa.mamaへ!」という、まるで自宅にオーディエンスを招き入れるかのような口調での吉井和哉のMCを挟みつつ、「LOVERS ON BACKSTREET」「SLEEPLESS IMAGINATION」「WELCOME TO MY DOGHOUSE」など全6曲を披露し、約30分ほどで終了しました。なお本ライヴはTHE YELLOW MONKEYのYouTube公式チャンネルにて生配信され、最大同時聴者数は約4万人、視聴回数は約12万を記録しました。
THE YELLOW MONKEY史上最大規模となるドームツアー開催決定が公表された瞬間、4人のメンバーたちは聖地にいた。このバンドの歴史の起点ともいうべき東京・渋谷のライヴハウス、La.mamaである。彼らが8月6日、都内某所にてプライべートギグを開催するとの情報が発信されたのは、去る8月1日のこと。しかもバンド結成30周年にちなんで、入場料は税込30円という通常では考えられない価格。しかも、演奏時間は午後7時半からの30分間だという。ファンのなかには、このニュースを目にした次の瞬間、その都内某所というのがLa.mamaであることを察知した人たちも少なくなかったはずだ。なにしろそこは、彼らが1989年12月28日に現在と同じラインナップでの初のライヴを行なった会場でもあり、まさしく初期のホームグラウンドというべき場所。実際のところ、チケットはLINEチケットを通じての当日先着販売のみで、まさしく秒単位で瞬殺となり、会場がLa.mamaである事実はそのプラチナチケットを勝ち取った強運の持ち主たちだけに直接通知された。チケットの販売開始直後に約67万のアクセスが殺到し、サイトは繋がりにくい状態になったという。
カウントダウンの数字が一桁に近付き始めると、La.mamaを埋め尽くした観客は声を合わせて数字を叫ぶ。そして、それがゼロを迎え、場内は暗転。スクリーンには、彼らがかつてこの会場を根城としていた時代のライヴ映像が流れ、細切れにコラージュされた映像がどんどん現在へと近付いていく。そんななか、わずか250人のオーディエンスとは思えない音量の歓声が渦巻く。メンバーたちが姿をみせ、フロアを横切るようにしてステージへと向かっているのだ。そして配置に着いた4人の準備が整った頃、スクリーンに浮かぶライヴ映像は現在へと到達し、次の瞬間、30周年を記念してのドームツアー決定の文字が浮かびあがる。一瞬の戸惑い。そして大きな歓喜の声。それをオープニングSEに据えるかのようにして、この特別な夜は「Subjective Late Show」で幕を開けた。2016年の秋に実施された全国ホールツアーのタイトルにも掲げられていたこの曲は、1992年6月発表のメジャー1stアルバム『THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE(夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー)』からの選曲だ。そして間髪を入れずに、これまた同アルバムからの「Chelsea Girl」が始まる。この時点でもう、彼らが“あの頃”のライヴパフォーマンスを意識しながらステージに立っていることは明らかだった。それを裏付けるように、今夜のステージ上には、完全に4人しかいない。現在実施されているアリーナツアーに参加しているサポートメンバー、鶴谷崇(key)の姿はそこにはない。
そんな語りに導かれながら始まったのは、これまた初期の名曲のひとつとして知られる「LOVERS ON BACKSTREET」。こちらは1991年7月にリリースされたインディーズ作品、『BUNCHED BIRTH』からのセレクトだ。そして、やはり同作からの「SLEEPLESS IMAGINATION」がそれに続く。この時空を超えた空間は、まさにタイムマシーン。THE YELLOW MONKEYを愛する人たちの多くが原体験できずにいた時代のライヴを、時間を逆戻りしながら味わっているような感覚だ。しかもこれは、単純な“過去の再現”とも違っている。THE YELLOW MONKEYがバンドとしてまだまだ未成熟だった時代の楽曲を目の前でプレイしているのは、まぎれもなく現在の、文字通り日本を代表するロックバンドのひとつとなった揺るぎない4人なのである。
演奏は同じ選曲モードのままで続き、終盤にはやはり1stアルバム収録曲であり、同時に彼らにとってのデビューシングル(1992年5月21日リリース)にあたる「Romantist Taste」が登場。そしてわずか30分という短い饗宴の終幕を飾ったのは、インディーズ作からの「WELCOME TO MY DOGHOUSE」だった。この曲を歌う前に、吉井は「この地下の、クサい匂いが大好き」と言った。その言葉を聞いて改めて痛感させられたのは、ここまで巨大な怪物バンドとなった今現在も、犬小屋のように狭い空間で育まれた精神や美学といったものは4人のなかから少しも損なわれていないのだ、ということ。実際、菊地英昭がこの日、初めてこのバンドのメンバーとしてこのステージに立った30年前のあの夜と同じギターとキャビネットを持ち込んでいたという事実も象徴的だ。