2月にニュー・アルバム『Man Alive!』を発表したキング・クルール(King Krule)が、アルバム発売直前にフランスのテレビ局Arteの音楽番組のために行なったフルバンドでのライヴ映像をYouTubeに公開しました。約30分のライヴでは「(Don’t Let The Dragon)Draag On」「Alone, Omen 3」といった新作からの楽曲を中心に、2017年のヒット作『The Ooz』からの2曲も含む全8曲を披露しています。坂本麻里子によるライヴ・レポートも公開されています。
そのコミュニティの中心に君臨する「王」がエレクトロニック、サックスを含むバンド5名に続いて最後に登場、大歓声が湧く。飾り気のないシャツにズボンのアーチーを始めメンバーは普段着姿で、学生サークルのバンドと言っても通じそうなカジュアルさ。しかしうず潮でうなるサーフ・ギターを縫って屈強なベースがとどろきド迫力のヴォーカルとサックスが競い合う1曲目「Has This Hit?」から、彼らが実にタイトに結びついた個性的なサウンドを誇る百戦錬磨の音楽集団であるのが分かる。「Dum Surfer」のユルいスラッカー味、ウィルコ・ジョンソンを彷彿する電撃ギター、早くも合唱の起きた「A Lizard State」と見事に緩急をつけつつ、セット前半は「Cellular」から始まり新作収録曲が中心の構成。盤ではリリカルなメロディが主体の「Perfecto Miserable」や「Alone, Omen 3」も、バンドとの生のケミストリーが加わるとライヴではペイヴメントばりのジャムへと爆発。ヒップホップのビートに乗ってニュー・メタル調な重さで迫る「Stoned Again」からヴェルヴェット・アンダーグラウンド型ガレージ・ロック「Comet Face」への流れは序盤のハイライトで、マニックな熱が伝播したフロアはモッシュで沸騰しダイヴをかます客も出た。
その熱を冷ますようにリヴァーブ・ギターが青白いガス燈の繊細な明滅を響かせる「(Don’t Let the Dragon)Draag On」、 ドゥーワップ調なスウィングがたまらなく切ない「Underclass」をクッションに置きつつ、後半は1&2枚目からの人気曲を軸に盛り上げる。サッカー場で観客が叫ぶチャントを思わせるコール&レスポンスから始まり、スカ+アフロビート+ラテンなカーニヴァル・グルーヴの広がりで会場を丸ごと踊らせた「Half Man Half Shark」、美しいギター・メロから全身でガラガラ声を振り絞るエモーショナルな熱演になだれ込むビルドアップが最高だった「The Ooz」。ムードたっぷりなサックスのソロでパーティのチーク・タイムが似合うロマンチックさを降らせた「Baby Blue」でメンバー紹介をはさみ、ラストは初期の代表曲で即座にシンガロングが始まった「Easy Easy」。弾き語りに近い演奏は簡潔なぶん、思春期のフラストレーションや抑圧に対する反発を活写する歌詞とリズミカルなギターが矢のように刺さってくる。サビの絶叫でほろ苦さが吐き出された後に吹き抜けるカタルシスに『大人は判ってくれない』のエンディングを思い出さずにいられなかった。