ギタリストの
河野智美が、今年1月に東京・赤坂 サントリーホール大ホールで開催した公演の模様を収録するアルバム『
アランフェス』(SACDハイブリッド MECO-1059 3,000円 + 税)を10月21日(水)に発表します。
収録曲はロドリーゴの「アランフェス協奏曲」、「ある貴紳のための演奏曲」、アンコールで披露したJ.S.バッハの「G線上のアリア」。共演は
梅田俊明指揮
東京フィルハーモニー交響楽団、アンコールでは八木大輔がピアノを弾いています。
[コメント]このアルバムを皆様にお届けできることを、心から嬉しく思っています。
ロドリーゴの2大コンチェルトをライヴ録音する...思えばこの企画が決まった当初は、私にできるとも思えず、ただ漠然とした不安が募るばかりの日々でした。この偉大な2曲をコンサートで弾くだけでも、私には大きなことでしたが、それを録音し後世に残していくということは、これまでの経験からは想像を超えた大きな企画でした。
それでも演奏のこと、PAのこと、レコーディングのこと、助言をしてくださる方、様々な連携を取って進めてくださる方、そして必要な資金をサポートしてくださる方々…前を向いてひたすら本番の日に向かっていた日々ですが、気がつくと周りでは様々な人が動き、助けられていました。これまでの幾つものコンサートも、もちろん同じ思いでしたが、より一層、皆で心をひとつにして臨むことができたコンサートとなりました。
そして迎えた本番…指揮者とオーケストラとともに作っていく音楽には、言葉では表現できない充実した思いがありました。サントリーホールという最高の響きを体感できる場で、自分とオーケストラの音楽に全身全霊をかけて向き合い、集中できた時間だったと思います。この時にこの場で同じ時間を過ごしてくださった皆様に、改めて感謝申し上げます。
このコンサートの後、瞬く間に新型コロナウイルスによる影響で、次々とコンサートが中止となりました。このコンサートが実現できたことが、奇跡的なことだったのかもしれないと思わされます。そしてこの充足感で満たされた経験は、不安感をも払拭してくれています。いつ終わるかわからない闇を恐れるよりも、今できることを少しずつ積み重ねて生きていく、その力をいただいたように思うのです。
改めて録音された音楽を聴いていると、自分ではないような気迫が感じられ、またやはり自分であるという臨場感も思い出され、不思議な感覚になります。昨年までに行くことができたアランフェス宮殿をはじめとするスペインの地にも、祈るような気持ちで思いを馳せています。無事に再び訪れることができる日常が戻りますように…。ロドリーゴがこの作品に寄せた想いは、いま、このような世の中で、世界への想いへと重なり、また新たな気持ちへと繋がっていく…その流転が音楽の力のような気がしています。
どうか皆様もお身体に気をつけてこの状況を乗り越え、また同じ空間で、同じ時を過ごせますように…お祈りしております。
2020年8月――河野智美