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シネマ歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』を全国で上映 人気浪曲師も惚れ込むその魅力とは?

玉川奈々福   2021/05/10 13:48掲載
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シネマ歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』を全国で上映 人気浪曲師も惚れ込むその魅力とは?
 「歌舞伎に興味があるけれど、敷居が高そう」「初めてでも大丈夫だろうか」といった不安をもつ人たちや、舞台公演と異なる角度から味わいたいというファンに対して、より歌舞伎を身近に楽しんでもらおうというコンセプトのもと、松竹株式会社が開発した「シネマ歌舞伎」。歌舞伎の舞台公演を高性能カメラで撮影した“美”と“臨場感”に徹底的にこだわった映像で生の歌舞伎を観ているような感覚の再現を目指した、映画とはまったく異なる新しい映像作品です。名作歌舞伎を全国各地の映画館で観られる親しみやすさから、広く好評を博しています。


 2021年5月〜2022年2月にかけて、毎月1週間ずつ(新作は3週間)シネマ歌舞伎を上映する「月イチ歌舞伎」を開催。芝居の楽しさはもちろん、美しい舞踊や繊細な衣裳、圧巻の立廻りなどの歌舞伎の魅力を、映画館で堪能してもらおうという企画。

 その第1弾となる5月上映作品に、日本を代表する劇作家 / 演出家の野田秀樹が木村錦花原作の歌舞伎狂言『研辰の討たれ』を新しい視点で書き直し、演出した舞台『野田版 研辰の討たれ』がラインナップ。5月14日(金)〜20日(木)に全国各地の映画館で上映となります。

 『野田版 研辰の討たれ』は、赤穂浪士討ち入りのニュースが飛び交う近江・粟津藩が舞台。一人だけ赤穂浪士を馬鹿にしている刀の研屋あがりの武士“研辰”(とぎたつ)こと守山辰次が、「仇討ちなんて馬鹿馬鹿しい」と言い出したことから物語が始まります。仇討ちに憑かれた群集たちの人間模様を笑いと涙を交えて描いた異色の仇討劇です。2001年 納涼歌舞伎での初演でヒットし、2005年の歌舞伎座にて十八代目中村勘三郎襲名披露狂言として再上演した舞台を、シネマ歌舞伎としてスクリーンで堪能できます。


『野田版 研辰の討たれ』©松竹株式会社

 そして、この伝説の舞台として絶賛された公演に深く感銘を受け、その魅力の虜となっているのが人気浪曲師の玉川奈々福。同作品を浪曲化した演目、浪曲『研辰の討たれ』を、6月25日(金)より東京・渋谷のユーロライブにて開催される「浪曲映画祭」にて上演します(上演日は6月27日)。新作浪曲を積極的に発表することはもちろん、YouTubeチャンネルにて浪曲の魅力を発信するなど、浪曲界にニューウェイヴを巻き起こす一人として活躍している奈々福が、いかに『野田版 研辰の討たれ』に刺激を受け、惚れ込んだかが窺える公演となりそうです。

 奈々福は『野田版 研辰の討たれ』について、中村勘三郎襲名披露公演を観賞して衝撃を受けたといい、「これまで歌舞伎が好きで数多く観てきたが、浪曲にしたいと思ったのは初めて」「浪曲でやりたかったのはこれだ! と思ったことを、鮮明に覚えている」と話します。人間のこうあるべきという建前や忠義を重んじる王道の演目とは真逆の、人間が本来持つ自由さを徹底的に描いた『野田版 研辰の討たれ』。本作のシネマ歌舞伎を幾度も観返し、さらに作品への理解を深めました。映像で観ることで、勘三郎演じる辰次の微細な表情や汗を搔く姿をはじめ、個性あふれるさまざまな登場人物の一挙手一投足から伝わるスキのなさにも気づき、生の舞台とはまた異なるシネマ歌舞伎ならではの素晴らしさを実感したといいます。

 また、『野田版 研辰の討たれ』の浪曲化にあたって、奈々福は「この作品に惚れ込み過ぎてしまって、できることならすべてを表現したい」との思いから「あまりにも繰り返し見すぎて、浪曲化した作品を観たスタッフから〈勘三郎から一度離れなさい!〉と言われてしまった」ほど。単なる模倣でなくいかに浪曲として落とし込むか、舞台ゆえになし得た野田版のスペクタクルな演出を、ヴィジュアライズではなく“語り”という芸のなかで、配役を整理しながら、いかにエンターテインメントとして作りこむかを思慮したとのこと。さらに、お囃子やガヤを入れるなど、従来のイメージを覆すような浪曲のフレキシブルな可能性にもチャレンジしました。「大衆の無責任さと、それに翻弄される人たちの運命を絶対に描きたかった」という強い意気込みも語っています。

 ユーロライブの「浪曲映画祭」で演目を上演することについては、「素晴らしいシネマ歌舞伎版を多くの人が観た後にやらなければならないのが怖い、プレッシャーです(笑)」と恐縮。20年前に浪曲師になり始めた頃は浅草、上野、日本橋といった城東地区に上演が集中していたことにも触れ、その地域を広げる努力を続けてきた経緯を踏まえた上で「渋谷のど真ん中で浪曲を扱ってもらえる、客層が異なる“場”で浪曲を楽しんでくれることが嬉しいし、大事なこと。渋谷は、浪曲と他のエンターテインメントとを結びつけ、広げてくれる“ハブ”の役割となってくれているので、“気”を入れて一所懸命やりたい」と抱負を語っています。

 圧巻の映像と音で迫るシネマ歌舞伎版『野田版 研辰の討たれ』と、半端ない熱量で臨む渾身の上演となりそうな浪曲版『研辰の討たれ』。どちらも歌舞伎や浪曲ファンのみならず、すべてのエンターテインメントファン注目の上映・上演といえそうです。

※状況に応じて上映・上演予定は変更になる可能性がございます。最新の営業状況・上映状況をご確認のうえご来場ください



シネマ歌舞伎「月イチ歌舞伎」『野田版 研辰の討たれ』
2021年5月14日(金)〜5月20日(木)全国順次上映
上映劇場・上映スケジュール:
www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/04

第3回浪曲映画祭─情念の美学2021
2012年6月25日(金)〜6月29日(火)
会場: 東京・渋谷 ユーロライブ
料金:
(1)映画+浪曲 / 活弁士付き上映 一般2,400円 / 学生 会員 2,000円 高校生1,200円
(2)映画のみ 一般1,400円 / 学生 会員1,200円 高校生 800円
回数券10,000円(劇場窓口のみで販売 / (1)を2,000円で、(2)を1,000円でご覧になれます)

2021年6月25日(金) 浪曲師伝説─現在の型を作った桃中軒雲右衛門
2021年6月26日(土) 浪曲師・村田英雄─東映時代劇を任侠路線に変えた男
2021年6月27日(日) 浪曲の未来─江戸の若き俊才たち
2021年6月28日(月) 浪曲演目録─ご存知「清水次郎長伝」
2021年6月29日(火) 浪曲の現在─浪曲師・曲師のドキュメンタリー

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